2000年春闘の到達点と後段のたたかい

ならびに夏季闘争方針

2000年5月20日

愛労連2000年度第1回評議員会



【目次】

  はじめに

1.今春闘の対決点と主なたたかいの特徴

 <1-1> 2000年春闘の対決点

 <1-2> 4つの主要課題

 <1-3> リストラ・首切りを許さない

 <1-4> 賃金闘争

 <1-5> 年金改悪阻止、政治の民主的転換を求めるたたかい

 <1-6> 賃金カット・補助金カット反対、万博・空港こそ見直せ

 <1-7> 「2.25総行動」から連休明けまで −厳しいなかにも可能性が見えた春闘

 <1-8> 残された課題

2.大幅賃上げ、底上げ、最賃闘争の到達点と今後の力点について

 <2-1> 連合・JCと全労連・春闘共闘の賃上げ状況

 <2-2> 愛知の賃上げ状況

 <2-3> 賃金底上げのたたかい

 <2-4> 最賃闘争

 <2-5> 国営企業と官公労のたたかい。愛知では「調整手当改悪」見送りに!

 <2-6> 夏に向けた賃金闘争(夏季闘争、第1次全国統一行動=6月7日)

3.リストラ「合理化」反対、解雇規制・労働者保護法実現のたたかい

 <3-1> 「日産リストラ反対」を軸とする首切り・リストラ競争阻止のたたかい

       − 木村刃物、日本IBM、第2菱名の3争議、すべて解決へ

 <3-2> 失業・雇用闘争

 <3-3> 解雇規制・労働者保護法実現、サービス残業根絶のとりくみ

4.国鉄闘争、労働委員会、組合費チェックオフなどのたたかい

 <4-1> 国鉄闘争の勝利をめざして

 <4-2> 労働委員会民主化のたたかい

 <4-3> 組合費チェックオフ問題

 <4-4> 司法改革

5.年金・社会保障、行革・規制緩和、教育などの国民運動

 <5-1> 年金改悪反対のたたかい

 <5-2> 問題だらけの介護保険制度、4月スタート

 <5-3> 健保・医療制度の改悪、社会福祉基礎構造改革による社会保障制度の解体

 <5-4> 財界・大企業とアメリカ本位の「規制緩和」反対

 <5-5> 国民本位の行財政改革

 <5-6> 「30人学級実現」「日の丸・君が代押しつけ反対」など教育要求

 <5-7> 有珠山の噴火災害救援

 <5-8> 消費税廃止、当面3%へ

 <5-9> 安全な農業・食品は日本の大地から

6.補助金カット反対、万博・空港こそ見直せ

 <6-1> 万博「県民投票」の実現を求めて

 <6-2> 補助金カット反対のとりくみ

7.解散・総選挙、平和・民主主義・憲法擁護のたたかい

 <7-1> 春闘前段での大阪・京都の首長選挙支援

 <7-2> 総選挙で政治の流れを変えよう

 <7-3> 戦争法の発動阻止、憲法擁護、安保条約廃棄のたたかい

8.組織の拡大・強化、対話と共同のとりくみ

 <8-1> 10万人愛労連をめざして

 <8-2>学習・討論の重視、職場活動など組織の強化

9.2000年夏季闘争の推進について

  ●夏季闘争の重点課題とたたかい

 <9-1> 悪法阻止の闘い

 <9-2> 労働者の要求・権利闘争

 <9-3> 総選挙闘争

 <9-4> 反核・平和の闘い

 <9-5> 組織の拡大 −既述、省略。

  ●夏季闘争における統一行動

 <9-6>

 <9-7>


はじめに

 愛労連は1月23日の第22回臨時大会で2000年春闘方針を決定、今日まで奮闘を重ねてきた。5月も半ばをすぎた今、これまでの到達点と課題を確認し、未解決組合の回答引き出し・上積みと悪法阻止など春闘後段のたたかいと当面する総選挙闘争、夏季一時金や人事院勧告を中心とする夏季闘争などについて意思統一したい。

 

1.今春闘の対決点と主なたたかいの特徴

 

<1-1> 2000年春闘の対決点

 2000年春闘は、春闘開始から45年、全労連結成から10年、20世紀最後であり、21世紀につなぐ歴史的節目の春闘となった。全労連は、「財界・大企業の凶暴な首切り・賃下げ攻撃をゆるすのか、それとも労働者の団結で大幅賃上げ、雇用拡大をかちとるのか」「大企業本位・国民犠牲の悪政存続をゆるすのか、それとも広範な国民との連帯・共同で国民春闘を前進させ、国会解散・総選挙で政治の民主的転換を実現するのか」を主要な対決点に位置づけて、すべての労働組合・労働者が統一してたたかうことを呼びかけた。背景に、「国際競争力強化」を理由に、競ってリストラ・首切りとコストダウン、「総額人件費抑制」に走る財界・大企業の「21世紀戦略」=「多国籍企業化戦略」があり、これを後押しして労働者・国民や中小業者に耐え難いまでの犠牲を強いる小渕自自公政権の悪政があった。労働者・国民の不満はかつてなく大きく広がっていた。

 

<1-2> 4つの主要課題

 愛労連は全労連の提起に県内の独自課題を結合し、1月臨時大会で次の4点を今春闘の主要課題と確認した。

 @ 財界・大企業の身勝手なリストラ・人減らしや「総額人件費抑制」攻撃と対決し、首切り・賃下げを許さず、雇用と暮らしを守り大幅賃上げ・底上げで不況打開をはかる。リストラ反対では「日産リストラ反対」の全国闘争に呼応してとりくむとともに、県内の仲間の争議解決に力を集中する。

 A 大企業の横暴と自自公の悪政に苦しんでいる労働者・国民との共同を広げ、@不況打開、雇用・失業問題解決、大企業本位の「規制緩和」や消費税増税反対、A年金・医療・介護など社会保障制度の充実、B戦争法の具体化阻止、C県の補助金カット反対、万博・空港こそ見直せ、など「秋闘4課題」をひきつづき追求する。

 B とりわけ愛知独自の重要課題として、「万博県民投票条例」をかちとり、県政の民主的転換を迫る。

C財界・大企業のリストラを支援し、労働者・国民には犠牲を強いる小渕自自公内閣の悪政に反対し、国会解散・総選挙で政治の民主的転換を実現する。

 

<1-3> リストラ・首切りを許さない

 2000年春闘の一つの、そして最大の課題は、企業のリストラ・首切り競争が「当然視」される社会的風潮を改めさせ、雇用を守るたたかいであったが、この点で、大企業を社会的に包囲する「拠点闘争」として全労連が提起した「日産リストラ反対」の全国闘争は大きなインパクトがあり、新聞やTV、週刊誌などに共感を持ってとりあげられた。

 愛労連は春闘前段で、「年金改悪阻止」「補助金カット反対、万博・空港こそ見直せ」とともにこのたたかいを最も重視し、「12.23村山工場包囲デモ」や「日産本社前1.25集会」に代表団を送った。またできるだけ多くの組合員参加をめざした「2.25怒りの総行動」に向けては50万枚のカラー・ジャンボビラを各個配布で、また駅頭や工場門前でも配布し、「大企業の身勝手なリストラ・首切り許すな」「EU並みの解雇規制・労働者保護法の制定を」と訴えた。連合愛知を含む労組訪問でもこの課題での共同を呼びかけ、トヨタや経済団体、労基局、愛知県、自治体など関係機関への要請行動も展開した。加えて全労連・純中立など22民間単産が実行委員会でとりくんだ「3.7中央行動」には単産中心に上京団を組み、国会・霞ヶ関周辺で多彩な終日行動を展開した。

 こうした行動にあわせて、愛労連はこの春闘で木村刃物、第2菱名生コン、日本IBMなど県内の争議解決に全力を挙げた。同時に、西三河と連携して2年ぶりのトヨタシンポ(2月6日)、トヨタ総行動(3月20日)にもとりくんだ。

 その後、大企業のリストラ・人減らしはさらに加速され、2月・3月の完全失業率がふたたび史上最悪を記録するなど雇用・失業情勢は依然として深刻な状況にあるが、たたかいを通じて日産・愛知機械やトヨタ、三菱、新日鐵など大企業内部の労働者の動きも活発化し、マスコミや財界の一部からもリストラ・首切り競争に異論が出るなど、大企業の社会的責任を問う国民世論もひろがりを見せている。

 

<1-4> 賃金闘争

 賃金闘争では、日経連が賃下げまで宣言する逆攻勢のなかで「要求アンケート」の積極的な活用と要求の練り上げ、職場・地域での学習・討論を重視し、「すべての組合が2月末日までに要求提出を」と訴えてとりくんだ。今年は「最賃生活体験」挑戦者が12名出たのも特徴で、若者を中心に底上げ・最賃闘争の重要性を改めて浮き彫りにするとりくみとなった。

 なお愛労連は「2.25総行動」で50万ビラ宣伝を行い、大企業の利益の社会的還元=大幅賃上げと「誰でもどこでも1万5千円、時給100円」賃上げ(底上げ)を広く訴えた。

 以後、連合・JCの日程もにらんで、「3.15回答指定日での回答引き出し」「翌16日=ストライキを含む第1次全国統一行動」を確認、同日夜には2000年春闘最大の決起集会(久屋広場と県下各地)にもとりくんだ(久屋=1300名)。また、全労連の「第2次全国統一行動=4.18」は単産ごとの行動としたが、翌19日の栄総行動・大蔵包囲総行動には市内を中心に多くの仲間の結集を訴え、5月メーデーと連休を挟んで、引き続き未解決組合の回答引き出し・上積みをめざしてたたかってきた。さらに、これら民間のたたかいと前後してとりくまれた官公労の闘争=「県の賃金・一時金カット反対」(1月)から「調整手当改悪阻止」のたたかい(2〜4月闘争)も重視してきた。

