貴職の日頃のご活躍に敬意を表します。
さて、ご存じのように長引く不況のなかで、労働者・県民の生活は今たいへんきびしい状況にあります。昨年は完全失業者が4%台で推移する一方、県下の有効求人倍率は0.5倍そこそこで、「1年以上職がない」との訴えや、学校を出ても仕事に就けない若者の増加など、雇用状況の悪化が際だちました。中小企業の倒産も相次いでいます。このなかで国の政治は、70兆円もの銀行支援や「産業再生法」等によるリストラ支援など大銀行・大企業に手厚く、労働者・国民に対しては年金・医療の改悪など、きわめて冷たい状態がつづいています。万博や新空港建設は「聖域」にしながら2年連続での補助金カットなど、財政危機を理由とする県の施策もまた、私たちを苦しめています。
さらに問題なのは、巨額の利益を上げている大企業までが競ってリストラ・人減らしや賃金・労働条件の切り下げ、下請け関連企業を泣かせるいっそうのコストダウンに走り、2000年春闘に対しても「総額人件費の抑制」=「賃下げ・人減らし」を口にして逆攻勢に出る企業が多いことです。最近、政府は「景気の回復基調」を言っていますが、労働者や中小業者、国民の状態がこのように厳しい中では、景気の本格回復は期待できません。奥田日経連会長の「首を切るなら腹を切れ」との発言は有名になりましたが、長く日本経済を下支えしてきた中小企業や勤勉な労働者・国民が見通しをもてず、将来不安を募らせる状況は、一刻も早く打開しなければなりません。
こんななかで私たち8団体は、「不況打開、リストラ・首切り反対」をはじめ切実な要求を掲げ、共同してその前進をはかる「総行動」をとりくみます。貴職に対しては以下のとおり「要請書」を提出しますので誠意をもって検討され、前進的な回答をいただくよう、要請します。
記
1.企業の身勝手なリストラ・首切りに歯止めをかけ、労働者の雇用と権利、労働条件を守るために、下記の事項について努力すること。
@.日産(愛知機械)、NTT、三菱自動車、東海銀行など大企業が競うように打ち出している「リストラ・人減らし計画」について、雇用を守る企業の社会的責任を強調し、局長名で再考・撤回を要請すること。
A.「競争力強化」を掲げた企業の合併・分社化・持株会社化や業績不振などを理由とする大量の人減らし「合理化」、不安定労働者への置き換え、希望退職の強要、工場閉鎖などについては、これをおこなわないよう指導・監督を強めること。また雇用対策法で定める届け出を遵守させ、労基局や県が、解雇権の濫用がないかどうか、労働者の権利が守られているかどうかを調査・告発するシステムをつくること。
B.企業の一方的な賃金・労働条件の切り下げや、賃金体系の改変による賃金切り下げの実態について調査し、その防止策を検討すること。
C.最高裁の判例で確定している「整理解雇の4要件」に反する解雇はやめさせるとともに、出向・転籍も本人と労働組合の同意を原則とする旨の行政指導を徹底・強化すること。そのため、出向・転籍や解雇に際しての労働者の権利など明記したパンフレットの作成・配布、特別相談窓口の開設など、検討・実施すること。
また、企業によるリストラ・人減らしや本人同意なしでの出向・転籍、労働条件の一方的な切り下げなどから労働者をさらに強力に保護するために、労働界がこぞって要求している「解雇規制・労働者保護法」の早期制定をめざすこと。
2.違法なサービス残業(ただ働き残業)の一掃など労働時間の短縮をすすめ、そのことで「雇用創出」をはかること。
@.サービス残業の一掃、週休二日制の完全実施、年次有給休暇の完全取得、年間実労働時間1,800時間以下の実現など労働時間の短縮をめざし、そのことによって「雇用創出」を図ること。
A.とりわけサービス残業(ただ働き残業)については違法キャンペーンをおこない、「一掃強化月間」の設定、手紙やパソコン通信等による告発や相談の受け付けなど検討・実施すること。
3.労働諸法制の「改正」から労働者を守り、だれもが「人間らしく生き働ける」労働環境をめざして、次の点に努力すること。
@.時間外労働は上限を1日2時間・週5時間・年間150時間以内とする、深夜労働は原則禁止とし不可避の職務に限定して厳しい規制を設けるなど、深夜・時間外・休日の労働時間の男女共通の法的規制(罰則付き)を実現すること。
