春闘の到達点(中間総括)と引きつづく夏期闘争について

2001年6月8日

愛労連2001年度第2回評議員会



【目次】

T.2001年国民春闘の到達点について

パートを含む賃金の底上げ、「はたらくルール」確立が「流れ」に

1.労働者・国民の状態悪化と全労連・春闘共闘の方針

2.本格化した「底上げ・最賃闘争」と「目に見え音に聞こえる」行動の展開

3.賃上げ回答の全体結果と、底上げ・最賃、不払い残業根絶への重要な前進

4.リストラ「合理化」反対、争議支援のたたかい

5.国民要求実現、政治の転換をめざして

6.とりくみの到達点春闘再構築の方向が見え、展望につながる「共同」がひろがった

7.検討すべき課題

U.当面する夏期闘争について

春闘後半戦=最賃や夏期一時金・8月人勧闘争と結合して

要求前進をめざし、「悪政許すな!政治の転換を」を掲げて参院選も頑張ろう

1.春闘回答の引き出し・上積みとともに、夏期一時金闘争・人勧闘争の強化を!

2.パートを含む賃金の底上げと最賃のたたかいを重視し、団体署名をひろげよう!

3.「4.6通達」を武器に、「不払い・サービス残業根絶」を徹底しよう!

4.「はたらくルール確立」めざす“労働者過半数署名”へ、職場・地域で本格的なとりくみを始めよう!

5.リストラ「合理化」反対、職場の権利擁護のたたかい

6.地労委民主化闘争:12月任命の「第36期労働者委員」の公正任命をめざすたたかい

7.その他

8.参議院議員選挙について


T.2001年国民春闘の到達点について

パートを含む賃金の底上げ、「はたらくルール」確立が「流れ」に

1.労働者・国民の状態悪化と全労連・春闘共闘の方針

 (1)2001年春闘は、高失業率と若者の就職難、2年続きの減収で8年前の水準にまで落ち込んだ年間収入、過労死・過労自殺の続発、2年連続3万人を超えた自殺者、未権利状態のパート・臨時の増大など、国民の状態悪化がいっそうすすむなかでたたかわれました。そごうや千代田生命の経営破綻など不況型倒産も最悪の水準に達し、大企業のリストラ=企業再編と人減らしが労働者の雇用不安・生活不安をあおるのに加えて、森内閣が労働者・国民泣かせの悪政を続け、将来不安も募るなかでのたたかいでした。

 ところが財界・大企業(主要企業427社)は、不況下でも「賃下げ・リストラ効果」によって100兆円を超える内部留保を溜め込み、3月決算ではバブル期並みの増収が確実視される一方で、「国際競争力強化」のためにはこれ以上の賃上げは困難とし、9年連続のベアゼロ方針、総額人件費抑制やリストラ「合理化」の徹底を強調しました(1月「労問研報告」)。これでは労働者・国民のいっそうの生活悪化は避けられず、消費が冷え込み不況がさらに長びく「景気の悪循環」が必至です。

 

 (2)これに対し全労連・春闘共闘は、「不況打開の展望は、労働者・国民の家計を暖めてこそ開ける」と強調、「@パート・不安定雇用労働者の低賃金をただし、すべての労働者の賃金底上げをはかる、A世界に例を見ない不払い・サービス残業という異常な実態をただす、B大企業の横暴なリストラに歯止めをかけ、解雇規制法の制定を求める」の3点をかかげ、世論をひろく結集して政府・財界に迫っていく国民春闘を呼びかけました。

 そして重点課題として、@パート賃金の引き上げや最賃闘争の重視=誰でもどこでも月額15,000円、時間給100円の賃金底上げを、A「働くルール」確立へ、3年間で労働者の過半数の署名を集めよう、B社会保障拡充、「消費税を3%に戻せ」など国民要求実現、森自公保内閣の即時退陣、などをかかげて国民春闘の前進へ奮闘しました。

春闘をたたかう節目の行動としては、「2.21地域・産別総行動、列島騒然全国統一行動」、「3.2官民共同霞ヶ関包囲中央行動」、「賃上げ闘争山場の3.15、ならびに4.18全国統一行動」を提起しました。

 

