各 愛知県下地方自治体首長 様

各 愛知県下地方議会議長 様

災害対策と雇用・失業対策、税の使い方等に関する要請書

2000年10月

 

愛知県労働組合総連合

議 長  阿部 精六


 住民生活の向上をめざしての貴職の日頃のご尽力に敬意を表します。

 さて、先の東海集中豪雨による被災は愛知の防災対策の遅れをまざまざと示しました。住民のいのちと安全を守ることは国や自治体の最大の仕事です。派手なイベントや無駄な大型開発中心の公共事業から生活密着型の公共事業、しっかりした防災事業に主軸を移すことが切に求められています。

 次に、深刻な雇用・失業状況のもとで、企業のリストラ・解雇から働くものを守る法規制、ただ働き・サービス残業の根絶をはじめ労働時間短縮による雇用創出、失業者救済に向けた特別な対策などがいま強く求められています。一方、ここ数年いくつかの自治体で、「自治体リストラ」の名による職員の削減や財政難を理由とする賃金・労働条件の切り下げが目立っていますが、働く者のくらしと雇用をおびやかし、住民サービス引き下げにつながる施策は、自治体としてとるべきでないと考えます。

 以上から私たちは次の事項を要請します。貴職には誠意をもって対応いただくよう、お願い申し上げます。

 

 

1.東海豪雨災害にかかわって、次の要請に応えること。

 

ア.被害状況と防災上の問題点、危険個所などすべての情報を公開するとともに、災害から深く教訓をつかみ、抜本的な対策を立てること。

 とりわけ、明らかになった防災対策の遅れには抜本的な手を打ち、二度とこうした災害を繰り返さないために、河川管理や排水管理、防災チェック、防災事業を徹底して重視すること。

 

イ.土砂災害や河川の氾濫など危険個所の点検と監視を強めるとともに、「2次災害」防止のための緊急対策を実施すること。

 

ウ.緊急災害時の住民への連絡、避難ルートと避難所、水や食糧の補給、通信や交通手段、自治体職員の対応など、緊急災害時の「マニュアル」を練り直し、職員とすべての住民に徹底すること。

 

エ.被災者救援には、住宅の提供をはじめ生活再建支援、企業・商工業者の営業再建支援などを含め充分な手だてをとり、被災者生活再建支援法の柔軟な適用を図るとともに、災害救助法適用地域以外の被災者にも等しく救援の手が届くようにすること。

 

オ.効率優先の「行革」によって、行政サービスに必要な清掃、水道、下水などライフラインにかかわる仕事が民間に委託されたり、職員が削減されているために、災害防止・復旧に重大な支障が出た教訓を生かし、「行革」を見直して必要なところに税金を使うように改めること。

 

カ.以上については、国や愛知県にもつよく要請すること。

 なお今回の災害については「激甚災害」の指定を急ぐとともに、地方交付税の前倒し支給をはじめ必要な財政支援を行うよう、また被災者生活再建支援法の適用を全壊・半壊に限らず床上浸水などの被災者にも拡大するよう、国および関係省庁へ意見書を提出すること。

 

2.財政危機を理由とする県の「第3次行革大綱」や現在の万博・新空港計画は中止を含めて抜本的に見直し、防災をはじめ県民のいのちと安全、健康及び福祉の保持を中心とする県政に切り換えるよう、愛知県に要請すること。

 

3.「自治体リストラ」の名による職員の削減や民間委託、財政難を理由とする賃金・一時金、労働条件の切り下げは働く者の雇用とくらしを脅かし、住民サービスの切り下げにつながることから、これを行わないこと。

 

4.「緊急地域雇用特別交付金」の活用をはかるとともに、自治体独自にも雇用・失業対策に努め、雇用情勢好転まで自治体独自の事業と予算措置もとること。

 

5.下請け関連企業への仕事の削減、単価切り下げ、納期の無理な短縮などに苦しんでいる地域の中小零細企業・業者に配慮し、倒産や失業を防ぎ、地域経済がバランスよく発展するよう、地域の中小零細企業・業者の保護育成策、そのための「地域経済振興条例」の制定など、検討すること。

 

6.「地方公共の秩序を維持し、住民及び滞在者の安全、健康及び福祉を保持すること」(地方自治法第2条)という地方行政の基本原則にかんがみ、内閣ならびに関係省庁に対し、次の事項を要請する『意見書』を提出すること。

 

ア.営業譲渡や分社化、持株会社化など企業組織の再編(=リストラ)にともなう解雇や転籍の押しつけ、労働条件の一方的な切り下げなどから労働者を保護するために、労働界がこぞって要求している「解雇規制・労働者保護法」を制定すること。

 

イ.リストラで職を追われる中高年の激増、高校・大学卒業者のかつてない就職難など、戦後最悪の雇用・失業問題の解決のために、労働時間の短縮とりわけ「法律違反のただ働き・サービス残業の厳禁」(具体的には、事業所に労働時間管理台帳の設置を義務づけること)によって雇用を創出すること。

 また、労働時間は政府公約の年間1800時間を直ちに実現し、週35時間労働制、時間外労働の男女共通規制へ向けた具体的措置を開始すること。

 

ウ.全国一律最低賃金制を法制化すること。その際、金額はすべての労働者が「健康で文化的な生活」を営むために必要な賃金の最低限を保障し、労使の団体交渉で決めるとともに、これを生活保護基準、年金支給額、下請け単価、業者や農民の自家賃金などに連動させ、ナショナル・ミニマム(国民生活の最低保障)の基軸とすることなどを原則とすること。

 

エ.経済同友会も「壮大な無駄」と批判する不要不急の開発型・大型公共事業中心の景気対策を改め、生活密着・福祉拡充型の公共事業に転換すること。なお公共事業は地元中小企業・商工業者に優先的に発注するとともに、失業者の就労に結びつくよう留意すること。

 また、失業者救済のために国の「緊急地域雇用特別交付金」は大幅に増額し、平成13年までの期限を延長し、運用を改善すること。

 

オ.介護保険実施以後、介護従事者の労働条件が引き下げられ、意欲を持った介護者が離職を余儀なくされる事態がおきています。この事態を解決するために、介護従事者の労働条件の確保に向けて国や県が補助金を出すなど、介護における国・県の公的責任を明確にすること。

 

以 上


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