先の東海集中豪雨による被災は、愛知の防災対策の遅れをまざまざと示しました。住民のいのちと安全を守ることは、国や自治体の最大の仕事です。派手なイベントやムダな大型開発中心の公共事業を見直し、生活密着型の公共事業および安心して生活できる防災事業にいまこそ主軸を移し自治体本来の姿にもどすべきではないでしょうか。
また、深刻な雇用・失業状況のもとで、企業の身勝手なリストラ・解雇から働く者を守る法規制、ただ働き・サービス残業の根絶をはじめ労働時間の短縮による雇用の創出、失業者救済など特別に対策を強めることが求められています。
ここ数年、多くの自治体が「自治体リストラ、行革」の名による職員(定数)削減や財政難を理由とする賃金・労働条件の切り下げが目だっていますが、こうした働く者の「くらしと雇用を脅かし、住民サービスを引き下げる」方向は自治体としてとるべきでないと考えます。
以上から私たちは、次の事項を要請します。貴職には誠意をもって対応し、回答を文書でいただくよう、要請します。
記
1.東海豪雨にかかわって次の要請に応え実施すること。
(1)被災者の生活再建に万全の対策を講じること。
@ 全壊・半壊世帯や世帯収入によって、対象世帯が限定される生活再建の諸制度にかかる規制を緩和するよう国に働きかけるとともに、被害の実態にそくした弾力的かつ全面的運用がはかれるよう、県として単独の施策を講じること。生活福祉資金・災害援護資金の災害時貸し付け利息3%を無利子とすること。また、政府系および民間の金融機関からの融資についても県として利子補給をおこなうなど、被災者の負担軽減につとめること。
A 被災弱者(高齢者、障害者など)への個人被害の救済と生活再建への特別の支援策を行うこと。また、被災者の介護保険料・利用料については、徴収を免除するよう市町村を指導し、自治体を援助すること。国保料(税)、水道料金などに対する減免制度を確立し、県としての援助制度をつくること。
B 災害救助法の適用を受けられない自治体では、同様の水害被害を受けていても被災者が救済されないなどの困難が生じている。災害救助法適用地域以外の被災者にも等しく救援の手が届くように県として配慮すること。
C 生活再建までの住宅の供給を、民間の住宅を借り上げることを含めてすすめることや被災者の実態に応じて使用期間を延長すること。
D 被災者については、県立高校授業料を半年間免除し、来年度入学者の入学金も免除すること。同様に私立高校や私立幼稚園についても特別に授業料を補助すること。また、被災者にかかる税の減免制度は、前納世帯にも適用すること。
E 住宅や工場など個々の被害・再建状態について自治体などと協力して、事態を早急に把握し、災害によって収入の道を絶たれている被災者へは当面の生活費を支給すること。
また、自家用車等の被害についても、実態を把握し被災者支援について検討すること。
(2)被災中小業者の営業再建の抜本的対策を講じること。
@ 災害復旧にともなう中小業者の融資制度について、償還の据え置き期間を少なくとも2年以上とし、貸し付け条件の緩和をはかること。災害復旧貸し付けについては、無保証人、無利子とし返済期限を長期のものに延長すること。
A 被災中小業者の実情に則して、既貸し付け金の返済猶予などの償還条件を緩和すること。
B 被災中小業者の実態調査を直ちにおこなって、損害にみあった税の減免など営業再建のための特別助成をおこなうこと。
(3)災害の再発防止にかかる必要な公共事業は優先して実施すること。
@ 被害状況と防災上の問題点、危険カ所などすべての情報を公開し、今回の災害から深く教訓をつかみ、緊急災害時の住民への連絡、避難ルートと避難所、水や食料の補給、通信や交通手段、自治体職員の対応、ハザードマップの作成など再発防止へ抜本的な対策をたてること。
A 破堤した県管理河川の原因を調査・研究し公表するとともに、その改修・整備事業については、計画を前倒しして早急に完了すること。また、時間雨量など計画を抜本的にみなおして新たに整備すること。
B 河川の復旧事業にあたっては、早期復旧はもちろん護岸の改良・工法、優先順位等について地元住民・自治体の意見を良く聞き反映させること。また、河川改修費にあてる財源として認められている法人税の超過課税は、法律で定める上限率まであげること。
C 効率優先の「行革」によって、行政サービスに必要な清掃、水道、下水道などライフラインにかかわる仕事が民間委託や職員削減のために、災害防止・復旧に重大な支障がでた教訓を生かし、住民生活に必要なところの「委託化・人員削減」などをやめ、拡充のために予算を優先して使うようにすること。
(4)災害復旧にかかる市町村に対する財政支援の充実をはかること。とくに国からの支援を取り付けるよう積極的に働きかけること。
2.財政難のおり県民にとってムリ・ムダな大型公共事業を全面的に見直し、補助金カットをやめ、県民の暮らし・福祉・教育などを優先してすすめること。
(1)保健・医療・福祉予算を拡充すること。
@ 障害者・乳幼児・高齢者などの福祉医療制度の改悪や補助金削減を直ちに中止し、すでに削減したものは復活・拡充すること。乳幼児医療無料制度を6歳未満児までに引き上げること。