2.本格化した「底上げ・最賃闘争」と「目に見え音に聞こえる」行動の展開

 (1)愛労連は、財界の春闘解体攻撃と不況下で低迷する賃金闘争の再構築をめざし、秋闘段階から「要求アンケート」を重視し、「賃金闘争の前進をめざす学習討論集会」(10/29)、愛知春闘共闘発足総会(11/22)、春闘一泊討論集会(12/9 〜10)などでの討議と意思統一も大切にしましたが、これは単産も同様でした。とくに愛知国公の場合、大企業の過酷なリストラ「合理化」と中小の経営困難のもとですすむ民間の賃下げ・人減らしが公務にも及び、8月の人事院勧告も2年続きで「マイナス勧告」となるなかで、「これをどう打開するか」の真剣な議論がすすみました。そして「賃金・労働条件の改善は当局交渉・職場闘争だけでは限界」「全労連のいう“すべての労働者に賃上げ”を具体化するため、最賃闘争に積極的にとり組もう」の意思統一が図られました。全国一般やきずなの活動のつみ上げとともに、愛労連の最賃闘争を支える貴重な学習・討議になったといえます。

 こうして愛労連は1月の臨時大会で、「@すべての労働者に賃上げを、誰でもどこでも月15,000円、時給100円の賃上げを、A企業の身勝手なリストラ反対・はたらくルール確立を、B消費税減税、社会保障の改悪反対、税金の使い方を改めよ」の3大要求を確認し、森内閣打倒・名古屋市長選勝利など政治の民主的転換とも結合してたたかう方針を決定しました。そして、単産の要求とともに「パートを含む賃金の底上げと最賃闘争」「不払い・サービス残業根絶」を重点に要求闘争をすすめること、近づく名古屋市長選挙もにらみ、「万博・新空港、徳山ダムに市民の税金を使うことの是非を問う」直接請求署名も併行して成功させることを確認しました。

 

 (2)愛労連としての主な行動は、年明け早々の「市民投票条例」制定要求署名のほか、2月いっぱいの「最賃生活体験」や各単産1職場を目標とする「不払い残業実態調査」、連合・JCの労使交渉を「激励」するトヨタ総行動(2/12、工場門前宣伝)〜第18回トヨタシンポ(2/25)、全労連提唱後4回目となる「列島騒然2.21総行動」への地域からの一斉行動など前段のとりくみを経て、「2月中の要求提出〜3.14回答指定日、翌15日にストライキを含む全国統一行動」の日程でとりくみました。

 全国から1万人が参加して霞ヶ関包囲・省庁要請を展開した「3.2中央行動」は単産ごとのとりくみとしました。また、4.18統一行動から第72回メーデー、そして5月闘争へとつづく後段では、残された未解決組合の回答引き出し・上積み交渉と併行し、最賃闘争や不払い残業根絶など重視してとりくみました。

うち、「2.21総行動」は、早朝を中心とする218駅頭・工場門前宣伝に1,100名、夜の集会・学習会(9カ所)に800名が参加したのをはじめ、繁華街宣伝や昼デモ、自治体や労基署などへの要請、労組訪問などへの参加も500名に迫り、県段階での申し入れ(県経営者協会、愛知労働局、県産業労働部、JR東海、JR東海バス)や「KSD・機密費疑惑糾弾、森首相即時退陣」を掲げての自民党県連デモとあわせて2,500名が行動、全国の仲間に呼応して「春闘本格化」をアピールしました。

 また、賃金闘争最大の山場となった「3.15統一行動日」には、前日、トヨタや電力など連合・JC(金属労協)大手単産に示された超定額回答やベアゼロ攻撃への抗議も込めて、通信労組、医労連3病院、建交労・鉄道本部、日本IBMがストライキで立ち上がったのをはじめ、官民の多くの職場で時間内外の集会が開かれ、夜には栄・久屋広場に1,200名が結集して「春闘・名古屋市長選挙勝利、3.15愛知総決起集会」を成功させました。

 

3.賃上げ回答の全体結果と、底上げ・最賃、不払い残業根絶への重要な前進

 (1)こうして積み上げた2001年春闘は、これを賃上げに限るとたいへんきびしい結果でした。全労連データによると、春闘共闘登録652組合の加重平均では7,609円、2.26%(前年比+494円、±0%)、連合は5,980円、1.94%(前年比−17円、−0.02%)となっています。

 春闘前段では、企業収益の回復を背景にIMF・JC(金属労協。企業収益は24.5%増)などは前年を上回ると見られていましたが、株価の急落、アメリカ経済の混迷などを口実に経営側のまきかえしが強まり、結局は「4年連続史上最低」に抑えこまれたわけで、「業績絶好調」のトヨタでもベア600円(定昇込7,600円)、電力、NTT、松坂屋、名鉄百貨店など先行指標となる有力企業を含めて大企業労組の3割がベアゼロ回答を容認する(NTTは要求自体を見送った)など、春闘「解体」がささやれています。産業・企業格差がひろがって春闘相場をつくりにくい上に、成果・業績主義賃金の拡大も労使交渉を形骸化し、春闘の位置を低めています。このなかで「組合は何のためにあるのだ」など労働者の不満も高まっています。

