愛知労働局長 君嶋 護男 様

愛知最低賃金の改正についての異議申立

2002年8月21日

名古屋市熱田区沢下町9−7労働会館東館
愛知県労働組合総連合
議 長  見崎  徳弘


 「愛知県最低賃金の改正決定に係わる愛知最低賃金審議会の意見に関する公示」がありましたので、愛知県労働組合総連合は、以下のとおり異議の申立をおこないます。

 

 

 1.時間額681円の据え置きは、低額を固定化するものできわめて遺憾であり、不服である。

 2.最低賃金について、少なくとも日額5,600円・時間給を700円以上に改定し、愛知県を「Aランク」に引き上げること。

 

理由

 

1.最低賃金法の目的に反するものであること。

 今回の改定見送りは、きわめて低額である現行最低賃金額を固定化するもので、労働者の生活の安定、労働力の質的向上などを目的とした最低賃金法第1条の趣旨に反するものである。また「中小零細企業等に多く存在する賃金の低い労働者は、その多くが未組織であるなど、使用者との対等な交渉によって労働条件、とりわけ賃金を決定することがほとんど期待できない状態」にあり、「国が積極的に介入してその改善を図る」とする趣旨にも反している。また国会での政府側答弁にも反するものである。

 

2.最低賃金法に定める3原則に違反している。

 今回の改定見送りは労働者の生計費、類似の労働者の賃金、通常の事業の賃金支払い能力の3つを最低賃金決定の3原則とした最低賃金法第3条にも違反する。

 @ 現行の最低賃金は、時間給・日額とも、労働者が生活できる水準にはない。愛労連がとりくんできた最低賃金・標準生計費による体験生活によっても、このことは証明されている。まして今回引き上げ改定を見送る一方で、日額表示を廃止し、時間給のみの表示としたことは、日額および月額119,834円にさえ達しない労働者を増加させ、いっそうの低賃金を押しつけることにつながるものである。

 A 類似の労働者の賃金についても、賃上げ凍結事業所が55%に達したこと、賃金上昇率が0.1%であったことなどをあげ、「最低賃金だけが毎年引き上げられていくことは不可能」だとしている。しかし、現行の最低賃金は類似の労働者の賃金と比較しても、絶対的に低い水準に据え置かれているのである。ここでは生活保護水準との逆転現象や「Aランクへの引き上げ」など独自の要求についてはふれられておらず、たんに春闘時の賃金上昇率のみを基準に、従来のやり方を踏襲しているにすぎない。そもそも最低賃金は、憲法第25条の「生存権」を保障する制度であり、人が人として生活できる賃金を保障するものであり、そのために現行の最低賃金が妥当かどうかを審議するために審議会は設置されているのである。
中央の「改定見送り」にたいして、全国で15の県が「目安」を上回り、微々たる額ではあるものの改定に踏み切ったことからみれば、愛知県最低賃金審議会が事実上中央に同調したことは、本来の役割と自主性を放棄したものといわざるを得ない。

 B 使用者の支払い能力の点からみても、たとえ1,000円に引き上げたとしても、また「Aランク」に引き上げる程度なら、十分支払い能力はある。使用者側委員は「さらに人件費を増やすことはますます中小経営者を窮地に追い込む」などとのべているが、中小経営者の経営が厳しいのは、人件費の上昇が理由ではない。親企業のコストダウン、長期不況による売り上げの減少にあるのである。今日の不況を克服するためにも賃金の底上げ、とりわけ最低賃金の引き上げが必要である。

 C 愛労連はこの間、日額7,400円・時間額1,000円を要求してきたが、あらためて愛知県最低賃金審議会に対し、「目安」にとらわれず、現行の最低賃金水準の低さ、生活保護基準との逆転現象など総合的に判断して、適切に引き上げ、少なくとも日額5,600円・時間給700円以上とし、「Aランク」への引き上げを行うようあらためて強く求めるものである。

 

以上


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