東京都教育委員会は、8月7日、「つくる会」の教科書(扶桑社版)を都立養護学校(病弱・知的障害)で採用することを決めた。これは歴史に汚点を残す暴挙であり、心の底からの怒りを込めて抗議するものである。
「つくる会」歴史教科書は日本の侵略戦争を肯定・美化し、歴史を歪曲して偏狭なナショナリズムを煽る内容などが、また、公民教科書は人権を敵視し、憲法を否定する国家優先の内容などが、国の内外から批判されてきた。それだけではなく、多くの間違いを含むもので、とうてい教科書としては使用にたえられない、ふさわしくないものであることも多くの関係者によって指摘されてきた。
さらに、この教科書を不採択とした多くの教育委員会が指摘しているように、「中学生にとっては文章、内容が難解」「生徒が自ら学ぶ内容ではない」「分量が多すぎる」「学習指導要領の趣旨に沿わない」という点からも多くの問題があり、教科書として使えるものではない。
養護学校で学ぶ生徒たちは、様々なハンデをかかえながら勉強している。この子どもたちに中学生にとって負担の多い難解な教科書で学ぶことを強要する東京都教育委員会の決定は、教育的な観点からの判断ではなく、「つくる会」を支援するというきわめて政治的な立場だけを優先させたものだと断ぜざるを得ない。これは、教育と民主主義に対する挑戦であり、教育行政にあたるものが、教育を政治的目的のために自ら破壊する行為である。東京都教育委員会は、都民はもとより全国の市民から批判・抗議を受けることは明らかであり、さらに、アジアの人々からの批判にさらされることになろう。後世に残る汚点を記したことになる。
現在、全国では70%を超える採択地区の採択結果が判明しているが、「つくる会」教科書の採用を決めたところは一地区もない。その点からみても都教委の採択決定は異常なものだということが明らかである。東京都では、「つくる会」の熱心な賛同者である石原慎太郎知事が先頭に立ち、東京都教育委員会が「つくる会」教科書を採択させるように区市町村教委に圧力をかけてきた。しかし、今日までのところ、住民の強い要請によって、「つくる会」教科書は1地区も採択されていない。都教委の決定は、こうした状況への石原都政の焦りの現れであり、今後の区市の採択への影響をねらったものと推測されるが、これによって、区市町村教委が「つくる会」教科書を採択しやすくなったなどと判断することがないように強く望むものである。
私たちは、東京都教育委員会の「つくる会」教科書の採択決定に強く抗議し、決定を撤回することを要求する。そして、東京都民だけでなく全国の人びとに対して、東京都教育委員会への抗議と決定の撤回を求める要請行動に労働組合としても起ちあがることを呼びかけるものである。
以上