 

 (2)一方、中小・零細企業を多くかかえる全労連・春闘共闘では、深刻な経営危機のもとで少なくない組合にベアゼロや定期昇給カットなどの回答が示されるなか、多くの組合が5月の連休をまたいで粘りづよくたたかい、一部には労働条件と職場経営を守る労使の共同行動にも踏み出すなど奮闘しました。春闘全体の否定的影響をのりこえるに至らず、全体としては不十分な結果ですが、その頑張りは周りの労働者を励まし、明日につながる力になっています。

 なお、愛知春闘共闘の登録247労組で見ると、5月18日時点で回答引出しは147組合と全体の約6割、妥結・終結は90組合(36%)で、「ゼロ回答」も14組合含まれており、新聞・出版・広告の8〜9,000円台から建交労・全港湾の2,000円台まで業種間落差が大きいのが特徴です。全体の単純平均は4,090円(昨年4,078円)となっています。

 以下、参考までに県産業労働部の集計と中央のデータを示します。

 

<県産業労働部しらべ> 5月15日現在、県内310社(抽出)

単純平均 4,730円、1.8%(=昨年より額はダウン、率は同率)

※業種間格差が大きく運輸・通信では2,188円、金融・保険では3,485円などとなっているのが特徴。

<中央春闘共闘> 5/18集計、回答562組合(58%)、妥結299組合(31%)

単純平均 6,652円、2.19% (昨年=6,712円、2.24%)

加重平均 7,609円、2.26% (昨年=7,115円、2.26%)

<連合第1回妥結集計> 4/18現在、672組合

単純平均 5,148円、1.82% (昨年=5,172円、1.84%)

加重平均 6,016円、1.95% (昨年=6,011円、1.96%)

日経連しらべ> 4月25日現在、加重平均。

大手181社: 6,406円、1.94%(昨年=6,404円、1.97%)

中小186社: 4,643円、1.77%(昨年=4,666円、1.79%)

 

 (3)全体の賃上げ統計は「4年連続、史上最低」ですが、今春闘は運動上で重要な前進があり、「すべての労働者を視野に入れた春闘前進」の方向を切りひらきました。

 一つは、サービス残業根絶、解雇規制法制定要求とともに、「賃金の底上げ・パート賃金の改善」がナショナルセンターのちがいをこえた共通の要求課題となり、マスコミもしばしば取り上げる社会的な焦点となったこと、これと結合して「はたらくルール」の確立、最低賃金闘争前進への新たな展望を開いたことです。

 愛労連も底上げ・最賃とサービス残業根絶、解雇規制法に重点を絞って春闘宣伝を展開、トヨタ総行動でも「2.21総行動」でも共感をひろげる宣伝・申し入れが出来ました。また「底上げ・最賃」をめぐっては昨年の4倍強、52名の組合員が最賃生活体験(2月)にチャレンジ、現行最賃の問題点をえぐって宣伝や労働局交渉に生かしました。このことで県の最賃審議会にプレッシャーをかけつつ、審議会委員に女性を含む3名の推薦もおこないました。新聞折り込みチラシから事業所の時給を調べ、「時給100円のアップ」をアピールする活動も東三河や千種・名東労連などでとりくみ、法違反を是正させつつ、時給100円アップの世論づくりに努めました。全国一律最賃制を求める署名数が少ないなど問題はありますが、社会的な影響力をひろげるたたかいとして、さらに重視する必要があります。

 二つは、「サービス残業根絶、はたらくルール確立」へ、大きな流れをつくったことです。愛知の場合、名古屋市長選挙と重なって「はたらくルール」署名は遅れましたが、秋〜春闘での継続的な自治体・省庁要請や、全労連・日本共産党などの全国的なキャンペーンや交渉などが実って、4月には厚生労働省が「労働時間の正確な把握、サービス残業根絶」へ向けた「4.6通達」を出しました。これは、現状を「労働時間の把握が曖昧となり、その結果、割増賃金の未払いや過重な長時間労働の問題が生じている」と把握し、「使用者は、基準を遵守すべき」として労働時間の厳格な把握と管理を求めたものです。今後の職場闘争や労使協定に生かすとともに、これを追い風に署名も思い切ってひろげ、「ルール違反は許さない」「人間らしく働けるルールの確立を」の風を大きく吹かすことが求められます。

 

