愛知労働局

  局長 奥津 照嗣 様

働く者の雇用とくらし、権利を守るための要請書

2000年12月11日

 

「不況打開、いのち・くらしを守る11.15行動」

愛知県労働組合総連合

新日本婦人の会愛知県本部

愛知県商工団体連合会

愛知県民主医療機関連合会

愛知国民春闘共闘委員会

愛知争議団連絡会議

愛知就職難に泣き寝入りしない女子学生の会

国民大運動愛知県実行委員会


 働く者の雇用とくらし、労働条件を守るための貴職の日頃のご苦労に敬意を表します。

 さて、「景気は回復基調」との政府見解とは裏腹に中小企業の倒産や廃業が高水準でつづき、大企業が先を争うように打ち上げているリストラ「合理化」の影響を受けての失業や就職難、賃金ダウンや労働条件の切り下げもあいつぐもとで、私たちの雇用とくらしはきわめて厳しい状態で推移しています。

 こうしたときこそ政治が頼りですが、その政治が、壮大な無駄との批判が強い大型公共事業中心の景気対策や大企業のリストラ支援、労働者・中小零細業者への犠牲転嫁に終始し、労働者・国民をいっそう追いつめているのは誠に遺憾で、内閣支持率が10%台に落ち込んだのも当然と言わなければなりません。財政危機を理由に県職員の賃金をカットし、くらし・福祉・教育へのわずかばかりの補助金も削りながら、万博や新空港建設にあくまで固執する愛知県の姿勢も問題です。

 このもとで私たちは、状況打開のために、力を合わせて「不況打開、いのち・くらしを守る」共同行動にとりくんでいます。「この国のあり方は、このままではいけない」「企業、とくに大企業はその社会的な責任をきちんと果たしてほしい」「利益のためには何でもやる企業の横暴勝手、ルールなき資本主義の弊害を直視し、労働者が安心して生き働けるルールと環境をつくってもらいたい」「国や県は労働者・国民の願いに答える仕事をしてほしい」というのが私たちの率直な思いです。

 この趣旨から、貴職に対し以下の要求を提出しますので、誠意をもって検討され、前向きなご回答をいただくよう、要請します。

 

 

1.働く者の雇用とくらし、権利を守るために、愛知労働局として、次の事項について内閣ならびに関係省庁に意見具申(要請)し、必要に応じて関係自治体等にも要請すること。

 @ 営業譲渡や分社化、持株会社化など企業組織の再編(=リストラ)にともなう解雇や転 籍の押しつけ、労働条件の一方的な切り下げなどから労働者を保護するために、労働界がこぞって要求している「解雇規制・労働者保護法」を制定すること。

 少なくとも、いわゆる「整理解雇の4要件」など、判例で確定している労働者保護の項目については、早急にこれを法制化すること。

 

 A リストラで職を追われる中高年の激増、高校・大学卒業者のかつてない就職難など、戦 後最悪の雇用・失業問題の解決のために、労働時間の短縮、とりわけ「法律違反の不払い・サービス残業の厳禁」(具体的には、事業所に「労働時間管理台帳の設置」を義務づけること)によって雇用を創出すること。

 また、労働時間は政府公約の年間1800時間を直ちに実現し、週35時間労働制、「深夜・時間外・休日の労働=年間150時間まで」の男女共通の罰則付き法規制へ向けた具体的措置を開始すること。

 

 B 全国一律最低賃金制を法制化すること。その際、金額はすべての労働者が「健康で文化的な生活」を営むために必要な賃金の最低限を保障し、労使の団体交渉で決めるとともに、これを生活保護基準、年金支給額、下請け単価、業者や農民の自家賃金などに連動させ、ナショナル・ミニマム(国民生活の最低保障)の基軸とすることなどを原則とすること。

 

 C 経済同友会も「壮大な無駄」と批判する不要不急の開発型・大型公共事業中心の景気対策を改め、生活密着・福祉拡充型の公共事業に転換すること。なお、公共事業は地元中小企業・商工業者に優先的に発注するとともに、失業者の就労に結びつくよう留意すること。

 

 D 失業者救済のために国の「緊急地域雇用特別交付金」を大幅に増額し、平成13年までの期限を延長し、運用を改善すること。

 

