愛知県知事 神田真秋 様

いのちとくらし、雇用を守る要請書

2002年3月19日

 

愛知県労働組合総連合

議 長  見崎 徳弘


 県民のいのちとくらし、雇用をまもるためにご奮闘の貴職に敬意を表します。

 表記の件について、下記の事項を要請しますのでよろしく対応ください。

 

【要請趣旨】

 12月の完全失業率は史上最悪の5.6%、今春卒業する高校生の就職率は6割台と親子とも仕事につけないような深刻な雇用情勢が続いています。先日開会された国会で政府はさらなる「構造改革」で、失業者の増加を容認しています。また高齢者の外来負担増、サラリーマン本人3割負担などを柱とする医療改革法案が今国会に提出されることになりました。

 「構造改革」政策のもとで企業の生産拠点の海外移転が急速に拡大しています。かつて愛知県の主要産業であった繊維製品が中国からの輸入にとって変わられましたが、今では機械機器の輸入も繊維にせまっています(ジェトロ「2001年の中国貿易」)。愛知の製造業も「仕事が激減」し廃業もふえています。

 愛知では最低限の労働条件、ルールすら守られない事態が続発しています。私どもは昨秋「解雇・退職強要・賃金未払いの実態」をマスコミに告発しましたが、その後も「明日からこなくて良い」「就業規則をみせてくれと言ったら解雇された」「配転について団体交渉を求めたが拒否され1日で懲戒解雇」など悪質な解雇が続いています。ところが不当労働行為を簡易・迅速に救済するためにつくられた地方労働委員会では審査が長期化し機能の低下を招いています。

 また、東海地震の震源域が見直され愛知県にも甚大な被害が予測されます。東南海地震との同時説も報道され県民の不安が高まっています。県は今年度の予算案であらたな対策を始めましたが、東海地震の発生が近づいていることからすれば全く不十分な対策です。万博や空港に巨額な税金を投入し、目前にせまる地震対策が後回しにされています。

 政府は先日「緊急デフレ対策」を指示しましたが、県政においても消費不況と雇用の悪化、県財政の悪化という悪循環に対応する政策の転換が必要です。住民の雇用と福祉に直結する県行政への期待はたいへん大きくなっています。そのために、国への働きかけと同時に自治体独自としても下記施策をとられるよう要請します。

 

【要請事項】

T 第三次行革大綱を撤回し、万博・空港より県民生活を優先すること

(1) 福祉・教育や市町村に対する補助金カットをやめ、以前にもどすこと。また老人医療(福祉給付金含む)の現行制度を守り存続させること

 

(2) 県立高校の統廃合をやめ、教育関係者・団体や地元の意見・要望にそってその存続をはかること。また小中学校全学年での30人学級を早期に実現すること

 

(3) 県職員を大幅に削減し、老人ホームや障害者施設の民営化をさらにおしすすめ県立病院の民営化を打ち出している第三次行革大綱(改訂版)は撤回を含め全面的に見直すこと

 

(4) 市町村にたいして合併をおしつけないこと

 

(5) 万博を中止し、新空港の計画をみなおすこと

 

U 中小企業の経営と県民の雇用をまもるために

(1) 「緊急地域雇用創出特別交付金」に関する要求

@ 「基金事業」について、県として事業の上積みを積極的に行い、財源を確保すること

A 事業計画の実施に当たって「必要に応じ関係者の意見をきく」とあるが、「関係者」の中に労働組合も含むものとすること

B 「失業者であることの確認」について、本人の表示を尊重し、雇用保険受給資格者賞などの提出等は強要しないこと

 

(2)公契約・事業の委託・公共事業等に関する要求について

@ 事業の発注、事業の委託契約については、労務費(賃金)単価を最低月額15万円、時間額千円以上とし、2次・3次の下請け労働者も含めて労務費明細を明確にさせること

A 契約に当たっては、安価な金額のみを基準とせず、その事業所が、その内部で従業員の労働条件の向上に努めているか、環境改善や地域での社会的役割を果たしているかなどを考慮し、総合的な視点で判断をすること

 

(3)中小零細企業の経営を守り雇用を拡大する要求について

@ 中小零細・業者の経営実態を調査し、その安定にむけて抜本的な施策を講じること

A 大企業の身勝手なリストラ、下請け単価切り下げに歯止めをかける方途を検討すること

B 青年から中高年までますます深刻さをましている雇用情勢を好転させるためできるだけの手だてを講じること。当面少なくともサービス残業一掃と労働時間短縮による雇用拡大に最大限の努力をおこなうこと

C 県独自の中小企業経営安定のための緊急融資・特別融資制度の充実をはかること

D 地域の金融機関としての信金・信組について金融庁「検査基準」の画一的な適用をやめさせ、きめ細かな対応を行うよう国に要請すること

 

(4)地方労働委員会の運営を改善し機能を回復すること

@ 紛争の迅速な解決のため運営規定を遵守すること

A 迅速な審査のため労働委員会が積極的にイニシアチブを発揮すること

B 現場に出かけるなど労働者委員は申立人の立場にたって積極的な情報収集を行うこと

 

V 東海地震・東南海地震から県民生活をまもるために

@ 最悪の事態を想定し、『東南海地震との併発』および『直下型地震の誘発』を前提にし、近隣からの応援態勢が取れない場合の『防災対策と緊急の救命、救助、医療体制』を確立すること

A 県民全てに、予想震度、液状化予測、活断層所在、津波予測を公表・周知すること

B 横浜市並みの耐震補強工事助成制度と、液状化対策助成制度をつくること

C 学校、幼・保育園、介護・養護施設、病院、劇場などは、公・私立を問わず耐震補強工事を急ぎ、地下街、高層ビル、高速道路、高架鉄道、危険物施設の耐震診断と防災対策を取らせること

D 巨大地震の併発による震度予測に基づいて、万博・空港の建設・計画を全面的に再検討すること

E 消火栓壊滅を前提に『防火用水と河川・用水路による消防活動』を構築すること。ガスと電気は「即全面遮断・安全確認後の順次復旧」の原則を守らせること

F 防潮堤再点検を含め、津波対策をとること

以上


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