4.リストラ「合理化」反対、争議支援のたたかい

 (1)春闘・秋闘のなかで最近とくに大きな比重を占めるのがリストラ「合理化」との闘いであり、争議支援です。愛労連は99年夏に全労連に学んで「リストラ対策委員会」を発足させ、独自に「大企業ネットワーク」も立ち上げて情報交換も深めてきましたが、産業再生法や会社分割法など政府の後押しで企業の攻撃がいっそうひろがるなかでこの一年も力を入れてとりくみ、秋闘につづき「2.21総行動」など節々で当該労働者を包んで宣伝・交渉にとりくむなど、「横暴勝手なリストラ許すな!」の声をひろげました。

 NTTの大「合理化」、住軽金9争議、丸八商運や板山運送の組合員排除、東海銀行の統合・合併、全港湾ダイコー分会・千葉さん解雇事件、中日本観光の廃業、ジェイアール東海バスの路線廃止、ニチメンの女子社員差別、三菱自動車大江工場閉鎖問題・・・など一つ一つの事例が規模・内容ともさまざまで、とりくみにも限界があるのが実情ですが、「連合」と比べて愛労連や関係単産・地域労連への期待は大きく、常設労働相談や愛知争議団、健康センターの活動とともに企業の勝手放題を許さない「護民官」的役割も果たしています。参院労働委員会の八田ひろ子議員との連携も貴重で、住軽金での労災事故続発問題などでの国会質問、工場視察・申し入れは職場・地域を大きく激励しました。

 

 (2)企業の横暴を許さないこの一連のとりくみのなかで、全国一般ヒット通商支部など、労働相談を契機に組合を作ってたたかう決意を固めた青年が愛労連に加入し、組合員を100名近くにした事例も生まれました。港の労働者・民主勢力が力を結集してとりくんでいる住軽金9争議支援では、団体生命保険裁判で2月・3月にあいついで勝利判決をかちとるなど、全国の仲間を励ます成果もあげており、たたかいは前進しています。

 JMIU、全国一般、きずな、建交労、銀産労、自治労連など多くの単産が、解雇や労働条件の一方的切り下げとたたかう労働者を包んで闘っているだけでなく、名中センターや港地区労、東三河労連、尾中労連など「地域の労働者は地域で守る」労連も増えており、一つ一つの争議を粘りづよく支援して信頼を深め、組織も増やしているのは重要な財産です。愛労連は結成以来、これらリストラ争議の先駆けともいえる「国鉄1,047名の解雇」撤回など多くの争議を支援してきましたが、分割民営化から15年、不屈に闘う争議団をはじめ、当事者の頑張りは逆に支援者を励ましています。一日も早い解決へ引きつづき奮闘が必要です。

 

 (3)なお、リストラは民間だけでなく「行革」の形で早くから官公労にも攻撃が続いていますが、最近では国家公務員の25%削減や独立行政法人化攻撃、病院・学校給食の民間委託化・パート化などに典型的な自治体リストラ、財政危機のもとでの愛知県や蒲郡市の賃金カット提案など、攻撃も激しさを増しています。これに対し私たちは国公、自治労連、医労連、愛高教など関係単産を中心に集中的にとりくみ、節々では上部団体の垣根を超えた共同、民間の仲間や住民との共同もひろげて当局を包囲、攻撃を撤回させたり歯止めをかける成果を上げています。このたたかいのなかで、「職員への攻撃は住民のくらしへの攻撃と表裏一体」という認識も深まり、「税金の使い道を改めよ」の声もひろげています。この「共同」に確信を持ち、外に打って出て闘いをひろげることが重要です。

 

5.国民要求実現、政治の転換をめざして

 (1) 悪政・失政を重ねた森内閣の支持率がマスコミ調査で10%台に落ちこむなか、この春は「森内閣退陣」を求める「世直し春闘」としても闘われましたが、KSD汚職、機密費疑惑、米原潜「えひめ丸」衝突事件での森首相の対応など、政治の腐敗・堕落・無責任があいついで表面化するなかで自民党政治への不信が極限に達し、世論調査でも「嫌いな政党」のトップに出る状況が生まれました。

 このなかで愛労連は、「2.12トヨタ総行動」「2.21総行動」はじめ春闘の節目の行動で一貫して「世直し」を訴えたほか、民主団体と共同で「緊急県民集会」(2月6日、3月6日など)も開催しました。新聞が私たちのデモ行進を写真付きで紹介するなど、注目されるとりくみでした。