 E 介護保険実施以後、介護従事者の労働条件が引き下げられ、意欲を持った介護者が離職を余儀なくされる事態がおきています。この事態を解決するために、介護従事者の労働条件の確保に向けて国や県が補助金を出すなど、介護における国・県の公的責任を明確にすること。

 

2.失業の防止、雇用安定のための経営者責任を守るよう、指導を強めること。とりわけ、

 @ 不況を理由とした解雇や「経営の立て直し」と称しての首切り・リストラ「合理化」など、「解雇権の濫用」はやめさせること。

 

 A 企業の一方的な解雇は違反であり、出向・配置転換・転籍などは、対等の立場での本人および労働組合(労働組合のない企業では家族)の同意を得、確認する旨、各企業を指導すること。

 

 B 性や年齢を理由とした解雇をやめるよう、指導を強めること。

 

 C 大企業の関連中小企業への出向などの押しつけ、企業の都合による無理な納期短縮や下請け単価の切り下げ、仕事の引き上げなどはやめさせること。

 

3.「競争力強化」を掲げた企業の合併・分社化や業績不振などを理由とする大量の人減らし「合理化」、希望退職の強要、工場閉鎖などについて、雇用対策法で定める届け出を遵守させ、解雇権の濫用がないかどうか、労働者の権利が守られているかどうか調査するシステムをつくること。

 また、60歳定年法に違反する早期退職の一律的運用や、事実上の定年切り下げとなる「中高年に的を絞った出向・転籍」、コストダウンのためだけの正規労働者の削減、不安定労働者への置き換えなどについては、これを行わないよう、企業へ指導・啓発を行うこと。

 

4.出向・転籍や解雇の対象となっているすべての労働者に、出向・転籍や解雇に際しての労働者の権利など明記したパンフレットを作成・配布するとともに、特別の相談窓口を開くなどして労働者の雇用と権利を守ること。

 

5.分社化・子会社化やコストダウン、業績不振などを理由とする一方的な賃金・労働条件の切り下げや、賃金体系の改変による賃金切り下げの実態について調査し、その防止についての施策を検討すること。

 

6.リストラ「合理化」による長時間過密労働の実態を把握し、その改善に努めること。

 とりわけ、2交代24時間連続操業を続けている事業所では在職死亡も増えていることを重視し、生体リズムを無視した労働をやめ、改善するように事業所を指導すること。

 

7.不払い・サービス残業の一掃、週休二日制の完全実施、年次有給休暇の完全取得、年間実労働時間1800時間以下の実現など労働時間の短縮をめざし、そのことによって「雇用創出」を図ること。

 とりわけ不払い・サービス残業については、集中的な違法キャンペーンを実施し、「一掃月間」の設定、手紙やパソコン通信などによる告発や相談の受け付けなど検討・実施すること。

 

8.パート労働者の権利擁護のため、労働基準法の全面適用を実施させるよう、企業に対して周知徹底すること。

 

9.青年・学生の深刻な失業・就職難を緊急に解決するため、次の点に努力すること。

 @ 今春以前の卒業生ならびに来春卒業の大学・高校生の就職希望者全員が就職できるよう、企業に採用枠の大幅な拡大を要請すること。

 

 A 県下の学卒未就職者ならびに就職活動中の学生について実態調査を行うよう、愛知県に要請すること。

 

 B 以上とも関連して、募集・採用における女子学生差別の有無について実態調査を実施し、報告書を公開すること。

 

 C いわゆる就職協定の廃止後、企業の採用活動が年々早まり、学生も卒業前年の秋から就職活動を始めなければならない状況を改善し、学生が「学業と両立させながら、公平で公正な就職活動に安心して取り組めるよう」、各企業・事業所に申し入れること。あわせて、企業間での、募集・採用に当たってのルールづくりを指導・要請すること。

 

 D 女子学生の相談窓口である雇用機会均等室の周知を徹底し、学生に身近な存在になること。

 

10.「改正」労働法制のもとで労働者を守るために。

@ 「改正」された労働法制をテコに、一方的な労働者への不利益変更(労働条件の切り下げ)が行われることのないよう、企業に要請すること。その際、労働基準法第1条の遵守について徹底すること。