 財界・経営側の総額人件費削減攻撃、中小企業の経営難、史上最低のJC相場のもとで、賃金闘争はきびしく、5月半ば時点で「回答引き出し組合」が全体の2/3、妥結もようやく5割、回答水準も史上最低の昨年並みかそれ以下、というのが実態である。しかし、医労連、建交労、通信労組、全国一般、JMIU、全港湾の各単組をはじめ多くの仲間がストライキも含め粘り強くたたかってきたこと、大企業本位の「規制緩和」反対や「中小企業経営の安定と労働者の賃金・労働条件向上」をセットで要求する共同が拡がっていること、連合内部でも「これでは何のための労働組合か」の意見が相次ぎ、中小労組を中心に4月中旬になって「妥結の歯止め水準」を設定してさらなる奮闘を指示したことなど、注目してよい。「要求を掲げて原則的に闘う労働組合」への支持・共感が拡がる春闘となっており、愛労連に常設した労働相談に「労働組合を作りたい」という相談も多く寄せられているのも特徴である。

 「県関係の職員の賃下げ・リストラが民間中小に及ぼす悪影響は見過ごせない」と県庁前で反対ビラを配布した愛労連民間部会や、「職員の賃下げが補助金カットの露払いに使われている」として同じく反対宣伝を重ねた障害者団体など、民間労働者や団体が自発的に官公労支援に乗り出したのも特筆できる。官公労が自治体リストラ反対の運動だけでなく、民間のリストラに反対する闘いにも積極的にとりくみ、解雇規制・労働者保護法制定の署名・宣伝でも奮闘しているのも貴重である。

 

<1-5> 年金改悪阻止、政治の民主的転換を求めるたたかい

 2000年春闘では、4月からスタートする介護保険の充実を求める草の根の運動とともに、社会保障闘争、とりわけ年金改悪阻止のたたかいも重要な制度政策要求となり、支給開始年齢の繰り延べ、報酬比例部分の5%削減、賃金スライド廃止などを内容とする年金改悪法案をめぐって、国会内外の激しい攻防が展開された。愛労連もこの「年金改革阻止」を最重要課題の一つと位置づけ、組合員一人5筆目標の署名や宣伝、波状的国会要請にとりくんだ。

 結果として改悪法案を阻止できず、3月末にはついに自自公の数の暴力で改悪が強行された。しかし昨年秋から連続的にたたかわれてきたこの闘争は、多くの到達点と教訓をつくった。第1は全労連、連合などの労働団体が一致して改悪反対に立ちあがり、数次にわたる国会座り込み行動や署名運動など、最後まで共同歩調をとって運動を展開したことである。第2はこれを土台に国会内で民主、共産,社民の野党3党が、「5項目共同見解」にもとづく共闘を発展させたことである。第3には社会保障推進協議会や国民大運動実行委員会をはじめ、広範な民主団体・国民諸階層との共同をひろげてたたかったことである。愛労連内では年金者組合の果たした牽引車的役割も大きい。

 国会は衆院7割、参院6割を占める自自公政権のもとで、年金改悪同様の悪政・悪法があいついで強行された。このもとで愛労連は、全労連と同じく解散・総選挙を要求するとともに、京都市長・大阪府知事選の勝利など政治の民主的転換と結合した春闘の前進をめざした。このなかで自民党が、全労連、連合などが自自公批判で一致し、年金、労働者保護法などで共同していること、民主・共産・社民の3野党の共同も続いていることに危機感をち、「組合費チェックオフ」や「国会前座り込み行動」の禁止策動するなど、「政労対決」が強まる春闘となったのも特徴であった。4月のはじめ、国民の批判と内閣支持率の低下におびえる小渕首相が倒れ、密室協議で森(自公保)新内閣が発足したが、首相交代は単なる首のすげ替えであり、政治の民主的転換が多くの労働者の共通要求に高まっているのは間違いない。

 

<1-6> 賃金カット・補助金カット反対、万博・空港こそ見直せ

 愛知独自の課題では、昨年来の財政危機のもとで問題化した県関係職員の賃金・一時金カットや暮らし・福祉・教育などへの補助金のカットを許さないたたかいとともに、「この時期になぜ万博・空港か」という県民の素朴な疑問を背景に、「2005年愛知万博の開催の是非を県民投票で」とする「県民投票条例」を直接請求で実現するたたかい(3月15日〜5月14日までの2ヶ月間のたたかい)が重要となった。この行動は、昨年知事選挙をともにたたかった市民グループと革新県政の会との共同のたたかいとして提起され、「海上の森」をはじめとする自然環境保護、財政問題(税金の使い道)、県民の声の正確な反映(県民合意、民主主義)の3点から県や博覧会協会、通産省をきびしく追いつめ、緒戦で新住宅事業と関連道路の開発断念をかちとるなど、貴重な成果を上げた(この間の「県関係職員の賃金カット反対」や「補助金カット反対」のたたかいでも、関係単産がよく奮闘し、広範な労組・県民の支持・激励も集めるなかで、基本的にはさらなるカットを阻んだ)。

 愛労連は革新県政の会の中核部隊としての責任を果たす観点から、「実現する会」の事務局に伊豆原副議長を送ったのをはじめ、できるだけ多くの組合員が「受任者」になって署名を集めること、組合員の全員と家族・知人から署名を集約すること、地域では運動の中心に座り、署名・宣伝に継続的にとりくむことを確認、奥三河キャラバン、栄や金山、東山などでの署名・宣伝行動にも積極的にとりくむよう訴えた。

 このたたかいは率直に言って単産・地域落差が大きかったが、地域の署名センターを引き受けた東三河労連や千種・名東労連をはじめ、地域は比較的よく奮闘した。また、単産でも自治労連や生協労連などの奮闘は際だち、運動を支え、拡げた。こうして、2ヶ月で集約できた署名は法定必要数11万弱を大きく超えて(   )万となったが、都道府県レベルでこれだけの直接請求署名は例がなく、今後の当局の対応が注目される。

 

<1-7> 「2.25総行動」から連休明けまで −厳しいなかにも可能性が見えた春闘

 以上にみられるように、愛労連と各単産・地域労連はすべての労働者を視野に入れ、全組合員参加の春闘を前進させることを重視して2000年春闘をたたかってきた。長びく不況と中小企業の経営困難、財界・日経連の春闘解体攻撃、JC・大企業組合による低額・一発回答の受け入れなど春闘全体の否定的影響のもとで、賃金を中心とする要求闘争はきわめてきびしい到達点にとどまっている。しかしその賃金闘争でも、多くの仲間がベアゼロ・賃下げ・低額回答をはね返して粘り強く頑張っている。また、木村刃物など県内3争議の勝利解決はじめ雇用と権利を守る闘い、年金・介護など社会保障闘争、「賃金・補助金カット反対、万博・空港こそ見直せ!」の世論の拡がり、小渕自自公政権の悪政への怒りなど、どれも「明日」につながる闘いをつくってきた。このなかで闘いに立ち上がった単産・地域と組合員には確信がひろがっている。統一闘争と共同の可能性、国民春闘発展の新たな萌芽も見えた。

 こうした春闘を築く上で重要な役割を果たしているのが、@自治体キャラバンや「11.17総行動」を中心とした秋の闘いであり、A12月はじめの春闘討論集会、1月の新春大学習会・臨時大会などでの学習や討論であり、B全組合員の立ち上がりを促し、春闘本格化を労働者・県民にアピールした「2.25総行動」であり、C役員を先頭とする単産・地域労連の頑張りであった。

 とりわけ「2.25」は、98年から毎年この時期に「総行動」として組まれるようになって3年目だが、早朝を中心とした「ターミナル・工場門前宣伝」が294カ所・1,996人でとりくまれたのをはじめ、多くの単産で職場集会がもたれ、全県22カ所の会場に1,875人が結集した夕方の「決起集会・デモ行進(一部、学習会を含む)」まで、県下各地で宣伝・申し入れ、労組・中小企業訪問、経営者団体・自治体等への要請行動などが展開された(自治体・議会要請41カ所・204名。/企業・事業所要請57社・39名。/経営者団体・業界要請40カ所・216名。/あおぞら裁判、中電営業所要請=26カ所)。

 これには、年休を取っての参加550名を含め、労働者だけで延べ4,500名、民主団体やあおぞら裁判の原告・弁護団を加えれば5,000名が参加する行動となり、「不況打開、誰でもどこでも1万5千円以上の賃上げを、リストラ・首切り反対、補助金カットやめよ、万博・空港見直せ」の主張を載せたジャンボ・カラービラ50万枚の配布をはじめ、文字通り「怒りの総行動」となった。

 今年、県段階の行動は、@主要労組訪問(連合愛知を含め、19チーム・40名で43労組を訪問、「労働者保護法」制定へ共同の申し入れ)、A栄での万博・県民宣伝と知事へのFAX集中、Bトヨタ自動車、中電、東海銀行、愛知県、県経協、名古屋商工会議所、労働基準局への要請行動(73名)に絞り、争議支援を含め、行動拠点を出来る限り地域に移したのが特徴だが、地域落差はあるものの、休暇部隊116、終日の延べ参加数は404人にのぼった「港」を筆頭にほとんどの地域が工夫を凝らしてとりくみ、春闘スタートを印象づける「総行動」として成功させることができた。