 ※ 他に、今春闘は「税金の使い道を改めよ」の要求を中心に、名古屋市政を再び市民の手に取り戻すため「名古屋市長選挙勝利」の課題と一体的にとり組みました。さまざまな奮闘と教訓がありますが、この総括は定期大会でおこなうこととします。

 

 (2)その後、森内閣はマスコミの世論調査で支持率が8%台に落ちるなかで「死に体」となって退陣、自民党総裁選挙で圧勝した小泉氏が自公保連立与党を引き継ぎ、4月末に小泉新内閣がスタートしました。

 その小泉政権は、旧経世会主流の橋本元首相を破って総理総裁の座につき、田中真紀子氏を外相に起用するなどして圧倒的な支持率を保っていますが、政治姿勢と政策の基本は森内閣と変わっていません。経済、財政、行政、社会、政治など各分野での「聖域なき構造改革」を表明、20万社以上の倒産・100万人以上の新たな失業が出るという「不良債権最終処理」を急ぐというほか、民活・規制緩和を軸とした「行財政改革」の断行、社会保障の国民負担増、外交・安全保障では日米安保体制の有効な機能と有事法制の検討、首相公選制を突破口とする憲法改悪の検討など、森内閣以上に危険な本質が明らかになっています。森内閣が着手した反動的な教育「改革」や、国家権力にひたすら忠実な職員を育てる公務員制度大改悪なども、そのまますすめようとしています。

 こんな政治がやられたら、私たちの未来はたいへんです。マスコミがつくる小泉の「虚像」と「実像」の落差がはっきりすればその人気は失速し、自民党・公明党中心の国政を大きく転換することも可能です。組合員と県民にひろく訴え、7月参院選挙では私たちの要求を前進させる勢力を大きく伸ばして政治の転換を図ることが重要です。

 

6.とりくみの到達点春闘再構築の方向が見え、展望につながる「共同」がひろがった

 (1)結果として今春闘は、仲間の奮闘にもかかわらず、要求の多くは大企業の横暴と国・県の悪政に実現を阻まれていますし、リストラも止まず、賃上げもぼ昨年並みにとどまっています。 しかし、追いつめられているのは政府・財界です。財界・大企業の横暴なリストラ・人減らしや「ルールなき資本主義」への不満・批判は、連合傘下の大企業労働者を含めて圧倒的な労働者にひろがりました。このなかで、昨年の日産愛知機械港工場閉鎖問題でも、また今もちあがっている三菱自動車大江工場閉鎖問題でも、愛労連の活動や「6.17シンポ」が話題になり、労働者が「うちの組合も連携してとりくんでほしい」と申し入れ、執行部も検討する事態に発展しました。港でもトヨタの支配する西三河でも、過労死を心配する家族の相談を職場活動家と連携する地区労や地域労連が取り上げ、労働基準監督署が指導に入る成果をあげています。

 また、名古屋南部あおぞら裁判の原告・患者、補助金カットに苦しむ障害者団体など、多くの県民が愛労連に期待し、大企業や愛知県などに向けて共同の運動を望んでいます。これらは、労働相談110番への相次ぐ電話や新たな組合結成などとともに、愛労連と仲間のたたかいが多くの労働者・県民からも期待をもって見られている証左です。

 

 (2)結成11年。愛労連はこうした地道なとりくみを積み上げて信頼を築き、共同をひろげて明日の展望につながる闘いを組んできました。そして、「大企業は社会的責任を果たせ」「国や県は税金の使い方を改めよ」「万博・空港やめよ」の世論を太い流れとし、愛労連の役割や、政治の転換を望む国民・県民のひろがりに確信をもてるようになりました。まさに「愛労連の出番」であり、役割はますます重要になっていると自負できます。

 その意味から、とくに今春闘の到達点は重要です。2001年春闘では「パート賃金の改善・賃金の底上げ、サービス残業根絶・雇用拡大、解雇規制を」の3要求がすべての労働団体に共通の要求となり、マスコミも取り上げ、厚生労働省も通達を出す成果がありましたが、昨春闘以来の新たな要求・方針討議を経て全労連が提唱した「すべての労働者に影響を与える春闘」の方向は見えたと言え、「対話・共同」や総行動の重要性とともに、「春闘再構築」への新たな可能性を切り開いたといえます。

 

7.検討すべき課題

 (1)「対話・共同」「総行動」で、みんなが共感・参加できる「国民春闘」を

 政府や財界・大企業のあらたな攻撃のなかで、民間にも公務にも、また中小零細企業や地域住民にも耐え難い犠牲が強いられています。私たちは3要求を軸に「すべての労働者に影響を与える春闘」の方向を確立しましたが、あわせて中小零細業者や地域住民も共感し参加できる文字どおりの「国民春闘」「世直し春闘」をつくる必要があります。

