愛知労働局長 君嶋護男 様

労働者の雇用と権利、暮らしを守るための要請書

2002年3月7日

 

愛知県労働組合総連合

議 長  見崎 徳弘


 国民のいのちとくらし、雇用をまもるためにご奮闘の貴職に敬意を表します。
 表記の件について、下記の事項を要請しますのでよろしく対応ください。

【要請趣旨】

 12月の完全失業率は史上最悪の5.6%、今春卒業する高校生の就職率は6割台と親子とも仕事につけないような深刻な雇用情勢が続いています。大企業が率先して大規模なリストラをおこない、玉突きで下請け中小企業からの退職者も増えています。11月からは「非自発的離職者」が急増しており、倒産と解雇が増えています。「構造改革」政策のもとで企業の生産拠点の海外移転が急速に拡大しています。かつて愛知県の主要産業であった繊維製品が中国からの輸入にとって変わられましたが、今では機械機器の輸入も繊維にせまっています(ジェトロ「2001年の中国貿易」)。愛知の製造業も「仕事が激減」し廃業もふえています。

 しかし、その一方でリストラを進める一方でサービス残業が蔓延し、不慣れな現場での労災事故も続いています。トヨタでは依然として長時間残業が続いており、中には働く労働者の家族からは「このままでは死んでしまう」と悲痛な手紙が届いています。大企業のサービス残業をなくすことが雇用対策に大きな効果があることは各シンクタンクも指摘するところです。

 愛知では最低限の労働条件、ルールすら守られない事態が続発しています。私どもは昨秋「解雇・退職強要・賃金未払いの実態」をマスコミに告発しましたが、その後も「明日からこなくて良い」「就業規則をみせてくれと言ったら解雇された」「配転問題で団体交渉を要求して、たった1日元の職場に出勤しただけで懲戒解雇」など悪質な解雇が続いています。ところが不当労働行為を簡易・迅速に救済するためにつくられた地方労働委員会では審査が長期化し機能の低下を招いており、地労委を活用せず裁判にかける事件が増えています。

 雇用の安定のために、労働条件の最低基準を定めた労働基準法、最低賃金法、労働組合法、労働安全衛生法、パート労働法などの遵守と徹底こそ、今もっとも重要なことです。
労働事件が急増するなかで、使用者が労働関係の法律を守らないだけでなく、企業側の弁護士が法律を無視するような事態も生まれています。優先されるべき労使の誠実な話し合いが行われず、いきなり「弁護士を通じての話し合いしか応じない」「文句があるなら最高裁まで覚悟しろ」などの脅しに泣き寝入りする労働者もあります。

 職安の実態も深刻です。たいへんな数の相談・給付を限られたスペースと人員で対応しており、相談者のプライバシーもあったものではありません。職安も早急な改善が必要ですし、なにより不法な解雇を厳しく取り締まることが急務です。

 愛労連は公務員と中小民間企業で働く労働者が中心の労働組合ですので、雇用の安定や最低限ルールの遵守について商工会議所や中小企業の経営者との懇談との話し合いはたいへん重要だと考えております。愛知労働局は昨年政労使の雇用会議を開催しましたが、今後私ども愛労連や中小経営者団体との懇談の場も設けていただきたいと思います。

 

【要請事項】

T 不当解雇・サービス残業など法律違反の一掃を

(1) サービス残業の一掃のため「4.6厚生労働省通達」の徹底をはかること

  サービス残業、長時間残業がある企業での整理解雇をみとめないこと

(2) 企業に対し「整理解雇4要件」の遵守を徹底すること

(3) 賃金不払いなど悪質な事業主は告発し企業名を公表すること

(4) パート労働法の遵守とパート労働指針の徹底をはかること

 

U 労働者の雇用の安定のために

(1) 1年以上の失業など長期化する失業の実態を明らかにすること

(2) 高卒者、大学・短大卒者の就職拡大やリストラにあった世帯主の救援にむけて緊急施策をおこなうこと

(3) 職安の人員を拡充するとともに、必要に応じてついたてを立てるなど相談者のプライバシーを確保すること

(4) 地域雇用創出特別交付金」に関する要求として「失業者であることの確認」について、本人の表示を尊重し、雇用保険受給資格者証などの提出等は強要しないことを周知徹底させること

(5) サービス残業がある企業・官公庁や残業の上限が360時間を超える企業については、サービス残業の一掃とその分の雇用を拡大するよう文書で要請すること。また繰り返し指導しても従わない企業については企業名を公表すること

 

V 公契約における最低労働条件の確保のために

(1)国や自治体の事業の発注、事業の委託契約については、労務費(賃金)単価が少なくとも最低賃金を下回ることのないよう国の各機関・自治体に要請し、2次・3次の下請け労働者の労務費単価を明確にさせること。

(2)愛知県の最賃を下回る日額5320円という低単価での国の補助金算出基準を改め、正規職員並みの時間単価を保障すること

(3)契約に当たっては、安価な金額のみを基準とせず、その事業所が、その内部で従業員の労働条件の向上に努めているか、環境改善や地域での社会的役割を果たしているかなどを考慮し、総合的な視点で判断するよう要請すること。

 

W 最低賃金の大幅な引き上げを

(1) 全国一律最低賃金制を制定し月額15万円、時間額を千円とすること

(2) 愛知県の最賃審議会委員の労働者委員任命にあたっては連合愛知の独占をやめ、非連合組合の代表も入れ、少数組合の意見も尊重すること

 

X 労働行政のいっそうの充実のために

(1)中小企業の雇用の安定のため愛労連の含む「地域産業労働懇談会」を開催すること

(2)地方労働審議会の開催と傍聴の募集を広く広報し、議事録を公開すること

 

以上


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