 地域の奮闘に敬意を表し、次に典型的なとりくみをあげておくが、県段階の行動とあわせて、自自公の悪政や下請け・労働者泣かせの大企業リストラへの怒り、財政危機の下、自然を破壊して推進される万博への疑問などが、多くの労働者・県民に拡がっていると実感できる「総行動」となった。

 

< 港 >

 @早朝ターミナル・企業門前ビラ宣伝、A船による海上パレード、B地域でのビラ配布、C埠頭・団地宣伝、D労組訪問、E厳しい経営実態をつかみ、不況打開へ懇談を深めた中小企業訪問、F区役所・労基署・郵便局・東海銀行・争議関連企業など15カ所への要請行動、G夕方の決起集会とデモ行進。

 

<瑞穂>

 @名鉄・地下鉄全駅宣伝、A労組訪問、日産・愛知機械の下請け企業訪問、B万博の署名宣伝行動、C夕方、バスターミナルでの署名宣伝行動、D決起集会とデモ行進。

 

<名南>

 @JR・名鉄・地下鉄全駅宣伝、A地域ビラ配布、Bユニー前で労働者保護法・万博の署名・宣伝、C労組訪問、D商店街訪問、Eあおぞら裁判、中電営業所要請、F夕方の決起集会とデモ行進。

 

<名中>

 @名鉄・地下鉄全駅と企業(トヨタ・三和銀行)前ビラ宣伝、A地域ビラ配布、B栄で終日「万博」宣伝、署名、C中区あんきの会による区役所交渉、Dあおぞら裁判、日立、HBS、朝日新聞社の争議関係で要請行動、E昼休みデモ、F夕方の決起集会とデモ行進。

 

<東三>

 @JR・名鉄・豊鉄19駅早朝宣伝、A11自治体へのキャラバン要請、Bあおぞら裁判、中電要請、C「万博」学習決起集会。

 

<西三>

 @JR・名鉄18駅早朝宣伝、A碧南など5市、職安、労基署、社会保険事務所への要請行動(とくに労基署要請は、国民大運動トヨタ部会から参加のデンソー、アイシン、車体、工機の労働者と地域労連とで「トヨタ関連企業での労基法違反」について要請した、Bあおぞら裁判、中電要請、C夕方の決起集会とデモ行進。

 

<一宮>

 @JR・名鉄18駅早朝宣伝、A2市3町と職安、労基署への要請行動。乳幼児医療無料化の拡大など成果が。B争議支援で労基局、第一勧銀、中電、JR貨物などへ要請行動、C一宮駅前「ユーガッタ・アクション」(マラソン宣伝・桃太郎・周回デモ等)。

 

<1-8> 残された課題

 以上、「2.25」は春闘の幕開けを告げる総決起の場として重要な役割を果たしたが、以前から指摘されている課題は残った。@県段階でできる「8団体共闘」が地域では徹底しない、A秋の「総行動」からあまり期間がなく、事前の準備と意思統一にかける時間が短い、B年休部隊が何人確保できるか当日まではっきりしない、C自治体要請や集中宣伝など地域落差が大きい、などだが、「全組合員の行動参加」「年休部隊の確保」「タテ・ヨコの連携強化」「マスコミへのPR」を含め、充分な検討が必要である。

 同時に、2000年春闘全体として、@組織人員を上回る集約をめざした「要求アンケート」が35,830(他にパート分1,356)、30万目標の「解雇規制・労働者保護法制定署名」が2万5千の集約にとどまっている、A春闘要求の提出ができなかった組合も相当数あり、スト権確立組合はごく少数、などの問題も残った。B「2.25」では愛労連全体が力の集中を図るが、賃金闘争が中心となる3月以降はどうしても単産が中心となり、とくに「3.16総決起集会」以後は分散的になる問題もある。C年金闘争などの国会行動や統一行動への結集、「万博・県民投票」の運動も単産落差が大きい。克服しなければならない。

 2000年春闘はまだ終わっておらず、これからも未解決組合の闘いと一時金・人勧闘争など夏季闘争、悪政阻止・政治の民主的転換に向けた総選挙闘争など重要なたたかいが相次ぐところから、春闘の最終的な総括は7月の第2回評議員会(7月15日を予定)で行うが、現時点で各課題ごとにも以下の叩き台を提起するので、単産・地域でも討議し、今後に生かしていく必要がある。

 

 

2.大幅賃上げ、底上げ、最賃闘争の到達点と今後の力点について

 

<2-1> 連合・JCと全労連・春闘共闘の賃上げ状況

 2000年春闘でのJC回答は昨年実績をさらに下回り、ついに2%未満に落ち込んだ。自動車では、リストラ強行の日産が2年連続ベアゼロを避けるとして500円を回答したが、業績好調のトヨタは定昇込み7,500円、ベア500円で昨年実績を下回った。隔年春闘の鉄鋼は、NKK、神戸製鋼が今年度分のベアゼロ、業績回復の電機もベア500円で決着、またNTTは賃下げ回答で収束した。今春闘では中小組合がねばり強く健闘しているが、連合全体(5月15日現在)では加重平均6,068円(1.95%)、単純平均5,071円(1.82%)にとどまっている。史上最低の賃上げ結果はGDPの6割を占める個人消費をいっそう冷え込ませ、景気回復の重い足枷となるものである。

 

 一方、全労連・春闘共闘の場合、5月18日現在、回答は登録979組合中596組合(60.9%)の加重平均で7,115円(2.26%)、単純平均で6,712円(2.24%)となっている。昨年同期比で単純平均226円、加重平均833円のマイナスであり、登録外の組合をふくむ状況は、「賃上げゼロ」「定昇ストップ」や回答延期などのきびしい状況におかれている。さらに、未組織の多くの職場では賃下げをふくむ労働条件の切り下げに苦しんでいる。単産別にみると建交労・建設、出版労連が前年同期を上回り、単組別には66組合が1万円以上の積極回答を引き出すなど、労組の主張を真摯に受け止めて精一杯の回答をした経営者もあるが、全体的には春闘全体の否定的影響のもとで苦闘が続いている。

 

<2-2> 愛知の賃上げ状況

 状況は愛知でも同様である。組合の新規結成で2万円近い賃上げをかちとった単組もあり、1万円以上も13組合と健闘しているが、日経連の「総額人件費抑制」、政府の後押しを得ての大企業のリストラ・人減らし攻撃、トヨタなど民間最大手=連合・JCの低額妥結(史上最低)のもと、仲間たちは厳しい闘いを強いられ、全体として昨年を下回って史上最低の賃上げとなっている。→『2000年春闘回答情報』第6号参照。

 5月17日現在、愛知春闘共闘委員会参加組合の回答引き出し=161/245組合。妥結は123組合=5割となった。ただし、全体の単純平均=4,432円(2.13%)で4月24日調査時の5,142円より700円も下がった。連合愛知の場合、4月4日集計で妥結・回答113組合の単純平均=5,353円。昨年比348円の減となっている。

 加えて、大企業本位の「規制緩和」や身勝手なリストラのあおりで深刻な経営難に陥っている中小企業では、「賃上げどころではない」という企業も出ており、人減らしをはじめ、きびしい「合理化」提案も出ている。これでは労働者の生活悪化は必至であり、消費購買力の回復もおぼつかない。

 ただ、このもとでも、中小の労組を中心に「賃下げ・リストラ許してなるか」と粘り強い奮闘がつづいているのも今春闘の姿で、「ベアゼロ撤回、3人夜勤体制、サービス残業(未払い残業)の手当支給」など職場の切実な要求を掲げて集会、地域宣伝、交渉など粘り強くたたかっている南医療生協労組をはじめ、たたかう労働組合への信頼と期待が高まって組織の拡大にもつながっている点は評価する必要がある。

 また建交労やJMIU、全国一般をはじめとして、「行き過ぎた規制緩和反対」「中小企業の経営と雇用・労働条件を守れ」など、経営者・業界との共同もかつてなくすすみ、悪政批判が広がっているのも評価できる。

 

<2-3> 賃金底上げのたたかい

 大企業を中心に強められている「成果主義賃金」は、見かけの平均賃上げ額と個々の労働者の賃上げとに大きな乖離をもたらしており、全体として賃下げと労働強化が強行されるベースとなっている。また、組織率の低下(全国22%)、パートや臨時、派遣労働など「労働力の流動化」がすすむもとで、組織された正規労働者中心の賃上げ交渉の波及効果がうすれ、春闘の見直し論議にもつながっている。全労連・愛労連が今春闘で「底上げ・最賃要求」を重視したのはこうした状況をふまえたものだが、今年はその第1年次ということもあり、この方針の精神を汲んだたたかいは不十分なものにとどまっている。

 全国的には、@争議勝利を生かしてパート賃金の大幅改善を実現した丸子警報器、Aパート時間給の引き上げを意識的に追求し続けている生協労連などとともに、B東京春闘共闘が「時間給1000円の実現」を求めてチェーンストアー協会などへ申し入れ、ティッシュペーパー宣伝にとりくんだ例、C多くの市民から激励が寄せられた大阪のパート集会・デモなど、とりくみの工夫が報告されている。地域でも、D大阪・高槻島本地域労連が昨年につづき未組織をふくむ事業所に「時給100円アップ申し入れ運動」を展開したのをはじめ、E東大阪地域労連の「時間給100円アップ、賃金底上げの新聞折込全戸配布」など先進例がある。愛知も「パート・臨時の春闘交流集会」など従来より一歩進んだ交流も始めているが、各地の先進的な「底上げ闘争」に学び、さらに闘いを工夫する必要がある。