 

 (2)自らの要求で地域に出ること、地域春闘と地域労連の強化を

 多くの労働者・住民が共感し参加できる「国民春闘」をつくるためには、できるだけ多くの組合員が自らの要求で地域に出ること、地域労連の仲間の共感を得、地域労連が中心となってとりくむ「地域春闘」をつくることが必要で、単産・地域の連携強化が重要です。

 

 (3)パート・不安定労働者を含め、「10万人愛労連」の建設を

 念願の「10万人愛労連」へ向けて、秋に続いて春にも拡大月間を設定、パートなど不安定雇用労働者の拡大も意識的に追求しました。月間中に1145名の新組合員を迎えました。

 この到達点は、全労連のなかではかなり先進的とされますが、まだまだです。@職場の多数派形成、A中立・友好労組の愛労連加入、B(パートも含め)未組織の組織化へ、さらに方針を強化し、組織を大きくして愛労連の影響力を確立することが重要です。


U.当面する夏期闘争について

春闘後半戦=最賃や夏期一時金・8月人勧闘争と結合して

要求前進をめざし、「悪政許すな!政治の転換を」を掲げて参院選も頑張ろう

1.春闘回答の引き出し・上積みとともに、夏期一時金闘争・人勧闘争の強化を!

 (1)未解決組合=回答引き出し・上積みへ粘りづよく交渉します 

 春闘の回答引き出しはまだ6割、今日なお100組合が未回答で、妥結は37%です。金融・保険や私学の仲間、大学生協など、「5月末からが本番」という組合も、さらには人勧が出てから本格交渉になる公務関連職場も残っています。

 したがって今後は、夏期一時金闘争や公務員の8月人事院勧告に向けた要求行動を強めると同時に、未解決組合を包み、「賃下げ・合理化提案は許さない」「ベアゼロでは妥結しない」など単産ごとの“歯止め要求”も決めて、要求前進へ粘りづよく頑張ることが重要です。愛労連としては、すべての単産・単組が「少なくとも昨年実績の上積み」を目標に奮闘するよう、意思統一してとりくみます。

 

 (2)夏期一時金闘争を強化します

 春闘期には「ベアを抑制し、業績還元は一時金で」と主張していた日経連ですが、春闘期における連合・JCなどへの産別回答は、68万4千円(昨年比でたった4,900円増、0.7%の微増)にとどまっています。問題は、一時金抑制が今春闘だけでなく、日経連の集計でも97年から低下傾向が続いており、99年夏には前年マイナス4.78%(9万5千円)と激減、今年もベア停滞とあいまって、前年マイナス1.5%と予測されていることです。

 一時金は生活を支える重要な収入。どの組合も少なくとも昨年以上の目標で頑張ります。

 愛労連は、『夏期一時金情報』を発行します。各単産は、要求・回答など必ず愛労連に集中します。

 

 (3)8月人事院勧告へ向けたたたかいを強化します

 公務員部隊は、中央の公務労組連絡会や各単産の指示にもとづき、「8月の人事院勧告」へ向けたたたかいを強化します。

 

2.パートを含む賃金の底上げと最賃のたたかいを重視し、団体署名をひろげよう!

 (1)職場のパートの労働条件改善に引き続きとりくみます。

 パート・臨時など増大する不安定雇用労働者の劣悪な労働条件の改善は、労働者全体の賃上げや労働条件改善に直結します。職場のパートの労働条件改善を調べ、改善に引きつづき力を尽くします。

 

 (2)最低賃金制度の改善をかかげ、団体署名をすすめます

 愛労連第24回臨時大会決定にもとづき、中央最賃審議会による「目安」額の提示(7月下旬)〜8月上旬の地方最賃審議会答申へ向けて、最賃の大幅引き上げを図るため、6月末までをメドに最賃要求(団体)署名を思い切ってひろげます。  

 

3.「4.6通達」を武器に、「不払い・サービス残業根絶」を徹底しよう!

