愛知県知事・神田真秋 様

<公開質問状>

第36期愛知地労委・労働者委員の任命について

2001年12月3日

愛知地労委の民主化を求める連絡会議
代表委員 成 瀬  昇 (元愛労評議長・労働者委員)
阿部 精六

(愛労連顧問)

山田 敏行

(国労名古屋地本委員長)

高木 輝雄

(弁護士)

宮崎 鎮雄

(愛知大学法学部教授)

愛 知 県 労 働 組 合 総 連 合 
議 長 見崎 徳弘


 愛知地労委の労働者委員が特定の労働団体に独占される知事の偏向任命が強行された12年前(第30期の委員任命)から、私たちはその一刻も早い是正を要求し、知事ならびに愛知県と裁判(任命取消・損害賠償請求訴訟)でも争ってきたが、一昨年5月12日に名古屋地裁が最初の訴訟についての判決を出したあと、これを控訴せず、後続の訴訟についてもすべてこれを取り下げた。私たちが法廷での争いを終結させたのは、10年にわたり40回もの口頭弁論を経て出された判決を重く受けとめるべきであると考えたからであり、裁判所が判決文の結び部分で明記した知事への要望(任命改善勧告)をふまえるなら今後は特定団体に委員を独占させる任命はありえないと確信したからに外ならない。

 しかし神田知事は、判決直後の2年前も公正任命を決断できず、結局は裁判所の改善勧告を無視した。私たちはこのことに激しい怒りを禁じ得ない。

 法廷で林裁判長が判決の「最後に」の部分を敢えて朗読し、知事への異例の要望を行ったのは、審理を通じて、労働者委員の連合独占任命があまりにも不当・不合理であり、労働委員会の本来の任務=労働者の権利救済機能を十分に生かすためにも速やかな改善が必要と判断したからに外ならない。 

 1946年3月に地労委が発足してから43年間も守られてきた慣行(各系統から労働者委員を任命する、すなわち特定の系統・潮流だけからの任命は行わない)を一方的に変え、連合愛知系だけに委員を独占させた以上は、県はその合理的な根拠を示すべきであるが、被告の愛知県は法廷でも、「総合的に判断した」「結果として連合系だけになった」などと抽象的な説明しかできなかった。したがって第30期以降の任命は、選挙で知事を支援した連合愛知への配慮を優先させた政治的任命との疑問が強い。また、各系統からの任命を求めた労働省の54通牒もあり、反・非連合系の事件が圧倒的多数という愛知地労委の現状からも独占任命は好ましくない。裁判所が判決で「改善勧告」を出したのは、こうした私たちの主張が裁判所にも認められたからであることは明らかである。

 ところが神田知事は裁判所の勧告を無視し、7度目の連合独占任命を強行した。県民が主人公の民主政治においては、裁判所が指摘したように任命基準を作成・公表し、政治的な任命でないことを明らかにする責任があるが、知事はそれをも拒否した。「裁量権濫用もきわまれり」との非難は免れないと確信する。

 7名とも連合愛知という偏った委員構成で、「労働者全体の利益」を代表するなどと言えるはずがない。連合愛知だけが労働団体ではない。以下の質問について誠実に検討し、12月14日までに回答されるよう、要請する。

 なお、回答は地労委民主化会議や愛労連のニュース等に掲載するとともに、マスコミにも公表するので、承知されたい。

 

 

1.県は36期地労委の労働者委員任命においても任命基準の作成・公表をしなかった。99年5月の地裁判決における裁判長の改善勧告ついて「積極的な情報公開」を公約とする神田知事はどのように考えているのか簡潔に示されたい。

 

@ 「労働組合運動において運動方針を異にする潮流・系統が存在する以上、労働者委員の構成においても多様性を有することが望ましい」という指摘を受け入れるのか否か。

 受け入れないのであればその理由を示されたい。なお、この場合の「運動方針を異にする潮流」とは連合愛知と非連合組織であることは判決文の中で示されている。

 

A 「委員の任命は政治的であってはならないが、政治的との疑問が生ずるだけでも問題」との指摘を受け入れるのか否か。

 

B 任命基準の作成について判決は知事の「幅広い自由裁量権」を認め、「候補者の評価は・・・中略・・・あらかじめその判断基準を定立することには困難を伴う」とした上で、しかし「任命の公正性、透明性を担保するためにも、任命基準の作成・公表が望ましい」と指摘している。

 県が「自由裁量」を理由に基準の作成は「なじまない」とするのであれば、どのようにして「任命の公正性、透明性を担保するのか」示されたい。

 

2.私たち地労委民主化会議は知事との面会を求めてきたが、知事は多忙を理由にこの12年間でたった一分すら面談を拒否してきた。これは裁判長の指摘する「労働組合運動において運動方針を異にする潮流・系統が存在する」ことに目をつぶり、反対意見・少数意見を抹殺する行為である。また知事は「男女共同参画社会の積極推進」を掲げているが、各種委員会においては労働者委員の女性割合が極めて少ないのが実情である。これに関連して以下の質問に答えられたい。

 

@ 第35期の2年間に愛知地労委に申し立てられた審査事件の総数と系統(連合・非連合)別内訳を明らかにされたい。

 

A 平成13年12月1日現在で愛知県の各種審議会のうち、産業労働部が主管する委員会について各委員会ごとに労働者委員の系統別、男女別人数を明らかにされたい。

 

B 第36期地労委労働者委員の任命にあたって、労働者委員の推薦組合の系統別、男女別人数を明らかにされたい。

 

C私たち民主化会議が11月21日に知事室に要請した際に、小出主幹は「知事への面会申し入れ要望は数が多く、実際に会えるのはほんのわずか」としながらも連合愛知の幹部とは毎年懇談していることを表明した。

 平成12年度に県知事と連合愛知の懇談は公式・非公式を合わせて何回行われたのか明らかにされたい。

以上。


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