 なお底上げの闘いではないが、生活改善にかかわる職場の制度的諸要求で着実な前進を勝ち取っている出版労連のとりくみは注目してよい。とくに、今春闘で重視した「介護保険料の労使負担割合の改善」要求について37単組で具体的な改善をかちとったこと、なかでも医学系3単組が全額使用者負担としたほか、2単組で「労2・使8」、23単組で「労3・使7」負担をかちとったのは学ぶ必要がある。

 

<2-4> 最賃闘争

 最低賃金闘争では、全国的に見ると、建交労が最賃協定の改善などの集団交渉で首都圏(16社)175,000円、大阪(19社)171,300円、兵庫(23社)172,000円の協定をかちとるとともに、年齢別最低保障賃金や業種別最賃闘争を前進させている。全印総連では賃金回答に先行して企業内最低賃金回答の引き出しに努め、医労連は看護婦初任給・35歳・50歳のポイント賃金闘争をすすめている。愛知では目立った成果は少ないが、全国各県の先進例に学んで、とりくみを強める必要がある。

 「全国一律最低賃金制」確立の運動では、全労連として「2・4最賃デー」でパート春闘中央行動と合流した労働省前集会と交渉、駅頭宣伝にとりくみ、「4・18統一行動」では労働省前座り込みなどを展開したが、署名の遅れも訴えている。愛知では、先に触れた「最賃生活体験」の組織化に続いて署名にとりくんでいるが、最賃闘争の意義をさらに徹底し、署名(178団体分集約)を広げる必要がある。

 

<2-5> 国営企業と官公労のたたかい。愛知では「調整手当改悪」見送りに!

 4月14日の郵産労など6組合に対する国営企業の回答は、基準内賃金の0.04%、119円という民間水準をも下回る不当な超低額回答となり、ただちに調停・仲裁作業に関する申し入れを行った。結果はベア0.12%、369円(定昇込み2.05%、6,143円)で、昨年比で0.14%、389円の減額である。低額回答への批判を強める必要がある。

 また人事院は、昨年はじめて公務員労働者に前年比マイナス勧告(一時金0.3月減)を押しつけたのに続いて、公務員の生活と地域経済に深刻な影響を及ぼす「調整手当の見直し」を提案、大幅な賃下げとなる改悪強行をたくらんだが、国公、自治労連、愛高教など公務共闘による職場からの波状的な批判・要請行動を強化した結果、4月末の「見直し地域名公表」では、堺や東大阪、福岡など全国的に「見直し」が打ち出されるなかでも、愛知(名古屋10%、岡崎3%)の「見直し」は見送らせることが出来た。全国のトップを切って強行された愛知県の賃金・一時金カットに対して官・民ともに反対行動を強め、秋から年明けの闘いを強めてきたことも含めて、運動の「成果」と評価できる。

 なお、99年度の民間一時金の状況からして今年の人事院勧告では2年連続の一時金切り下げの危険も高まっている。超低額の民間賃上げ結果が、史上初の「年収でマイナス」という事院勧告に波及した99年勧告の再現を阻止するため、夏に向けて政府・人事院に対する官民一体のとりくみを強める必要がある。

 

<2-6> 夏に向けた賃金闘争(夏季闘争、第1次全国統一行動=6月7日)

 春闘の今後の闘いは、悪法阻止、一時金、人事院勧告に向けた公務員の闘いなどとセットで未解決組合への支援を強め、回答引き出し・上積みへ努力することとなる。全労連は6月7日を「全国統一行動日」に力の集中を呼びかけているが、国会解散が近いところから、愛労連として夏季闘争勝利・総選挙勝利の「職場集会」など工夫してとりくむことが求められる。

 なお賃金闘争とあわせて、介護保険料・社会保険料などの労使負担割合改善、雇用延長、企業再編と雇用・労働条件の改変に関する事前協議制(労使協定・同意約款)など、職場の制度諸要求の前進へ向けた闘いは、充分な交流もできなかったが、重視してとりくむ必要がある。

 

3.リストラ「合理化」反対、解雇規制・労働者保護法実現のたたかい

 

<3-1> 「日産リストラ反対」を軸とする首切り・リストラ競争阻止のたたかい − 木村刃物、日本IBM、第2菱名の3争議、すべて解決へ

 2000春闘は、日産リストラをはじめとする全国的なリストラの嵐のなか、これをはね返し、大企業の首切り・リストラ競争の流れを転換すること、雇用と権利を守るたたかいが最大課題となった。全労連は日産村山工場に「現地闘争本部」を設置、専従を派遣して闘争を展開したが、全労連のこの奮闘と呼応した全国のたたかいはマスコミにも大きく取り上げられて日産労働者を激励し、門前ビラ配布やJMIUのストライキに多くの労働者から連帯が寄せられるなど、職場の大きな変化をつくった。いわゆる「ゴーン・プラン」から半年、村山工場の閉鎖撤回など根本的な要求前進には至らなかったが、職場労働者、地元商店会、下請け関連企業、自治体を激励し、日経連会長の批判発言、労働大臣の国会答弁などを引き出し、大企業のリストラ・首切りを批判する国民世論を大きく喚起した。

 この間、愛労連もリストラ・首切りから労働者を守る闘いを最重視し、「リストラ対策委員会」や「大企業ネットワーク」の協力も得て、秋闘から「12.23」「1.25」「2.25総行動」まで、全労連の呼びかけに応える宣伝・要請・集会などに力を尽くした。また、大規模な人減らしをすすめている企業でサービス残業が蔓延している実態を重視し、独自に「はがきアンケート付きビラ」3万枚を作成、「サービス残業告発」の大企業宣伝にもとりくんだ。愛知機械港工場の閉鎖をはじめ、三菱自動車(大江)、トヨタ車体(刈谷工場)、新日鐵、松坂屋、NTTなど次々に打ち上げられたリストラ・人減らし計画は基本的には変更できてはいないが、こうしたとりくみが「大企業の身勝手なリストラ・人減らしノー」の世論を拡げ、大企業労働者を励ましてきた意義は大きい。

 同時に、愛労連はこの間、木村刃物、日本IBM、第2菱名など県内の仲間の争議解決に全力を挙げ、単産・地域の力強い支援を得て勝利解決をかちとった。春闘山場の「3.16総決起集会」で、その日、争議の勝利解決をかちとったばかりの第2菱名争議団が壇上にのぼって報告したが、「労働者は闘い抜いて勝利をつかむのだ」と確信に満ちた報告は1300人の集会参加者に大きな感動を与えた。ただ、問題は終わってはいない。愛労連は、愛知機械をはじめとする大企業のリストラに反対するたたかいを引き続きすすめると同時に、当面、「解雇規制・労働者保護法」実現のとりくみに力を注ぐ必要がある。

 また同時に、東海・あさひ・三和の3行統合にかかわるリストラ計画に反対する申し入れも早急に具体化する必要がある。和解協議が大づめにきた日立争議のツメをはじめ、全国一般・共栄証券闘争、JMIU・内田油圧争議、ニチメン争議、スミケイ争議など、残された県内の仲間の争議解決も重要である。さらに、これらの争議の先駆けとも言える「国鉄問題」も引き続き重視し、その早期解決に向けてとりくまなければならない。

 

<3-2> 失業・雇用闘争

 失業反対・雇用闘争では、愛労連も委員として加わった「全労連リストラ対策委員会」へ愛知の状況やとりくみを報告すると同時に、「雇用・失業対策地方組織代表者会議」(2月)、「リストラ『合理化』反対、雇用確保全国交流討論集会」(3月)などの全国会議に代表を送り、緊急地域雇用対策をはじめ雇用創出、失業者の生活保障、「失業者ネット」、地域を守る運動など、全国各地の経験に学び、これを愛知に生かすよう腐心した。

 そして「11.17」に続いて「2.25」でも、地域雇用特別交付金の活用へ向けて県や自治体への申し入れ交渉などを行ったが、県も自治体もその活用状況をつかんでいない実状からしても、その不十分さが如実にあらわれており、5月末〜6月には実態をつかんで、その有効利用を迫る必要がある。

 また愛労連は深刻さが続いている雇用・失業状況をふまえ、ハローワーク前での宣伝・アンケート活動にもとりくみ、3月19日には「失業中の方の声を聞く会」も設定してアンケートに実名で答えてくれた回答者に参加を呼びかけたが、当日の参加はゼロで、「失業者ネットワーク」など失業者の結集についても相談できなかった。高校・大学卒業者の就職が年々きびしくなるなかで、メーデーで連帯挨拶した「就職難に泣き寝入りしない女子学生の会」にマスコミが殺到したが、そうした状況を見ても、また中高年失業者に職がなくホームレスが急増している実態を見てもこの問題の引き続く追求は重要で、今後の運動を充分検討しなければならない。

 

<3-3> 解雇規制・労働者保護法実現、サービス残業根絶のとりくみ

 総務庁発表の完全失業率は4.9%、349万人と過去最悪の数字なのに、大企業は「国際競争」を理由に企業再編、分社化、持株会社化をすすめ、労働者の雇用と労働条件を大幅に切り下げるリストラ攻撃をやめようとしていない。政府がまた、そうした大企業を後押ししているのも大問題である。このなかで雇用・失業問題の根源的解決のためには、大企業のリストラ・首切りから労働者を守るEU並みの法律制定や、労働時間短縮による雇用創出の運動が重要で、「解雇規制・労働者保護法」の実現、サービス残業根絶、深夜・休日・時間外の男女共通規制がどうしても必要である。