A 安心してくらせる年金制度を確立するため、国民年金(基礎年金)への国庫負担割合を、すみやかに2分の1に引き上げ、一般財源による全額国庫負担の最低保障年金制度を早くつくること。年金支給開始年齢は原則60歳とし、賃金スライド制を復活させること。以上を国に対して意見書を提出すること。
(2)介護保険制度・医療など拡充に関わる要請が愛知県社会保障推進協議会から後日、提出されるので誠意をもってその実現に応えること。
(3)「福祉目的税化」など社会保障の財源として消費税を引き上げることや消費税の大増税に反対し、当面食料品を非課税にすること。を国に対して意見書を提出すること。
(4)教育行政の充実と教育施設・環境の整備を早急に行うこと。
@ いじめや学級崩壊、校内暴力、不登校、少年犯罪など子どもと教育をめぐる深刻な現象を一刻も早く解消するため、競争中心の教育を是正するとともに、市民道徳の重視、人間尊重のモラルと正義を確立し、子どもが豊かな発達といきいきと学校へ通うことのできる教育行政をすすめること。
A 教育基本法は、憲法や子どもの権利条約とならんで21世紀に継承すべき宝であり文部省がすすめる教育基本法の改悪など反動的な「教育改革」に反対すること。
また、30人学級の実現、教職員の権利保障と労働条件の確立など教育条件の整備を早急に行うこと。
B 政・官・財の癒着構造、金権・汚職など大人の社会の歪みを正すことに力を注ぎ、映像など文化面で子どもを守るルールを確立すること。そのために自治体、学校・教職員、父母および生徒が一緒になって話し合い・考える場や機会を設定すること。
(5)万博計画は、中止を含む抜本的な見直しに着手すること。
@ 山積みする問題を解決せず、県民の意思を確かめないままの愛知万博計画の閣議決定の撤回、12月の登録申請を延期し、問題解決を早急におこなうこと。
A 青少年公園を含む新しい会場計画で、環境影響評価て続きをやり直すこと。
B 青少年公園で発見されたオオタカの営巣については、「海上の森」同様に2営巣期以上の調査を行い、保護策を確立して、会場利用計画に反映させること。そのために「万博会場関連オオタカ調査検討会」を県民に公開のもとで早急に開催し、保護策を確立すること。
C 交通アクセス、下水道処理問題、財政計画など山積みしている問題を解決する手立てを県民公開のもとで行い、新しい計画で県民の意思を問うこと。
(6)県財政の危機打開へ抜本的な手だてを講じること。
@ 県財政の行きずまりと破綻の原因を明らかにするとともに、不要不急の事業の見直し、大企業にたいする超過課税の引上げ、県債の低利借り換えなど県民本位の財政計画を策定し、財政赤字のツケを県民に押し付けないこと。
A 中部新国際空港建設など、膨大な財政負担と財政赤字が見込まれるイベントや大型開発計画は抜本的に見直すこと。常滑沖のきれいな海と豊かな漁場、幡豆町などの豊かな自然や環境を守り、21世紀に残すこと。
B 愛知県「第3次行革大綱」は県民本位の立場で抜本的に見直すこと。あわせて県民生活を犠牲にする補助金カットや県職員の定数削減および県職員と関係労働者の賃金カットは、準公務職場や福祉関係職場など民間への波及が大きく、ひいては地域経済に重大な影響を及ぼすので3年連続の削減を止めること。
C 愛知県独自の財源としての「新税創設」は、県民の合意を尊重し、情報をいち早く公開し、いやしくも議会を通過すれば良しとするのではなく、県民の意見を十分に聞くなど民主的に取り扱うこと。
3.深刻な雇用失業を打開し、県民のくらしと雇用、中小企業・業者の経営の安定をはかること。
(1)トヨタをはじめとする県内の大企業に、雇用と労働者の生活保障、中小企業・業者と地域経済の発展に社会的責任をはたすよう、知事名で要請すること。
(2)営業譲渡や分社化、持株会社化など企業組織の変更にともなう解雇や労働条件の切り下げから労働者を保護するために、「解雇規制・労働者保護法」の制定について、国に意見書をあげること。
(3)大企業・官公庁を中心に「不払い(サービス)残業の根絶、労働時間の短縮」を県独自で強く要請・指導し、県内の雇用を創出すること。その第1歩として、県庁から一切の不払い(サービス)残業をなくすよう、内外に宣言すること。
(4)大規模プロジェクト偏重の公共事業を改め、県民生活密着・福祉重点型の公共事業に切り替え、地元の中小企業・業者にたいして官公需の発注を大幅に増やすこと。あわせて分離・分割発注を推進すること。
(5)青年・学生の深刻な失業・就職難を緊急に解決するため次のことを行うこと。
@ 卒業生ならびに来春卒業の大学・高校生の就職希望者の全員が就職できるように企業にたいして採用枠を大幅に拡大するように手だてをとること。
A 県下の学卒未就職者ならびに就職活動中の学生について実態調査を行うこと。また募集・採用における女子学生への差別の有無について実態調査を行い、報告書を公開すること。
B いわゆる就職協定の廃止後、企業の採用活動が年々早まり、卒業前年の秋から就職活動を始めなければならない状況を改善し、学生が「学業と両立させながら公平で公正な就職活動に、安心して取り組めるよう」に各企業、事業所に申し入れること。あわせて企業間での募集・採用にあたってのルールづくりを行うこと。
C 学卒未就職者の生活と求職活動を保障するために、生活援助措置をとること。
以上
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