A.パート労働者の労働条件を改善するため、正規労働者との「均等待遇」と「事業主責任」の義務規定化など「パート労働法」の抜本的改正をめざすこと。また、法改正以前でも企業にはその趣旨を要請すること。
B.新たな裁量労働制は、労基法38条の4の要件(労使委員会の要件6項目、労使委員会が決議する7項目)を満たさない場合は実施できず、有期雇用契約の導入も労基法14条の要件を満たさない場合は実施できないことを周知・徹底すること。
C.変形労働時間制の要件緩和を行わず、1ヶ月の変形労働時間制については1日・1週の上限を設けるとともに、変形労働時間制の規制を強化するよう国に働きかけること。
D.派遣労働者や「契約社員(労働者)」保護のため、下記の事項について検討し、罰則付きで実効性を確保すること。
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派遣期間の制限をこえた派遣について、派遣労働者が正規雇用を求めた場合は、派遣先企業に雇用を義務づけること。
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就業条件(業務内容など)の明示を義務づけること。また、派遣労働者の労働条件について、派遣元・派遣先企業の共同責任を義務づけること。
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派遣先企業による一方的な派遣打ち切りを禁止すること。また、契約の一方的な解除、いやがらせ退職強要を禁止すること。
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派遣労働者のプライバシー保護を派遣元・派遣先企業に義務づけること。
4.失業者・求職者の生活を守るため雇用保険法改悪に反対するとともに、雇用保険改善をめざして次の緊急措置を行うこと。
@.非自発的失業者と40歳以上の失業者で失業給付期間が過ぎた世帯主に対し、当面90日間失業給付を延長すること。さらにその給付も過ぎた失業者に対しては、税金や社会保険料の減免措置を行うこと。
A.「自己都合」の退職者の給付制限期間も、緊急措置として1ヶ月に短縮すること。
B.新規卒業者など雇用保険受給資格のない求職者にも職業転換給付金制度を適用して、職業訓練制度を活用できるようにすること。
C.生活困難な失業者には生活保護を適用するよう、適用基準を緩和すること。
D.失業給付の国庫負担を法定の1/4に戻すこと。
E.すべての事業所が労働保険に加入するよう指導するとともに、職安では労働保険に加入していない求人を受け付けないこと。
5.労働者・国民の生活改善と消費購買力の回復、国民本位の不況打開のために、次の要請に応えること。
@.2000年春闘における財界の「賃下げ・人減らし」攻勢に反対し、大幅な賃金の引き上げ要求を掲げてたたかう労働者・労働組合に理解を示すこと。
A.すべての労働者の賃金底上げをめざし、全国一律の新しい最低賃金制確立に努めること。当面、現行の地域・産業別最低賃金を月額15万円、日額7,400円、時間額1,000円まで引き上げること。非課税限度額は180万円以上とすること。
6.労働行政の充実をめざして、以下の要請に応えること。
@.監督官の増員など、労働基準監督行政の態勢を強化し、いっそうきめ細かな指導・監督が出来るようにすること。
A.中央省庁の再編・統合に関連する4月の「愛知労働局」(仮称)設置に関わって、私たちが11月に提出した別途の『要請書』に引きつづき誠意をもって応えること。
B.労働基準法をはじめとする労働法制の趣旨徹底をはかり、労働者のくらしと雇用、権利を守るために、メーデーや「勤労感謝の日」などを生かした「労働者の権利徹底月(旬)間」などの設定と企業や労働者・国民へのPRなど検討すること。また、国に対してもその方向での意見具申をおこなうこと。
以上
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