 しかし、政府が通常国会に提出した「商法改正案」など会社分割・労働契約関連法案は、会社分割に際して「承継営業を主たる職務とする労働者」の転籍については本人同意を必要とせず、営業譲渡における労働協約承継の義務もうたわないなど、会社分割・合併・営業譲渡を口実とする解雇の歯止めもない。これでは、これまで民法で保障されてきた「転籍には本人同意が必要」の原則も崩されてしまう。全労連・愛労連が反対した「雇用保険法の改悪」強行とあわせて、絶対に見過ごせない問題と言わなければならない。

 これに対してこの春闘では、解雇規制・労働者保護法を求め、全労連・春闘共闘は「500万署名」を提唱、連合が「1000万署名」、全労協も「101万署名」を展開するなど、すべての労働団体・労働組合が一致した運動に発展した。また国会では、日本共産党、民主党が議員立法による法案を提出した。ところが国会も終盤になって、今秋をめどに統合をめざす第一勧銀・富士・興銀の「みずほフィナンシャルグループ」発足までに法案を何としても通そうとする森自公保政権の動きをにらんで、連合の「労働者保護法・年金・医療1千万署名」に後押しされて頑張ってきた民主党が自民など与党との「共同修正」による妥協の道を選び、政府案の一部修正で今国会で可決成立必至の見込みとなった。

 その修正はきわめて不充分で「連合」も「遺憾」とするほどだが、共産党案や当初の民主党案に近い、より根本的な修正を迫るためには、全労連500万署名の到達点がまだ60万強、愛知では2万5千にとどまっている状況は何としても克服しなければならない。事態は急を要する。今後、愛労連は署名の上積みに全力を挙げると同時に、私たちの求める「解雇規制・労働者保護法」をめざして次の行動にとりくむ。

 @ 全労連の提起する緊急国会行動(座り込み、議員要請など)に積極的に応える。

 A 早急に学習会など企画し、問題点を明らかにした上で、愛知労働局、県の産業労働部への申し入れ、東海労弁、自由法曹団、県経協への申し入れ・懇談などを検討する。

 B 総選挙をにらみ、6月県議会への請願もにらんで、各政党への申し入れを行い、その内容を活かした機関紙特集号を発行する。

 

4.国鉄闘争、労働委員会、組合費チェックオフなどのたたかい

 

<4-1> 国鉄闘争の勝利をめざして

 国鉄闘争について愛労連は、「一の日宣伝」など節々の宣伝・集会等とともに、全動労裁判の「公正判決」を求め、東京地裁あての署名にもとりくんだ。昨年11月にはILOから日本政府に、「当該労働者に満足のいく解決に早急に到達するよう、JRと当該労組間の交渉を積極的に奨励するよう要請する」との画期的な勧告も出た。しかし3月29日に示された判決は、JRの使用者性を認め、「全動労にいては採用が危ない」など13年前の国鉄幹部の差別発言を事実として明確に認めながら、当時の橋本運輸大臣が「所属組合による差別があってはならない」と国会で答弁したから差別はなかったなど、驚くべき詭弁によってJRの不当労働行為責任を免罪した。そして、全動労救済の中労委命令の取り消しを言い渡した。労働委員会制度の否定にもつながる全くの不当判決という他はない。

 この不当判決に争議団・支援者の怒りと闘志は高まっている。近々ILOが、昨年よりさらに踏み込んだ勧告を政府に出すのは確実と予想されてもいる。判決批判を拡げ、政府がILO勧告にもとづいて解決のための責任を果たすよう、またJRが解決交渉に応ずるよう、要求と宣伝を強めることが重要である。

 愛労連は当面5月27日(土)に、北海道から争議団・家族代表を招いて「激励交流会」を開催するが、これを多数の参加で成功させ、引きつづき支援活動を継続・強化してゆくことが求められる。

 

<4-2> 労働委員会民主化のたたかい

 地労委の民主化闘争は、知事が6度目の連合独占任命を強行した昨年12月以降、新たな段階に入った。愛労連と地労委民主化会議は弁護団とも協議を重ね、新たな訴訟提起を含めて今後の運動方向を探った。そしてその結果、2月末の民主化会議総会で、

 @ 新たな訴訟は起こさず、偏向任命の是正を勧告した昨年の「5.12判決」を確定させ、裁判所の是正勧告を武器に、継続的な運動と対県交渉によって公正任命をかちとる(任期途中で欠員が生じた場合は阿部議長または田中全港湾書記長を推薦する)、

 A そのため地労委係属組合との連携をこれまで以上に強め、片肺地労委の実態と問題点を具体的に明らかにしつつ、運営の民主化と差別的委員選任の是正を迫る、

 B 地労委に限らず、差別的労働行政についても改めて総合的に調査・公表し、その是正を迫るとりくみを結合してすすめる、

 C 昨年来、沖縄と和歌山で再び連合独占に戻る不当任命があったが、全労連が重視する中労委の公正任命(10月改選)を愛知としても強く要求し、全国1万団体署名に協力する、

の4点を確認、方針の具体化は「合宿」をもって検討することとなった。

 その後、活動は成瀬代表委員を中心とする『労働委員会活用マニュアル』の作成や地労委係属組合の調査にとどまっているが、今後、総会決定の具体化を急ぐとともに、当面、中労委の連合独占打破へ、1万団体署名に集中的にとりくむ必要がある(現在6844団体集約)。

 

<4-3> 組合費チェックオフ問題

 自民党は、チェックオフ制度の禁止へ向けての労基法などの改悪案提案を狙っている。年金闘争や労働者保護法をめぐっての労働組合の共同に危機感を抱き、反自自公を鮮明にする労働団体に打撃を与える攻撃であることは疑いない。

 チェックオフ制度は、労基法24条にもとづき労使協定を締結することで実施されているものであり、自民党の主張は憲法28条で保障された労働組合の団結権に対する介入である。企業別組合という組織形態のもとで、ユニオンショップ協定を利用して労資協調組合が育成されてきた経過もあり、組合役員が個々の労働者から直接組合費を集めることで組織強化をはかっている労組もあるなかで、チェックオフ制度のみを絶対視することは誤りだが、自民党の政治的で不純な動機による労働組合への介入・干渉は到底認められるものではない。国会前座り込み行動への妨害とあわせ、攻撃には断固として反対し、全労連の提起を受けてたたかう必要がある。

 

<4-4> 司法改革

 政府は昨年7月、「司法制度改革審議会」を設置し、21世紀にむけて制度の抜本的な改革方向を打ち出そうとしている(今秋「中間報告」、来年7月「最終報告」の予定)。これに対し全労連は昨年11月に「司法制度改革への見解」、本年3月に「労働裁判の改革についての提言」を発表し、「法曹一元化」や「陪審・参審制」の導入など、真に労働者・国民の期待に応える司法制度の実現に向けて、改革方向を打ち出してきた。またこの間、日本弁護士連合会(日弁連)と3回にわたって懇談し、要請に応えて署名「市民に身近な司法を」を7月末・10万人目標でとりくむことを決めている。

 愛労連も昨秋、名古屋弁護士会との懇談を持ったが、重要な問題であり、「市民のための司法改革を求める愛知の会」(7月19日発足予定)への参加も含め、学習と署名にとりくむ必要がある。

 

5.年金・社会保障、行革・規制緩和、教育などの国民運動

 

<5-1> 年金改悪反対のたたかい

 昨年の国会に続いて、通常国会で与野党最大の対決法案となった年金改悪法案は、3月28日、自自公3党のゴリ押しでついに裁決が強行された。しかし全労連は、この年金闘争は、年金者組合を中心とした全国動員による波状的な国会行動をはじめ、中央・地方で多くの貴重な経験と教訓をつくりだしたと総括している。

 この間のたたかいの特徴は、第1に労働団体が最後まで共同歩調をとったことである。秋の臨時国会以降、全労.連と連合などの同時国会座り込み行動は6次に及び、もっとも多いときでは1000名を超える座り込みとなり、国会審議にも大きな影響を与えた。第2に、世論と運動を背景に民主・共産・社民の野党3党が「5項目共同見解」を堅持し、共闘して自自公と対決したことである。第3は、社会保障団体や老人クラブなど広範な国民団体が立ち上がり、全国各地で運動を展開したことである。国会内の野党共闘と国会外での大衆行動は、成立阻止にあと一歩のところまで追い込んだ。かつての「年金スト」以来の盛り上がりと言ってよい。

 愛労連は、7次・51名もの上京団をカンパで組織した年金者組合が牽引車的な役割を果たしたのをはじめ、波状的な国会行動に最大限応えた。またこの間に集約した署名は65,547名に達した(年金者組合2万5千弱、国公1万弱、自治労連・医労連=各6千強、愛高教=3千弱、建交労=2千弱など)。

 年金者組合の奮闘は際だったが、全体として署名がほぼ組織人員数にとどまり、目標の「一人5筆」に遠く及ばなかったこと、宣伝・学習など職場・地域の運動や国会闘争への結集でも単産・地域の落差が大きかったことなど、問題点を克服し、5年後の改正時期をまたず、要求とたたかいを継続する必要がある。また、これだけの反対行動を数の暴力でねじふせて採決を強行した自自公に対し、迫っている解散・総選挙で敵を討つ奮闘も重要である。

