愛知県知事・神田真秋 様

雇用・失業に関する要望書

1999年10月25日

愛知県労働組合総連合
議 長   阿部 精六


 貴職の努力にもかかわらず、中小企業の倒産や労働者の失業率・有効求人倍率が最悪水準を続け、ますます深刻の度を増す状況にあります。

 奥田日経連会長がトップセミナーで経営者への「いましめ」を言わざるを得ないほど、企業側のなりふり構わぬ退職強要や中高年労働者への非情な職場追い出しが増加しています。公務職場の賃金・定員「合理化」や自治体リストラが、民間のリストラ加速の一因となっている点も見過ごせません。

 また、中小企業の倒産原因を見ると、銀行からの強引な資金回収や貸し渋り、選別融資によるものが急増しています。銀行の、企業に対するリストラ強要が労働者の解雇や労働条件の引き下げに直結している現状にあり、この改善も急務となっています。

 こうした情勢のもとで愛知県は、県財政が危機的状況にあるなかでも、労働相談の増設増員・相談時間の延長、企業への人員募集・採用条件改善の協力要請、産業雇用対策本部の設置、国の特別交付金への対応など、努力されているのは評価できます。また、私学助成や障害者福祉などに対する「補助金カット」の一部手直しや万博会場計画の一部変更など、これまでの私たちの要求にも一定の配慮がされていることも承知しています。

 しかしながら、県の雇用・失業対策は、依然として政府の不十分な対策の枠内であり、独自性や実効性はきわめて不十分と言わざるを得ません。

 国や地方自治体は、今こそ財界・大企業の社会的責任を明確にし、失業の発生を防止する企業努力の要請・指導や中小企業へのしわ寄せ禁止などを基本に、行政指導を具体化すべきではないでしょうか。また、万博・空港計画を聖域とした公共事業偏重、県民犠牲を強いる「第3次行革大綱」推進を基本とした県政運営を思い切って改め、県民こぞっての県財政再建の方向に踏み込むべきではないでしょうか。

 ついては、次年度の予算編成をはじめ、県政運営に関わって以下の点を重視し具体化して下さいますよう要請します。

 

 

1.県下の各経済団体及び企業に対する指導について

(1)7月に知事名で出された経済団体及び11,000企業への「募集・採用」の要請について、その結果を公表し、県としての今後の方針を明らかにすること。また、求職中の中高年や新規学卒者の雇用促進、障害者についての法定雇用率完全達成などについて、県として特段の努力をおこなうこと。

 

(2)これ以上の失業者発生を防ぎ雇用を拡大するために、労働時間の短縮や、サービス残業・ただ働き残業の根絶をはかるなど、各企業及び業種・業界に県として要請し、企業にその具体的な対策や計画の提出を求めること。

 

(3)きびしい経営環境にある中小零細企業については、その経営の安定に心を砕き、県として必要な対策を講ずることでその倒産・解雇を防ぐこと。

 これに関連して、大企業・金融機関には下請け関連や取引先の企業を大切にし、その経営と雇用を守るために配慮・努力するよう、県として要請をおこなうこと。金融機関の強引な資金回収や貸し渋り、大企業による関連中小企業への出向押し付け、下請け単価切下げ、発注停止など、身勝手な下請けいじめについては、これをおこなわせないよう厳しく指導し、目に余るものは企業名を公表すること。

 

(4)賃下げ、残業手当カット、一時金や退職金の減額・廃止、強引な出向・配転、欠員不補充や不安定労働者への置き換え、休日・労働時間や福利厚生の改悪など、最近急速に増えている労働条件の一方的な切下げについては、「労働基準法1条違反」としてこれを許さない姿勢を貫き、企業への要請・指導も強化すること。

 万一倒産・廃業の際も賃金・退職金など労働債権は最優先されなければならず、企業は労働者  の生活保障に努める責任があるという姿勢で指導すること。

 

(5)現在のような深刻な雇用・失業状況のもとでは、工場閉鎖や海外移転など大量の人員削減をともなうリストラ計画は自粛するよう、つよく企業に要請するとともに、すべての労働者・使用者に対して、事前協議や「整理解雇の4要件」厳守についての徹底を図ること。

 万やむをえぬ事情で人員削減をおこなう場合には、事前に企業・事業所が所在する市町村と県への届出と合意を義務づけること。

 

2.県独自の対策について

(1)県職員・教員の定数削減や賃金カットを撤回すること。少なくとも来年度以降はこれを行わないこと。また県庁から一切のサービス残業をなくし、野放図な時間外労働はやめるなど、県自ら襟を正すことを内外に宣言すること。

 なお、「補助金カット」による関連労働者の解雇や労働条件の切下げについて至急調査し、是正措置をとること。自治体リストラは職員組合と住民の合意なしには行わないこと。

 

(2)介護・医療・福祉の充実に向けたホームヘルパー・看護婦・施設職員等の増員や30人学級の実施による教員増など、公務職場での雇用創出にむけて早急に具体案を作ること。

 また、仕事と雇用を増やす上で波及効果の大きい住民・地域密着型の公共事業を地元中小業者に発注し、その経営と雇用を守ること。地元中小企業への官公需発注比率を引き上げること。

 

(3)米バーモント州の例にあるように、主要な自治体に県の責任で「労働者権利センター」(仮称)を設置するなどにより、解雇や権利侵害の相談を受け付け、その解決に当たること。当面、有効求人倍率が異常に落ち込んだ豊田市への設置を急ぐこと。

 

(4)緊急雇用「特別交付金」の県としての活用計画案の状況と今後の対応について説明し、労働組合等の要求を聞くこと。なお、8月12日に愛労連から提出した『要求書』の内容と精神にそって、恒常的な公的就労事業につなげるよう国に対して要望・意見を上げること。

 また、この「特別交付金」による雇用は、特別な技能・技術をもたない失業者・求職者にも就労の機会を与えるものとするよう配慮し、県独自にも予算の上乗せに努めること。

 

3.県民生活を守る緊急の要求について

(1)県内の非自発的失業者への県独自の救済制度を、企業からの拠出を含めて確立すること。

 例えば、50万円までの無担保無利子の融資、住宅ローン返済の延期・補助、教育費や医療・年金の支払いの軽減や延期など、検討し制度化すること。

 

(2)国に対して、@雇用保険の支給内容の改善や支給期間の延長、新規学卒者への適用、A時限立法を含め「解雇規制法の制定」を急いで要請すること。

 

(3)県民のくらしや福祉・教育を直撃し、自治体の財政にも重大な影響を及ぼす県の「補助金カット」は中止すること。また、万博中止、新空港計画の抜本的な見直しなど、大型開発・イベント中心の県政の転換をはかり、県民本位の財政再建をめざすこと。

<以上>


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