厚生労働大臣 坂口 力 殿

愛知地方最低賃金審議会委員任命についての

不服審査請求書

2001年6月25日

審査請求人 小松 民子
同 上 河井 孝徳
同 上 國村 忠文
同 上

愛知県労働組合総連合

(議長 阿部 精六)


 

1.審査請求人の表示

審査請求人 小松 民子
同 上 河井 孝徳
同 上 國村 忠文
同 上 愛知県労働組合総連合(議長 阿部 精六)

 

2.審査請求に係わる処分

 第34期愛知県地方最低賃金審議会委員の候補者の推薦に関する公示(愛知労働局一般公示第12号)にもとづいて行った処分のうち、労働者代表委員の任命処分。

 

3.審査請求に係わる処分があったことを知った年月日

 2001年 4月27日。

 

4.審査請求の趣旨

 「愛知労働局長が、2001年4月26日付でおこなった第34期愛知県地方最低賃金審議会委員の任命処分のうち労働者代表委員の任命処分は、これを取り消す。」

 との裁決を求める。

 

5.審査請求の理由

(1) 当事者の地位

 審査請求人小松民子、同河井孝徳、同國村忠文は、本件審査請求に係る処分の前提たる「公示」後、最低賃金法第29条第1項、最低賃金審議会令第3条にもとづき、第34期愛知県地方最低賃金審議会労働者代表委員の候補者として、審査請求人愛知県労働組合総連合(以下愛労連という)の推薦を受けたものである。愛労連は、最低賃金審議会令第3条にいう「関係労働組合」として、他の審査請求人3名を推薦した者である。

 審査請求人小松民子、同河井孝徳、同國村忠文は、本件任命処分がなされたことにより実質的に一種の拒否処分があったものとして競合する関係にあるから重大な利害関係があり、また期待権を侵害されたという点からも重大な利害関係がある。さらに、審査請求人愛労連は、これら審査請求人3名を審議会の労働者代表委員として最も適切な者として推薦したのであり、任命の結果に対し重大な利害と関心を有するものであるから、行政不服審査法第4条にいう「行政府の処分に不服がある者」にあたる。

 

(2) 本件審査請求に係る処分のなされた経緯とその内容

 愛知労働局長は、2001年3月22日付愛知労働局一般公示第12号をもって、第34期愛知県地方最低賃金審議会委員の侯補者の推薦に関する公示を行なった。

 これを受けて、愛労連は、審査請求人小松民子、同河井孝徳、同國村忠文らを同審議会の労働者代表委員の候補者として推薦した。

 同年4月26日、愛知労働局長は、上記審査請求人愛労連の推薦にかかわる候補者ら3名全員を排除し、連合愛知加盟組合推薦にかかる5名の候補者らのみを労働者代表として任命する処分を行った(以下これを「本件任命処分」という)。

 

(3) 本件任命処分の違法不当性について

 本件任命処分は、以下に述べるとおり、違法、不当なものであって取り消しを免れない。

 

 @ 最低賃金法第28条は、審議会は労働者・使用者・公益をそれぞれ代表する委員をもって構成することとしている。

 これを受けて、審議会令第3条は、「公示」「推薦」制度をもうけることにより、行政の命である公平な人選のため広く関係団体からの推薦を求め、労働者代表委員の任命に当たっては関係労働組合に対して相当の期間を定めて候補者の推薦を求めなければならないこととしている。

 審議会委員の人選については、行政の恣意によることなく、公正・妥当におこなわれるようにするためのひとつの手段として、ひろく関係労働組合からの推薦を求め、被推薦者のなかから公正な人選をすべきであるということは明白である。

 よって、被推薦者のなかからの選任に当たっては、いやしくも一部の労働組合のみに偏った人選がおこなわれることがあってはならないということは言うまでもない。 本件任命処分は、この審議会令第3条の「公示」「推薦制度」の趣旨からして、著しく違法不当な任命処分である。

 

 A 労働省労働基準局長が発した基発第545号は、労使代表委員の組織系統別の構成、特に労働者代表委員の構成の如何は、委員任命に関しもっとも紛議を生じやすい問題であり、労働者代表委員の割り振りについては、諸事情を十分勘案すべきとされており、上記@の法の補強をはかるものであるというべきである。

 しかるに、本件任命処分においては、連合愛知傘下の組合推薦にかかる侯補者5名が選任され愛知県地方最低賃金審議会労働者代表委員を独占する一方で、愛労連傘下の組合推薦にかかる侯補者ら3名はすべて排除される、という著しく偏った不公正な人選がおこなわれたのである。

 愛知の労働界において「愛労連」、「連合愛知」という二つのローカルセンターが存在し、労働者の利害対立を反映しているのであるから、その双方から委員を選任することこそ公平な人選であるのであって、これに反する本件任命処分は、行政にあっては、許すべからざる差別的取扱であり、違法不当な任命処分である。

 

 B また本件任命処分は、最低賃金制度の趣旨・目的に照らしても、まったく不適任な人選をおこなうもので、不当極まりない。

 すなわち、最低賃金制度は「賃金の低廉な労働者について、事業もしくは職業の種類又は地域に応じ、賃金の最低額を保障する」(法第1条)ことを直接の目的としている。そして、その最低賃金額の決定に当たっては、最低賃金審議会に諮問してその意見を尊重しなければならないこととされている(法第15、16条)。したがって、審議会の委員の構成はこれにふさわしく、「賃金の低廉な」業界に詳しい労働組合や、広範な産業に属する労働組合からひろく人材を得なけれぱならない。

 ところが、本件任命処分の人選は、大企業を中心に組織されている連合愛知傘下の労働組合推薦候補のみから選任されており、極めて不適切である。

 また、男女共同参画社会へむけて各種審議会に女性委員の配置が要請されているなかで、審査請求人組合からのみ推薦された女性委員候補を排除したことの恣意的な選任の不当性は明々白々である。

 審査請求人組合が推薦した候補者らは、いずれも中小零細企業に働くものをはじめパート、臨時、派遣など不安定雇用労働者を多く組織する労働組合の出身者であり、長年にわたって最低賃金の改善のために活動をおこなってきた者らであるから、最低賃金制度に造詣が深く、最低賃金審議会の委員としてはまさに適任であって、これらの候補者らがそろって選任から排除されるべきいわれはない。

 

 よって、審査請求の趣旨記載のとおりの採決を求める。

 

6.教示の有無及び内容

 この任命処分についての教示はなされなかった。

 

以 上 


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