 

<5-2> 問題だらけの介護保険制度、4月スタート

 4月1日からスタートした介護保険制度は、介護認定やケアプランの作成が遅れサービス提供が間に合わない自治体もでており、依然として「認定結果が公平でない」「現在より介護内容が悪くなる」などの問題も解決されていない。4月から労働者など第2号被保険者は介護保険料が強制徴収されているが、実質賃金の低下のもと、労働者の不満は大きい。65歳以上の第1号被保険者は保険料が当面凍結されるとはいえ、減額される年金から天引き徴収されことになり、介護サービスを受けるにはさらに1割の自己負担が必要となる。この点は、愛労連の「介護アンケート」(10月実施。自治労連と国公を中心に3544枚回収)でも明らかで、「ずしりと重い保険料」「利用料1割負担の不安」「厳しい介護認定への不満」「足りない介護基盤」の4つを中心に、組合員の不安と不満が鮮明である。

 この問題だらけの介護保険制度に関連し、愛労連はこの間、社保協などと共同してその改善・充実を一貫して求め、キャラバンによる自治体要請、「あんきの会」など草の根からの学習会と要求運動、「介護アンケート」によるPRと問題把握、「宣伝パンフ」の作成・普及、地域社保協づくり、節々での署名・宣伝行動などにとりくんできた。署名の到達でみると、年金より多い到達状況にあるが、よくとりくんできたと評価してよい(署名は68,409名。自治労連3万8千、国公9千、医労連6千、年金者5千5百、愛高教2千7百、建交労1千9百などとなっている)。

 引きつづき国と自治体に対し、@住民税非課税世帯・本人の保険料・利用料の減免、Aサービス基盤整備の促進、ホームヘルパーの大幅な増員、B保険外福祉事業の継続・拡充、などの実施を求め、住民ぐるみの運動を推進する必要がある。また、そのためにも、地域社保協や「あんきの会」など、地域組織づくりにひきつづきとりくむことが求められる。

 なお、関連して今、介護従事者の劣悪な労働条件が大きな問題となっている。関連労組が集まり、実態・問題点を交流し、改善へ力を合わせることが必要である。

 

<5-3> 健保・医療制度の改悪、社会福祉基礎構造改革による社会保障制度の解体

 政府は、介護保険制度の導入、年金改悪の強行につづいて、2兆円もの国民負担増を強いる健保・医療制度改悪の改悪、さらに福祉の措置制度を解体する改悪法案(社会福祉事業法関連7法案)を国会に提出しており、解散前の成立をねらっている。また、政府はこれらを突破口に社会保障全般の構造改革を推進している。国民負担をさらに増加させ、基本的人権と生存権を踏みにじる社会保障制度の改悪に反対して、無駄な公共事業を段階的に見直し社会保障を国の予算の中心にすえること、税金の使い方を改めることを要求し、医療・福祉関連単産を軸に広範な国民的共同をつくってたたかいを強化する必要がある。

 また、そのためにも、総選挙で各党・各候補者に厳しく迫り、私たちの要求実現にかなう政治の革新をめざすことが重要である。

 

<5-4> 財界・大企業とアメリカ本位の「規制緩和」反対

 「タクシー破壊」の道路運送法の改悪法案が国会提出されている。自交総連を中心としたこの間のたたかいのなかで、タクシー運賃の認可制度が維持され、また自民党議員のなかにも規制緩和万能論に異論を唱える「議員連盟」が結成されるなどの変化がおきているが、政府は予算関連法案成立後のスピード審議・採決をねらう基本姿勢を崩していない。また、「港湾労働法」の改悪について「参院先議」で審議がすすめられ、予算関連法案として通常国会での成立がねらわれている。全労連は、交運共闘などとともに臨戦体制を確立しながら、国会前座り込み行動、政党・国会議員要請行動など国会闘争をすすめ、改悪強行阻止をめざしているが、当該の単産を中心に、愛労連も全労連の提起に応える必要がある。

 また、建交労、全港湾、全国一般、生協労連などは「財界・大企業とアメリカ本位の規制緩和反対」を掲げて宣伝や経営者等への申し入れ、自治体や国会議員要請などを重ねているが、さらにこうしたとりくみを広げ、総選挙でも審判を下す必要がある。

 

<5-5> 国民本位の行財政改革

 行革闘争ではこの春闘期に国公労連の「全国縦断キャラバン行動」がとりくまれ、4月末まで2期に分けて全国各地をめぐり、人員削減や病院の統廃合、独立行政法人化などに反対する宣伝や集会、要請行動が展開された。

 また自治労連は、中核市への移行を口実に出てきた賃金改悪との大闘争(豊橋)などにつづいて、今年に入って次々に出てきた「自治体リストラ」=学校給食の委託による現業職員の雇い止め(犬山)、非常勤看護助手への退職強要・派遣への身分替え(東栄町)、病院・保育園・学校給食の新規採用臨職の賃金削減(蒲郡)、社会福祉協議会・就業規則の改悪(安城)などと粘りづよくたたかい、無駄な公共事業の見直し、住民の安全・福祉・健康の保持を基本とする行財政改革など、追求してきた。愛高教も給食調理員のパート化など、県の「第3次行革大綱」の推進に反対してたたかっている。

 こうした闘いは、積年の無駄な公共事業=大型開発事業がもたらした国や自治体の財政危機のもとで、強まっている公務員攻撃や現業部門の民間委託などから働く者の賃金・労働条件と定員を守るたたかいであると同時に、住民サービスの切り捨てを許さぬ、住民を守るたたかいでもあり、すべての労働者・住民に響く問題といって過言でない。

 愛労連の場合、大会方針で「立ち上げを検討する」とした「行革・規制緩和連絡会」(仮称)ができないまま今日を迎え、当該単産まかせになっているが、今後どうしていくか、改めて検討が必要になっている。

 

<5-6> 「30人学級実現」「日の丸・君が代押しつけ反対」など教育要求

 全労連は、全教を中心に、教育要求の実現にむけ、広範な教職員、父母、国民と共同した対話運動を推進し、「30人学級実現」などの大署名にもとりくんできた。また全教は、高校生の就職難が社会問題となるなかで高校生へのアンケート活動などにとりくんだ。愛知では愛高教など当該組合が父母とも連携してこうした運動をすすめた。

 いま森首相は、小渕前首相の路線を受け継ぎ、「教育改革」を21世紀にむけた最重要課題に位置づけ、「教育改革国民会議」の設置、教育基本法の改悪、学校現場への日の丸・君が代の強制、教員への人事考課制度の導入など、教育に対する国家統制を強化する反動的な「教育改革」を推進しようとしている。

 一方、最近になって、名古屋・緑区の中学生5000万円恐喝事件、豊川の高校生の主婦殺害事件、九州での西鉄高速バスジャック事件など10代の犯罪が相次ぎ、「いったい、子どもは、教育は、どうなっているのか」との不安が多くの大人に拡がっている。

 愛高教などからの問題提起を受けて、全労働者の重要課題として教育問題にもとりくむよう、検討が必要な時期といえる。

 

<5-7> 有珠山の噴火災害救援

 3月31日の有珠山噴火後、全労連は幹事を派遣して対策会議、交渉出席、被災地視察、職場激励をおこなうとともに、被災者救援・復興のための全国的カンパをよびかけた。道労連現地対策本部、北海道内の民主団体は災害対策連絡会議をただちに設置し、被災者救援のために奮闘している。予想される長期の噴火によって、労働者、業者、農漁業などの営業・雇用問題が深刻になろうとしており、阪神・淡路大震災被災者とともに公的支援拡充のたたかいが重要になってきている。

 愛労連は、単産・地域での「救援カンパ」を呼びかけているが、全労連の方針を受けて、募金や公的支援を求める署名など、検討する。

 

<5-8> 消費税廃止、当面3%へ

 愛労連は、消費税の廃止、当面3%への減税を求め、各界連絡会、消費税をなくす会などとともに、署名運動、「24日の宣伝行動」にねばりづよくとりくみ、3月末には栄での「ロングラン宣伝」も実施した。

 政府は「景気は回復傾向にある」と宣伝しているが、依然として個人消費の低迷が続き、消費税減税は生活と営業を守る国政の緊急課題である。しかし、参議院に提出されている「消費税減税法案」の審議入りが見送られ、逆に自公保3与党は、年金をはじめとした社会保障費の財源確保などを口実に税率の大幅な引き上げを策動している。6月総選挙闘争の重要な争点として引きつづき運動を強化する必要がある。

 

<5-9> 安全な農業・食品は日本の大地から

 国際的運動との連携強化を目的に、アメリカ、イタリア、韓国から海外シンポジストを招いた「WTOに関する国際シンポジウム」が2月20日〜21日、全国から約600人が参加して開催され、愛労連からも代表参加した。

 このシンポジウムは、全労連も参加している全国食健連、農民連、全農協労連、AALA(アジア・アフリカ・ラテンアメリカ)連帯などが実行委員会をつくって開催され、「WTOのもとでは食糧・農業問題は悪化するだけである。協定から食糧・農業ははずせ」との声が世界に広がっていることが確認された。愛知では農民連などとの連携して秋と春に「総行動」をくみ。食糧メーデーなども続けているが、今後とも日本の食料・農産物の確保・安全性を守るため、WTO協定の抜本改定をもとめて運動を強めることが求められる。