 (1)「4.6通達」の学習・普及をすすめます

 裁量労働やフレックス制のひろがりのなかで蔓延する「不払い・サービス残業」の一掃へ向けて、厚生労働省が4月6日に出した「通達」は、全国のたたかいで出させたもので、重要な武器になります。4月27日には総務省も都道府県や指定都市に「4.6通達」にもとづく労働時間の適正把握を指示しており、官民を問わず活用できます。

 財界よりのシンクタンク・社会生産性本部が、「サービス残業をなくせば、今より90万人も多くの雇用が必要になる」という試算をしているのは有名です。「不払い・サービス残業根絶」は、「雇用の拡大・失業者救済」へ向けた連帯行動にもなります。単産や職場で、まず学習し、宣伝します。

 

 (2)「4.6通達」を武器に、「サービス残業根絶」へむけた労使交渉をおこないます

 @通達遵守の労使確認、A始業・終業時間の管理者記録、B残業代不支給の点検と支給要求など、企業や当局へ直ちに申し入れ、「不払い・サービス残業」根絶へ、第1歩を踏み出します。

 

 (3)すべての単産で、改めて「不払い・サービス残業調査」にとりくみます

 「4.6通達」を機に、すべての事業所を対象に「不払い・サービス残業」についての簡単な調査(不払い残業の有無やその原因などを聞く調査)にとりくみます(6月19日、発送)。

 これは、7月定期大会(8日)をはさんで7月末までに集中的にとりくみ、職場の交渉や「はたらくルール(過半数をめざす)署名」の起爆剤にします。

 なお、3年間の署名期間を生かし、愛労連として、単産・単組に呼びかけ、職場の健康診断や労働安全衛生、各種の休暇、昇給や配転のルール、パート・臨時労働者や女性の権利…など、職場闘争に生きる権利点検をすすめるよう、検討します。

 当面、「不払い・サービス残業」調査はその第1弾と位置づけます。

 

4.「はたらくルール確立」めざす“労働者過半数署名”へ、職場・地域で本格的なとりくみを始めよう!

 「4.6通達」活用に加えて重要なのは、「パート労働者などの賃金の底上げ・均等待遇の実現、現行最賃の改善」「企業の一方的解雇を規制する法律制定」「不払い・サービス残業根絶、労働時間短縮」など、“はたらくルール”確立署名の推進です。

 全労連や中央春闘共闘は、「連合」とも要求が一致する(注:連合は「雇用・生活危機突破、ワークルール確立」署名を開始)この署名について、「3年計画で労働者の過半数から署名をあつめよう」と訴えています。ILO国際労働基準やEU並みの「労働者保護法制」をわが国に確立するための壮大なたたかいのノロシであり、「人間らしく生き働く」職場をめざす私たちの決意をアピールする行動です。

 「労働者の過半数」(愛知では160万筆)という目標達成は容易ではなく、見方によっては天文学的な目標ともいえますが、正面から議論し、愛労連としての意思統一をはかることが重要です。当面、以下のようにとりくみます。

 

 (1)すべての単産・地域は、署名の推進責任者を決め、単産・地域労連としての目標と行動計画を愛労連に報告します(7月8日、定期大会までに)

 すべての単産・地域が改めてこの署名の意義を討議し、署名推進の責任者を決め、目標と行動計画を決めて愛労連へ集中します。

 なお、単産・地域労連の目標は、「すべての労働者の過半数」をどう達成するかを念頭において討議します(下の(3)を参照)。

 

 (2)当面、7月定期大会までにすべての組合がまず組織内(家族も含めて)から署名を開始し、11月末までに「組織人員×2」筆の目標を達成するよう意思統一してとりくみます

 愛労連としても「組織人員×2」11万名を11月末までの達成目標とし、単産・地域労連を中心に、組合員と回りの同僚、家族、「共同」の対象となるような身近な労働者・住民などに働きかけて、必ず達成します。

 

 (3)愛労連として、3年で県下の労働者過半数達成をめざし、具体的なすすめ方は大会と9月評議員会(9月8日・土)で決定します

 @署名促進のために組織内に「推進委員会」を設置し、激励と点検を強めます。委員会の構成は幹事会で討議して決定します。

 A特別な予算をつけて、創意工夫と執念を持ってとりくみます。予算は幹事会で検討し、大会・評議員会にはかります。

 B「推進委員会」とは別に、「労働法制連絡会」を再開・強化し、宣伝と学習、申し入れなど、幅広いとりくみを工夫します。

 C労組訪問や宣伝などとあわせて「外へ打って出る」行動は、「総対話・共同」と結合して「秋闘の目玉」「2002年春闘の目玉」にする方向で大会で提起し、議案審議の段階から組織内の討議と意思統一に努めます。

 D「秋の総行動」はあれもこれもでなく、はたらくルールを最重点に、大々的な労組訪問を実施する方向で検討します

 例:10月5日・金曜日に年休を取っての一日行動とし、県内3,000労組の過半数に直接訪問して要請、懇談する /この行動は地域を軸とするが、単産は思い切った年休部隊を組織して地域に入り、一日で目標をやり遂げるよう、とりくむ。

