トヨタ自動車株式会社

取締役社長  張 富士夫様

不況打開、労働者・県民のくらしと雇用を守るための要請書

2003年1月21日

 

愛知県労働組合総連合

議 長 見崎 徳弘


 

 日頃の貴職のご活躍に対し、敬意を表します。

 さて長引く不況の中で、働くものをはじめとした県民生活はいま、たいへんきびしい状況にあります。5%を下回らない失業率、失業者数も若年層を中心として最悪の事態になっています。収入の減少も官民を問わず起きています。私ども愛労連が実施している「働くみんなの要求アンケート」では、年収が減少または停滞している人が、大きな割合を占めています。)

 こうした中で、トヨタ自動車は昨年、日本企業として初めて1兆円を超える経常利益を計上しました。今期はこれをさらに上回り、1兆5千億円に達する見通しと報道されています。ため込み利益(内部留保)は、一年間で6768億円積み増しし、7兆9419億円もの巨額です。従業員一人あたりの内部留保額は3219万円にもなります。(全労連『検証・大企業の連結内部留保』03年版)

 一方では、空前のもうけをあげている日本のトップ企業・トヨタの労組がベア要求を断念するという「土俵に上がる前に白旗をあげた」(トヨタ労働者)背景には、“ベアは論外"と主張する財界の強い姿勢があります。

 トヨタ自動車とトヨタグループが、愛知県経済に占める位置だけではなく、日本経済全体に占める位置はきわめて高いものがあります。そのことは、貴社の会長である奥田碩氏が日本経団連の初代会長に就任していることでも明らかです。愛知の製造業に占める自動車産業の比率を見ても明らかなことと思います。また、電力や工業用ガスの使用比率も高く、自治体におけるトヨタ自動車とトヨタグループからの税収は全体の2割を占めています。こうした中での、国内生産の減産と海外生産の拡大などは、下請け・関連企業の経営悪化、自治体財政の減収につながり、地域経済に大きな影響を与えています。

 本日私たちは、全国労働組合総連合(全労連)の統一行動日として、貴社をはじめとした我が国の大企業に対して、企業としての社会的責任と社会的役割を果たしていただくことを主題とした要請行動を全国各地でおこなっています。

 つきましては、県内の労働者・県民の生活と雇用を守るために、以下の点について要請させていただきます。貴職が各段のご尽力をいただけるようお願い申し上げます。

 

 

1.2003年春闘において、労働者の生活と雇用を守るため、以下の点について前向きな検討をお願いしたいこと。

 @ サービス残業について、トヨタ自動車に限らず、関連企業における実態を調査し、是正と未払い分の支給について指導すること。

 A これ以上の人員削減はやめ、賃下げなしで労働時間を短縮し、正規従業員を中心に雇用を増やすこと。とりわけ、地元高校生の就職の機会を、関連企業も含めて拡大すること。

 B 貴社が36協定で720時間以上と定めている残業時間の上限は、労使自治の問題とはいえ、法で定めた360時間の2倍ともなっており、極めて残念です。せめて360時間の枠内にとどめるよう再考し、日本のトップ企業として範を示すこと。そしてこの改善により必要となった分について新規雇用を拡大すること。

 C 期間工なども含め、貴社で働くすべての労働者について、賃金を最低15,000円以上引き上げること。

 D この間のベアゼロ発言を撤回し、日本のトップ企業にふさわしい、働くものが安心して生活できる賃金・労働条件にすること。

 

2.大企業としての社会的責任と役割を果たすこと。

 @ 膨大な内部留保を、下請け企業への単価の引き上げ、労働者の賃上げ、自動車価格の引き下げ、消費者サービスの充実などの形で、社会に還元すること。

 A 仕事の削減、単価の引き下げ、納期の短縮などに苦しんでいる下請け・関連企業に配慮し、共存共栄の立場に立った公正な取り引きにつとめて地域経済の振興によりいっそう貢献すること。

 B 奥田会長の消費税増税発言は、国民生活に大きな影響があるところから、発言の撤回を申しいれること。

 C 空港・万博・伊勢湾岸道路などの大型プロジェクトについて、自治体財政への圧迫、環境破壊などの点から抜本的に見直すこと。また、その旨を関係方面に働きかけること。

以上


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