 

6.補助金カット反対、万博・空港こそ見直せ

 

<6-1> 万博「県民投票」の実現を求めて

 愛知県政の焦点ともなっている「2005年愛知万博」については、「県民投票条例制定」の直接請求署名を決意した私たちの動きに知事と県政与党がおびえ、1月14日の中日新聞のスクープを契機に、ついには新住宅事業とアクセス道路の中止など、当初案を大幅に修正して県民批判をかわそうとする動きが表面化した。

 この土台に、「21世紀は環境の世紀」といわれる自然環境保護の世論の拡がりと、藤前干潟埋め立て断念に追い込んだ1年前の名古屋の経験がある。また、かつてない財政危機の下で暮らし・福祉・教育へのわずかな補助金をカットし、県関係職員に賃金・一時金の切り下げを押しつけながら、なお万博・空港に固執する知事と県政与党への県民の強い批判があるのも明らかで、昨年来の私たちの主張と運動は、県当局を大きく追い込んでいると評価できる。

 国家公務員や教員は受任者になれない、受任者も自分の居住地でしか署名を集めることが出来ない(職場では一部しかとれない)、署名簿の回覧は出来ない・・など「直接請求」ゆえの制約も多く、労働組合にとってはきびしいとりくみで組合落差も大きかったが、市民・民主団体とあわせて受任者(   )万名、2ヶ月の署名期間で(      )名の署名を集めた頑張りは評価してよい。受任者が組合員の1/3、千名を超えた豊橋市職労をはじめ、仲間の奮闘に敬意を表したい。

 ただ、県はなお「海上の森」にこだわっており、青少年公園のアセスメントもやられていない。財政問題も何一つ解決していない。また、県民の声に率直に耳を傾ける姿勢はいまだにない。つまり基本問題はすべて未解決と言う他はない。(  )万の署名を武器に、いっそう宣伝と要求をつよめ、「万博開催の是非は県民投票で決めよう」を圧倒的な世論として、総選挙後に開会予定の6月県議会を包囲しなければならない。

 

<6-2> 補助金カット反対のとりくみ

愛知県の補助金カット反対の行動は、私学関係者が秋に439万の県民署名を集めて12月議会で請願採択をかちとり、現行水準を守ったのをはじめ、障害者団体が師走に連続7日間、最終日は徹夜座り込みを敢行するなど、文字通り必死の運動がつづき、県当局を追いつめた。愛労連は障害者のそうした必死の座り込みを毎回サポートし、昨年はじめて組んだ共同を次第に強固なものにした。そして2〜3月議会の請願締め切り日=2月29日には、三の丸での早朝ビラにとりくんだ後、障害者福祉関係予算の削減中止を求める請願署名3万余を提出、議会傍聴と県庁前座り込みを同時並行でとりくんだ。昼休みには名城東小公園で集会を行い、県庁前までデモ行進してシュプレヒコール、500名を超える統一行動を成功させた。当初30%以上と打ち出されたカット幅を昨年15%まで押し戻し、私学助成同様、今年さらなるカットを阻んだのは、この共同行動の成果である。

 ただ基本問題は未解決で、深刻な財政事情の下、運動が弱まればただちにカットがかぶるのも事実である。私学助成や障害者の小規模作業所などへの補助金カットは手控えた県も、乳幼児・障害者・母子父子家庭への福祉医療無料制度と、70歳以上の障害をもつ高齢者への福祉給付金(ともに本山革新市政の時代に住民の要求で実現させた「医療無料化」制度)については、この8月から一部有料化を決めており、これがこのままやられれば、いま無料の50万人中33万人が有料とされてしまう。現在は県と市町村とが半額ずつ負担しているが、市町村が今までどおり出すか、県と同様のカットか、もしくは県の分まで併せて出すかによって大変なちがいが出ることになる。

 この下で障害者団体や社保協、革新市政の会、名古屋市職労など9団体が共同で、「名古屋市の福祉医療制度を守る」ための団体署名やハガキを6月議会(22日開会予定)に集中する運動を始めているが、来春は市長選挙もあることから、愛労連も社保協中心組織としての責任をはたし、革新市政時代に築いた福祉医療を守る必要がある。

 

7.解散・総選挙、平和・民主主義・憲法擁護のたたかい

 

<7-1> 春闘前段での大阪・京都の首長選挙支援

 全国が注目し、愛労連も支援した大阪府知事選、京都市長選は、私たちが支持した鯵坂候補、井上候補がともに善戦した。選挙戦は、吉野川可動堰の住民投票勝利や愛知万博計画を国際事務局が批判するなど、公共事業優先政治の在り方が問われ、「数の暴力」で民主主義を踏みにじる自自公政権の評価を問う選挙となった。また、最終盤には相手陣営の異常な反共攻撃が強まるなど、かつてない激戦となった。このたたかいに、自治労連は12月から数回にわたって応援部隊を送った。愛労連も、全労連・大阪労連と協議して大阪にバス1台で応援に行ったのをはじめ、京都総評にも支援カンパや檄を届け、鰺坂・井上両候補の押し上げに力を尽くした。

 

<7-2> 総選挙で政治の流れを変えよう

 小渕首相が倒れ、首相交代劇をめぐる情報操作と疑惑のなかで森新内閣が発足したが、総選挙までの事実上の「暫定政権」に過ぎず、世論調査でも7割の国民が「長続きしない」と予測している。政局は一挙に国会解散・総選挙にむけて動き出し、6月2日解散・13日公示、25日投票の政治日程が確定的である。

 今回の総選挙は、自民・公明が共謀してすすめる反国民的・ファッショ政治に審判を下し、労働者・国民の要求が届く民主的政府への展望をきりひらく選挙である。広範な労働者の間に、「政治の民主的転換なくして要求実現も困難」との声がひろがっているなかで、労働組合としての選挙闘争を積極的にたたかう。切実な要求との関連で各政党の政策、活動を検証し、組合員への宣伝・啓蒙活動を強める。政党支持の自由、政治活動自由を基礎に、全労連・愛労連方針にもとづく学習・討論を単産・地域で行い、職場と地域から政治転換の風をまきおこそうではないか。

 → ●別紙:付属議案参照。

 

<7-3> 戦争法の発動阻止、憲法擁護、安保条約廃棄のたたかい

 戦争法の発動阻止、「日の丸・君が代」の押しつけ反対、盗聴法廃止・法の乱用反対、国会に設置された「憲法調査会」の動きを監視し憲法改悪を許さないたたかい、などを全国の職場・地域でおこなうために、全労連は「憲法擁護、戦争法発動阻止対策委員会」を昨秋に設置し、戦争法発動阻止・憲法擁護の職場宣言・決議運動などをよびかけた。また、ほかに沖縄の基地撤去の課題にもとりくんだ。愛労連はこの委員会に伊豆原副議長を送り、中央と各県労連のとりくみを紹介して組合員に同趣旨の宣言・決議運動を呼びかけたが、交流の機会をつくれず、単産・地域任せになった。

しかし、昨年の戦争法、国旗・国歌法、盗聴法の強行以後、我が国が危険な道に踏み込んだのは間違いなく、このところ愛知でも、@自衛隊が迷彩服に小銃を抱えて市街地で訓練する例が目立つ、A小牧に配備されているC130H輸送機が、一度に6機運行から13機全機の同時運行ができるよう「補強」された、B4月に安保破棄実行委が名港管理組合と懇談した際、周辺事態法にもとづく戦争協力について「上から指示・要請があれば拒めない」との態度が表明された、など状況は悪い方に変化している。アメリカの公文書公開で日米の核密約の存在が明確になり、日本共産党が国会で厳しく政府の嘘を追及しているのに、マスコミがほとんど取り上げない事態など、驚くべき無関心もしくは悪意に満ちた無視も危険と言わねばならない。

 このなかで愛労連は、安保破棄実行委員会や「新ガイドライン反対連絡会」、「盗聴法阻止連絡会」「愛知革新懇」などに結集して宣伝・要請などとりくみ、憲法記念日の「市民のつどい」等への積極的参加も訴えてきたが、率直に言って一部の単産・地域を除いてとりくみの弱さは否めない。

 新政権発足早々「有事立法」も口にした森首相を見ても、状況は楽観を許さない。「日本は天皇中心の神の国」なる首相発言を問題として緊急にとりくんだ金山の抗議宣伝には市民の反応も大きく、マスコミも取り上げたが、この経験を教訓に今後も批判・宣伝行動は機敏にとりくみ、森政権を世論で追いつめる必要がある。また、5月末には恒例の平和大行進が愛知入りするし、愛労連10周年企画「沖縄・平和の旅」もある。「平和の夏」もやってくるが、高蔵寺平和マラソン(12月・春日井)、日本国憲法成立劇=「真珠の首飾り」上演(6月2、3日・港湾会館)などの企画を意識的に追求している仲間にも学んで、学習、宣伝、決議運動を職場・地域から強化しなければならない。

 

8.組織の拡大・強化、対話と共同のとりくみ

 

<8-1> 10万人愛労連をめざして

 愛労連10年の春闘にふさわしい組織拡大の前進をめざし、あらゆる闘争課題の推進と結合した組織拡大のとりくみをすすめる、というのが2000年春闘の方針であった。そこで幹事会は、従来から追求してきた、「職場の多数派形成」「友好労組の結集」「未組織労働者の組織化」を総合的に追求することとした。

