愛知県経営者協会

  会長 冨田 寛治 様

不況打開、いのち、くらし、雇用と権利を守るための要請書

2000年11月15日

 

「不況打開、いのち・くらしを守る11.15行動」

愛知県労働組合総連合

新日本婦人の会愛知県本部

愛知県商工団体連合会

愛知県民主医療機関連合会

愛知国民春闘共闘委員会

愛知争議団連絡会議

愛知就職難に泣き寝入りしない女子学生の会

第54回(11.15)栄総行動実行委員会

国民大運動愛知県実行委員会


 営業とくらしを守るための貴職の日頃のご苦労に敬意を表します。

 さて、「景気は回復基調」との政府見解とは裏腹に中小企業の倒産や廃業が高水準でつづき、リストラの影響を受けての失業や就職難、賃金ダウンや労働条件の切り下げがあいつぐもとで、私たちのくらしはきわめて厳しい状態で推移しています。

 こうした時こそ政治が頼りですが、その政治が壮大な無駄との批判が強い大型公共事業中心の景気対策や大企業のリストラ支援、労働者・中小零細業者への犠牲転嫁に終始し、労働者・国民をいっそう追いつめているのは誠に遺憾で、内閣支持率が10%台に落ち込んだのも当然と言わなければなりません。財政危機を理由に県職員の賃金をカットし、くらし・福祉・教育への僅かばかりの補助金も削りながら、万博や新空港建設にあくまで固執する愛知県の姿勢も問題です。

 このもとで私たちは、状況打開のために、力を合わせて「不況打開、いのち・くらしを守る」共同行動にとりくんでいます。「この国のあり方は、このままではいけない」「企業、とくに大企業はその社会的な責任をきちんと果たしてほしい」「国や県は労働者・国民の願いに答える仕事をしてほしい」というのが私たちの率直な思いです。

 この趣旨から、貴職に対し以下の要求を提出しますので、誠意をもって検討され、前向きなご回答をいただくよう、要請します。

 

 

1.雪印乳業の集団食中毒、三菱自動車のリコール隠しなどが象徴する企業倫理の喪失について貴職の見解を表明し、改革への手だてを明らかにすること。

 

2.名古屋南部大気汚染公害裁判(あおぞら裁判)は、すでに100名以上の患者原告が死亡している実態を直視し、11月27日の判決後は直ちに判決に服し、原告患者の要求に誠意をもって応えるよう被告企業を指導すること。

 

3.法律違反の不払い・サービス残業が多くの企業に蔓延していることについて貴職の見解を明らかにし、根絶への手だてを示すこと。

 

4.雇用安定のために企業が果たすべき責任を自覚し、NTT、東海銀行など大規模なリストラ計画を打ち出している大企業に対し、「リストラ・人減らし計画」を再考・撤回するよう強く働きかけること。

 なお、「整理解雇の4要件」(=@どうしても整理解雇をしなければならないほどの経営状態にあるか。A解雇を回避するためにあらゆる努力が尽くされたか。B人選基準が客観的であり、その適用は公正であるか。C労働者および労働組合と事前に協議を尽くすなど、解雇に至る手続きに合理性、相当性があること)を厳守し、企業の言い分での一方的な解雇はやめさせること。

 

5.「日本版金融ビッグバン」の名による銀行、証券、生保・損保など金融・証券業界の、儲け本位・弱肉強食の再編は中止を含めて抜本的に見直し、地域経済振興に役立ち国民に支持・信頼される業界をめざすこと。また、労働者を犠牲にする「リストラ」は回避し、その雇用と生活保障に努めるよう指導すること。

 

6.失業の防止、雇用安定のための経営者責任を守るよう、指導を強めること。とりわけ、

 @ 不況を理由とした解雇や「経営の立て直し」と称しての首切り・リストラ「合理化」など、「解雇権の濫用」はやめさせること。

 

 A 企業の一方的な解雇は違反であり、出向・配置転換・転籍などは、対等の立場での本人および労働組合(労働組合のない企業では家族)の同意を得、確認する旨、各企業を指導すること。

 

 B 性や年齢を理由とした解雇をやめるよう、指導を強めること。

 

7.大企業の関連中小企業への出向などの押しつけ、企業の都合による無理な納期短縮や下請け単価の切り下げ、仕事の引き上げなどはやめさせること。

 

8.深刻な失業・雇用状況を打開するため、ヨーロッパの先例に学んで、賃下げなしの労働時間短縮に努めること。当面、以下のことを行うこと。

 @ 法律違反の不払い・サービス残業はこれを根絶するよう、企業・事業所への指導を強化すること。

 

 A 週40時間労働制の実施による雇用の拡大をはかること。また、週40時間労働制の実施による賃下げが行われないよう、各企業に要請すること。

 