 ※恒例の「社保協中心の自治体キャラバン」=10/16〜19の予定。/全労連提唱の「秋の行動提起」=未定。/しかし、愛知は最重点を「10.5労組訪問」とし、他は、出来る範囲で全国連帯の行動(例えば「早朝ビラ」だけ)を組む形を検討します。

 Eそのためにも、奈良に学んで「労基法周知・徹底月間」(10月)の設定を検討し、愛労連から行政や企業・経営者団体、民主団体等にも働きかけて、調査、宣伝、学習活動にとりくむよう要請する行動なども検討します。

 ※この「月間」には、組合員と周りの住民・労働者の意識を高めるため、パート、低賃金、ただ働き残業、過労死の危険など、調査・宣伝活動、ポスターやステッカー、ビラ、「手記」の作成などによるキャンペーンなども検討します。

 ※なお、これは3年間(3回)のチャンスを生かし、「不払い・サービス」実態調査などと関連させてとりくむようにします(第1回=サービス残業根絶月間、/第2回以降は、健康診断周知徹底月間、パートの権利周知月間など、その都度、重点課題を設定してとりくむ)。

 

5.リストラ「合理化」反対、職場の権利擁護のたたかい

 三菱自動車やNTTの人減らし反対のとりくみ、国鉄闘争や住友軽金属9争議支援をはじめとする争議支援、リストラ・過労死を許さないたたかいなどは、「はたらくルール」確立のたたかいと一体のものです。愛労連・地域労連として、こうした身近な問題と「はたらくルール」確立を意識的に結合し、連鎖キャンペーンにもつなげて相乗効果をあげるようにとりくみます。

 また、企業の勝手なリストラ「合理化」反対、争議支援の当面のとりくみは、次の企画を重視し、単産・地域労連からの積極的な参加で成功させます。

 

(1)住軽金9争議支援「はたらくルールと団体生保」シンポジウム

6月30日(土)13:00〜  全港湾会館3階

(2)三菱自動車のリストラと大江工場閉鎖を考えるシンポジウム

6月17日(日)13:30〜  名古屋市教育館講堂

 

6.地労委民主化闘争:12月任命の「第36期労働者委員」の公正任命をめざすたたかい

 (1)中央労働委員会の委員が「当確」とされていた全労連・熊谷副議長が外されましたが、長野・田中知事が「連合独占の見直し」をいうなど、「追い風」も出ています。

 愛労連は1月臨時大会直後に、同じ会場で開かれた民主化会議の「署名スタート集会」に参加し、「組織人員の2倍」を目標とする署名のとりくみを意思統一しましたが、本格的なとりくみはこれからです。改めてとりくみを開始し、目標数を達成して必ず公正任命をかちとります。

 

 (2)単産・地域労連は、来週(6月13日)改めて単産・地域に送付される署名用紙と「要請通達」を受け、次の日程で署名にとりくみます。

 第1次集約=7月8日、愛労連第25回定期大会、

 第2次集約=8月8日、お盆前

 第3次集約=9月中旬、委員推薦の公示の頃、

 最終集約 =10月中旬。

 ※なお、民主化会議は、労働部や知事などとの折衝を開始します。

 ※9月に推薦する候補者については、9月8日の評議員会で確認します。

 

 (3)県庁前での早朝宣伝(=「スミケイ争議早期解決」要求と結合して)を再開します。

 @6月21日(木)10時〜 親交労組地労委審問 →この日の朝、8時〜宣伝

 A7月19日(木)10時〜 同 上。 →同 上。

 ※各単産は、この宣伝行動に、複数以上で参加します。

 

7.その他

 (1)原水爆禁止・核兵器廃絶をめざし、次のとりくみに積極的に参加し、成功させます。

 @グローバル・ピース・フェスティバル2001(8月4日〜5日)、

 A原水爆禁止世界大会(長崎大会。8月7〜9日)、

 

 (2)愛労連第11回地域労連研究集会:6月23〜24日(土日、犬山・迎帆楼)を成功させます。

 

 (3)愛知社保協の総会・記念講演会:6月30日(土、13:30〜 東別院NBNホール)を成功させます。

 

8.参議院議員選挙について

 7月12日告示・29日投票でたたかわれる参議院選挙は、私たちにとってきわめて重要な選挙戦です。当面の最重要課題と位置づけ、すべての単産・地域が全力でとりくむよう討議・意思統一し、第2号議案「愛労連 参院選挙闘争方針」にしたがって奮闘します。

 

以上


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