 * 労基法第1条

 労働条件は労働者が人たるに値する生活を営むための必要を充たすべきものでなければならない。

 

 A この法律で定める労働条件の基準は最低のものであるから、労働関係の当事者はこの基準を理由として労働条件を低下させてはならないことはもとより、その向上を図るように努めなければならない。

 

 B 新たな裁量労働制の実施に当たっては、労基法38条の4の要件(労使委員会の要件6項目、労使委員会が決議する7項目)を満たさない場合は実施できない旨、指導を徹底すること。

 

 C 有期雇用契約導入については、労基法14条の要件を満たさない場合は実施できない旨を徹底すること。

 

 D 変形労働時間制の要件緩和を行わず、1ヶ月の変形労働時間制については1日・1週の上限を設けるとともに、変形労働時間制の規制を強化するよう、国に働きかけること。

 

11.派遣労働者や「契約社員(労働者)」保護のため、下記の事項について検討し、罰則付きで実効性を確保すること。

 @ 派遣期間の制限をこえた派遣について、派遣労働者が正規雇用を求めた場合は、派遣先企業に雇用を義務づけること。

 

 A 就業条件(業務内容など)の明示を義務づけること。また、派遣労働者の労働条件について、派遣元・派遣先企業の共同責任を義務づけること。

 

 B 派遣先企業による一方的な派遣打ち切りを禁止すること。また、契約の一方的な解除、いやがらせ退職強要を禁止すること。

 

 C 派遣労働者のプライバシー保護を派遣元・派遣先企業に義務づけること。

 

12.失業者・求職者の生活を守るため雇用保険改善の緊急措置を行うこと。

 @ 非自発的失業者と40歳以上の失業者で失業給付期間が過ぎた世帯主に対し、当面90日間失業給付を延長すること。

 

 A さらにその給付も過ぎた失業者に対しては、税金や社会保険料の減免措置を行うこと。

 

 B 自己都合の退職者の給付制限期間も、緊急措置として1ヶ月に短縮すること。

 

 C 新規卒業者など雇用保険受給資格のない求職者にも職業転換給付金制度を適用して、職業訓練制度を活用できるようにすること。

 

 D 生活困難な失業者には生活保護を適用するよう、適用基準を緩和すること。

 

 E 失業給付の国庫負担を法定の1/4に戻すこと。

 

13.すべての事業所が労働保険に加入するよう指導するとともに、職安では労働保険に加入して いない求人を受け付けないこと。

 

14.企業、経営者が労働法規を遵守し、賃金や昇進・昇格、仕事、労使関係などすべての面で、差別や人権侵害、権利抑圧、労働組合敵視をしないよう、指導を強めること。

 

15.男女平等、女性の地位向上について、女性労働行政を拡充すること。また、雇用におけるすべてのステージでの男女平等の促進とセクハラ防止について、企業への指導を強化すること。

 

16.現在、職場や地域で問題となっている次の事例・争議について、その解決に向けて指導性を発揮すること。

 @ 住友軽金属・スミケイ運輸で争われている9つの争議(=「団体生命保険金」裁判6件、本人同意なしでの強制出向無効裁判1件、労災認定請求1件、スミケイ親交労組・林書記長の降格・配転にかかわる地労委係属事件1件)。

 

 A 明治乳業の賃金・昇格差別事件。

 

 B 丸八商運(株)の労働組合敵視、組合員への差別事件(健康診断もやられていない現状を問題にして労働組合を結成したら、経営者がこれを嫌悪し、賃金を実質1/2に切り下げるなど組合員を徹底して差別している。→名古屋地裁で係争中)。

 

17.「第54回栄総行動実行委員会」が11月15日付で提出している次の3つの要請書については、要請事項について最大限の努力をおこなうこと。

 @ 愛労連金融・商業流通部会と連名で提出した「労働基準法のILO条約水準への抜本改正を求める要請書」

 

 A 名古屋過労死を考える家族の会と連名で提出した、労働災害にかかわる「要請書」

 

 B 建交労・愛知鉄道本部と連名で提出した、国鉄1047名の採用差別事件にかかわる「要請書」

 

18.労働行政の充実、労働者保護の徹底のためにも、監督官、職業安定所職員の増員をはじめ、労働行政の態勢を強化すること。

 

以上


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