 B 政府公約の年間総労働時間1,800時間を実現し雇用を維持・拡大するために、特別の対策を検討すること。

 

 C 完全週休二日制を早急に実施するよう指導すること。中小企業はその実施に向けた条件整備をすすめること。

 

 D 定時退社を推進する「ノー残業デー」をすべての企業で推進するよう奨励し、その条件整備(人・体制・仕事)について指導すること。

 

9.青年・学生の深刻な失業・就職難を緊急に解決するため、次のことを行うこと。

 @ 今春以前の卒業生ならびに来春卒業の大学・高校生の就職希望者全員が就職できるよう、企業の採用枠を大幅に拡大すること。

 

 A 県下の学卒未就職者ならびに就職活動中の学生について実態調査を行うよう、愛知県に要請すること。

 

 B 以上とも関連して、募集・採用における女子学生差別の有無について実態調査を実施し、報告書を公開すること。また、県経協として「女性相談窓口」を設けること。

 

 C いわゆる就職協定の廃止後、企業の採用活動が年々早まり、学生も卒業前年の秋から就職活動を始めなければならない状況を改善し、学生が「学業と両立させながら、公平で公正な就職活動に安心して取り組めるよう」、各企業・事業所に申し入れること。あわせて、企業間での、募集・採用に当たってのルールづくりを行うこと。

 

10.「改正」された労働法制をテコに、一方的な労働者への不利益変更(労働条件の切り下げ)は行わないこと。

 @ 労働基準法第1条を遵守するよう、各企業への指導を徹底すること。

【労基法第1条】

 労働条件は、労働者が人たるに値する生活を営むための必要を充たすべきものでなければならない。

 

 Aこの法律で定める労働条件の基準は最低のものであるから、労働関係の当事者は、この基準を理由として労働条件を低下させてはならないことはもとより、その向上を図るように努めなければならない。

 

 B 男女共通の規制が実現するまでは、「女子保護規定の撤廃」を延期するよう、各企業へ要請・指導すること。また、女性には夜勤勤務や変則勤務の導入をしないよう、要請・指導すること。

 

 C 「裁量労働制」は、労働時間を企業の思いのままにし、結果として長時間のただ働きを許す危険性が指摘されていることから、職場への導入は指導しないこと。

 また、「総労働時間短縮」を名目とした「時間外・残業規制」の締め付けなどもただ働きにつながっている実態を直視し、これを改めるよう指導すること。

 

11.リストラ「合理化」による長時間過密労働の実態を把握し、その改善に努めること。

 とりわけ、2交代24時間連続操業を続けている事業所では在職死亡も増えていることを重視し、生体リズムを無視した労働をやめ、改善するように事業所を指導すること。

 

12.企業、経営者が労働法規を遵守し、賃金や昇進・昇格、仕事、労使関係などすべての面で、差別や人権侵害、権利抑圧、労働組合敵視をしないよう、指導を強めること。

 また、労働基準法違反をはじめ、労働法規違反企業に対しては何らかのペナルティを課すことも検討すること。

 

13.雇用におけるすべてのステージでの男女平等の促進とセクハラ防止について、各企業に指導すること。また、セクハラカウンセラーの設置・活用など、女性労働者の相談体制を充実すること。

 

14.現在、職場や地域で問題となっている次の事例・争議について、その解決に向けて指導性を発揮すること。

 @ 10年以上の長きにわたる「国鉄・JR1047名の不当解雇」事件(=ILOも早期解決を勧告している)。

 

 A 住友軽金属・スミケイ運輸で争われている9つの争議(=「団体生命保険金」裁判6件、本人同意なしでの強制出向無効裁判1件、労災認定請求1件、スミケイ親交労組・林書記長の降格・配転にかかわる地労委係属事件1件)。

 

 B 明治乳業の賃金・昇格差別事件。

 

 C 丸八商運(株)の労働組合敵視、組合員への差別事件(健康診断もやられていない現状を問題にして労働組合を結成したら、経営者がこれを嫌悪し、賃金を実質1/2に切り下げるなど組合員を徹底して差別している。→名古屋地裁で係争中)。

 

15.その他

 @ 政府の税制調査会や与党代表が示唆している「福祉目的税」名目での消費税の大増税計画は、国民に大幅な負担増を強い、消費不況を深刻にすることから、これをとりやめ、当面、食料品を非課税にするよう、政府に要請すること。

 

 A 地球環境を守るため、資源循環型社会に向けて、「企業の責任」で循環システムに見合う商品開発に努め、廃品のリサイクルを積極的に実施するよう、指導すること。

 

 B 県民への財政負担が大きく、反対意見も根強い「中部新空港建設・愛知万博開催」などについては、県民の声をよく聞いて、見識のある対応をされること。

 

以上


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