 2・25での「50万枚の組織宣伝」は愛労連として初のとりくみであった。このビラで宣伝した「県下5ブロック、一斉労働相談」は15ヵ所で実施、13件の相談があった。相談件数は比較的少なく、まったく相談の無かった場所も多かったのだが、15会場に61人の相談員を配置してのとりくみだった。なお、愛労連事務所と県段階から相談員が配置された4ヵ所を除いて10ヵ所で地域労連が独自に相談員を配置したことは、今後の労働相談活動と未組織労働者の組織化にとって貴重な経験と言える。

次に、春闘方針では、6つの階層・分野別に方針化をはかることとした。

 @ 中小企業労働者の組織化は、意識的なとりくみに至らなかった。

 A パート、臨時、派遣労働者の組織化については、昨年11月の「第5回あいちパート・臨時の元気が出る集会」の成功を機に、パートの交流会を随時開催することとし、2月28日に1回目を開催、5月15日に2回目を開催することとした。派遣労働者については、この間の労働相談をつうじて「きずな」に加入した組合員が数名いることから、派遣労働者独自のとりくみが求められている。

 B 新入社(職)員への働きかけは現在、各職場で積極的にとりくまれている。青年層への働きかけでは、青年部活動交流会を4回開催し、そのまとめとして青年部活動学習交流集会を4月8日に開催し、23名の参加で成功した。今後も青年協(部)に対し、親組織としての相談や具体的援助などが必要となっている。

 C 中間管理職層の結集と組織化は、具体化できなかった。

 D 失業者への働きかけでは、昨年から今春闘でとりくまれた、職安前アンケートの回答者で住所が明記してあった19名に呼びかけ、「失業中の方の声を聞く会」の開催を企画したが、参加者はゼロであった。県内の失業率が4.3%、失業者数が16万7千人という状況の中で、失業者に対する働きかけとその組織化は重要な課題となっている。

 E 年金者組合への加入促進では、ここ数年とりくんできた『年金者組合への加入のお誘い』の活用ができなかった。最近も単産・地域労連の役員で今年定年を迎えた仲間に、退職時に年金者組合への加入の話がなかったということがあった。愛労連全体として、年金者組合への紹介活動を強化する必要がある。

 今後は、引きつづき新入社(職)員の組合加入にとりくむとともに、青年層の結集を重視する。また、未加盟労組への訪問活動を引きつづき行う。地域労連の訪問活動では、愛知共済会の活用を具体化する。未組織の組織化のとりくみは、組織拡大推進委員会で具体化する。さらに今後の愛労連幹事会では、2回のうち1回は組織拡大について議題にかかげ、きちんとした議論を追求することとする。6月に県が実施する「労働組合基礎調査」には現勢が正確に反映するようにするとともに、昨年を上回るよう努力する。

 

<8-2>学習・討論の重視、職場活動など組織の強化

 今春闘では、「情勢、要求課題、運動論」などの学習活動と、労働者の要求を日常的にとりあげる職場活動の強化が求められたがきちんとした点検・集約はできなかった。

 今後、労働者の声を結集する要求アンケートのとりくみと職場討議、職場学習会の開催、各種行事や行動への組合員の参加、機関会議の定例開催と出席率の向上など、引き続き日常的な職場活動を重視してとりくむ必要がある。

当面、愛労連として、「職場活動のとりくみとその強化」をテーマにして、第2回労働組合講座を開催する(6月3日〜4日、金山プラザホテル)。各単産・地域労連からの積極的な参加を要請したい(参加目標等は要請済み)。

 次に、地域労連の活動強化は、愛労連10年の時点にたって見ると、さらに重要性が増してきている。第10回地域労連研究集会(7月8日〜9日、山海館)は、地域労連のさらなる発展をめざす重要な会議となる。すべての地域労連からの参加を要請したい。また、県下全域に組織を持つ単産からの参加も要請する。充実した研究集会をめざしたい。

 

9.2000年夏季闘争の推進について

 

● 夏季闘争の重点課題とたたかい

 

<9-1> 悪法阻止の闘い

 2000年夏季闘争の課題として、第1に、残る通常国会会期における悪法阻止のたたかいが重大な事態となっている。自公が一瀉千里の強行成立をねらう予算関連法案は、日本共産党のみの反対で先に通過した「雇用保険法改悪案」に続いて、「預金保険法改悪案」「児童手当改悪案」「社会福祉事業法改悪関連7法案」「港湾労働法改悪法案」などがある。また予算関連以外の法案でも、選挙期間中の拡声器による書籍・パンフレット宣伝などを禁止する「公職選挙法改悪法案」が日本共産党を除く全党の賛成で通過したが、さらにリストラ・会社分割にともなう本人同意を不必要とする「商法改悪案」「労働契約承継法案」が民主党の妥協・一部修正で一気に通る危険性が高くなっている。タクシー破壊の「道路運送改悪法案」、組合費の「チェックオフ禁止法案」などが強行成立させられる危険もある。

 総選挙闘争に備えつつも、夏季闘争の前段としてこの国会闘争に集中的にとりくむ必要がある。

 

<9-2> 労働者の要求・権利闘争

 労働者の要求・権利闘争では、

 @ 春闘未解決要求の実現、生活を守る夏季一時金の獲得、公務員調整手当の改悪阻止、要求にもとづく人事院勧告の実現、

 A 全国一律最低賃金の制度化、地域包括最低賃金の抜本改定、看護婦、トラック、印刷・出版など産業別最低賃金の確立、企業内最低賃金の改善と締結などの最低賃金闘争の前進、

 B 大企業のリストラ・首切り反対、「解雇規制・労働者保護法」の制定、「500万(愛労連30万)署名」の達成、サービス残業根絶法の制定と職場からの労基法違反の一掃、日立・共栄証券・内田油圧・ニチメン・スミケイなど県内の争議解決、

 C 国鉄闘争の早期勝利解決、中労委労働者委員の公正任命へ向けた全国1万団体署名の達成、「組合費チェックオフ禁止法」阻止、

−の4項目を重点に位置づけ、単産・地域労連の力を結集しつつ、重点をしぼった攻勢的な要求闘争をたたかう。

 

<9-3> 総選挙闘争

 2000年夏季闘争は、6月2日解散、13日公示、25日投票がほぼ確定した「総選挙」と結合してたたかわれる。「政治の民主的転換なくして要求前進も困難」であることが多くの労働者・労働組合の共通認識にたかまっているなかで、愛労連は、要求闘争と総選挙勝利をしっかりと結合してたたかう。

 今回の総選挙では、数の暴力による悪政をくり返す自民、公明、保守の連立政権の存続を許すのか、それとも労働者・国民本位の民主的政治・政府の展望をきりひらくのかが問われている。同時に、戦争法、日の丸・君が代、盗聴法、憲法改悪の反動政治を存続させるのか、それとも憲法を職場と暮らしに生かし、平和と民主主義の花開く21世紀をきりひらくのか、が問われる歴史的な闘争である。各単産・地域労連は職場・地域で、また出来るならば広範な労働者・労働組合への訪問活動にもとりくんで、愛労連の「総選挙闘争方針」(別紙、付属議案)にもとづく対話活動をすすめる。そのためにも職場・地域で、機関紙「総選挙特集」など活用した「学習・決起集会」「小集会」などを早期に開催する。

 

<9-4> 反核・平和の闘い

 反核・平和闘争は、夏季闘争の重要な柱の一つである。「国連ミレニアムフォーラム」(5月21日発、ニューヨークへ。6月1日帰名)へ愛知からも労働者代表を送るとともに、2000年原水爆禁止世界大会(8月6日〜広島)の成功をめざし、5月31日愛知入り(〜6月11日、岐阜への引き継ぎ)の平和行進に「愛労連旗」を通す。また、各コースの行進を出来るだけ多くの組合員参加で成功させる。

 また憲法改悪策動が強まるなか、愛知憲法会議や愛知革新懇などとも連携し、秋に向けて憲法擁護運動・行事の具体化を相談する。さらに、米軍基地の集中する沖縄で開催されるサミットにむけて、名護の新米軍基地建設反対のたたかいを支援するとともに、県内の基地撤去・縮小、名古屋港・名古屋空港の軍事利用反対にもとりくむ。自民党がねらう有事立法制定に反対するたたかいを展開する。

 当面、6月2日〜3日に港湾会館で上演される憲法劇「真珠の首飾り」成功に力を尽くす。

 

<9-5> 組織の拡大 −既述、省略。

 

● 夏季闘争における統一行動

 

<9-6>

 夏季要求の実現をめざし、単産・地域労連、官民一体の統一闘争を強化する。総選挙闘争勝利とも結合し、6月7日を夏季闘争の「第一次統一行動日」と位置づけてたたかう。

 職場・地域では、夏季一時金の獲得をはじめとする諸要求実現と、総選挙勝利への学習・意思統一を結合し、職場集会や宣伝・署名行動などを具体化してとりくむ。

 同時に、全労連の中央行動(=全国一律最賃の制度化や地域最賃の抜本改善を要求する対政府行動、調整手当改悪反対、要求にもとづく人事院勧告を求める人事院・大蔵包囲、下請け単価、農産物価格などナショナルミニマム確立を求める諸団体との共同行動)に単産中心に参加する。

 

<9-7>

 6月後半〜7月中上旬の行動配置については、総選挙闘争日程との関連で後日具体化する。

 歴史的な重要性をもつ総選挙闘争を重視し、5月〜6月に予定してきた全県的な集会等については、出来る限り延期・中止のうえ、総選挙闘争に集中してとりくめるようにする。

 

以上

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