愛知県健康福祉部長 殿

名古屋市健康副支局長 殿

社会福祉法人ゆたか福祉会での労働事件早期解決にむけて協力のお願い

2003年10月17日

愛知県労働組合総連合

議 長 見崎 徳弘


 

 貴職におかれましては日頃、県民の健康と福祉推進のためのご努力に敬意を表します。

 さて表記の件につきまして、私ども愛労連に所属する二つの労働組合(愛労連ローカルユニオン及び福祉保育労ゆたか民主労働組合)から愛知県地方労働委員会と名古屋地方裁判所に対して申し立て・提訴が行われています。愛知県から多額の補助金を受け取る法人において公然とした労働組合差別や人権侵害が行われており、県民からみても「適切な運営」がされているとはいえません。ましてや障害者のくらしと人権をまもることを目的とする社会福祉法人においてはその資格が問われるものです。

 ゆたか福祉会を監査する愛知県がこのような人権侵害を、労働委員会や裁判所から救済命令・賠償判決などを受けるまで放置しておくことはできないと思います。すでに貴職に対し情報の提供がされているかもしれませんが、愛労連としての見解を別紙に記し、労働事件の早期解決に向け貴職の積極的な対応を要請いたします。

 

 

ゆたか福祉会の労働事件について

2003年10月8日

愛知県労働組合総連合

(1)事件の経過

@「ゆたか労組委員長への批判は大会決定違反」

 一連の事件の性格を端的に示すのが昨年6月のSさんの事件です。Sさんが提出した原稿にゆたか福祉会労組(以下ゆたか労組)のO委員長と元副委員長で現常務理事のM氏を批判した部分があることが「大会決定違反」であるとされ、労組から処分を受けました。さらに「労組からの指摘により」法人の「綱領教育補講」を受けさせられたSさんが主張を改めなかったため法人は「注意処分」とし、「繰り返した場合には解雇もあり得る」としました。Sさんはゆたか労組に法人の処分撤回を要請しましたが回答は「守るべきものは何もない」というものでした。そのためユニオンショップ協定による解雇をおそれたSさんは愛労連ローカルユニオン(以下ユニオン)に加入し、助けを求めました。(S事件)

 

Aゆたか労組の突き上げで、「綱領をすてた」とTさんを排除

 この事件は法人の処分撤回で解決しましたが、その後今日までゆたか労組による反対意見排除と管理職による所属組合による差別が続きました。昨年9月19、20日の綱領教育では「労組と法人は車の両輪」であり「ゆたか福祉会労働組合をすべての事業と業務に位置づけ」「ゆたかの職員になりきって頂くために・・・ゆたか福祉会の活動を含む教育研修等に参加し学ぶ」ことが強調されました。同じ日、9月20日のゆたか労組との団交では、3時間にわたって「ゆたか福祉会綱領」を認めない者の排除が繰り返し発言されましたが、3人の常勤理事を含む管理職からは「共に闘う」態度が示されました。この直後の23日に福祉村職員会議で、ユニオン組合員のTさんに対し、管理職を含む約40人の職員全員が「綱領を捨てたT看護師は許せない」などと排除の発言を繰り返しました。Tさんはこの日うつ病を再発し、1年たった今日まで深刻な病状が続いています。(T事件)

 

B組合差別を公然と要求

 その後10月11日にゆたか労組は福祉保育労働組合東海地本(以下福保労)脱退を決定し一方的に脱退しました。このようなゆたか労組の方針に反対して約20名が10月27日、ゆたか労組を離れ、福祉保育労ゆたか民主労働組合(以下民主労組)を結成しました。これに対してもゆたか労組と法人は排除と組合差別をおこないました。点在する民主労組組合員にゆたか労組は徹底した排除をおこない、精神的に追いつめられ退職・休業するものが相次ぎました。ゆたか労組は管理職に対しても「何故、第2、第3組合から不当労働行為と言われて躊躇するのでしょうか」(03年2月1日意見書)と「チェック」をおこない公然と差別を要求しています。これについて法人は「書記長を呼んで個人的に注意した」だけで管理職と労働組合に対しこのような不当労働行為をしないように文書で示すなどの積極的な行動はしませんでした。

 

C監事からの意見書

 今年1月5日、ゆたか福祉会の2名の監事は独自の調査に基づき、「明らかにT氏への意図的な不当労働行為があった」と事実を認める「監査報告及び意見書」を常任理事会に提出しました。その中では「法人としての謝罪及び処分等の対応策を早急にすべきである」と述べています。これに対して常任理事会は「事実でない部分がある」として、「事実でない」とする部分について具体的に指摘し釈明を求めることもなく意見書全体を放置してしまいました。

 

DM常務とO委員長を守りぬかなければならない

 99年7月、それまでO委員長と10年以上にわたってゆたか労組を支配し、当時ゆたか労組副委員長であったM氏が一足飛びに常務理事となりました。M氏が人事・労務を担当するようになってからゆたか労組をつかった管理職へのチェックが厳しく行われるようになりました。前述の2.1意見書はその一例です。

 ゆたか労組は今年1月には理事会に「M常務理事は・・・ゆたか福祉会労働組合より責任を持って経営に送り出した幹部」であり「今、ゆたか福祉会を守るということはこの二人(M常務とO委員長)を矢面に立てず、守りぬく以外にありません」と要求しました。また逆に、事態の改善へ向けて監査意見をだしたM監事に対し「不当労働行為である」と解任要求書を提出したり、評議員会での評議員の発言内容についても「不当労働行為にあたる」と解任要求書をだすなど異常な行動を繰り返しました。このことは、今年6月に開かれたゆたか労組第15回定期大会でも一連の主張を再確認しています。

 

(2)事態の解決にむけた努力と現時点での判断

@愛労連は一貫して慎重な対応をとってきた

 愛労連はゆたか福祉会がこれまで全国の障害者運動に果たしてきた役割と、なにより県内の諸団体・個人に支えられてきたことに配慮して慎重な対応をしてきました。S事件から1年を経過した今年6月、法人とゆたか労組に対し、事件解決のための話し合いの申し入れを行いました。ゆたか労組からは拒否をされましたが、法人とはその後2度の話し合いを行いました。

 

A事態解決にむけた理事会の動き−「9.22アピール」

 この間にゆたか福祉会の内外で事態を深刻に受け止める関係者の努力が一定すすみ、理事会・評議員会や保護者会の中からも事件解決を求める声が広がっています。今年9月22日の常任理事会では「理事会方針に団結し、事態の改善のため努力することを求めるアピール」がだされました。その中では今日の地労委・地裁への提訴が「経営・管理の不手際」から起こされたものであることを認めています。またローカルユニオン、民主労組を「是認し、差別することなく対応」すること、ゆたか綱領を「絶対化するものではありません」として「価値観の多様性を認め、これを排除したり、敵対行為において解決する態度をとらない」としています。

 

B「ゆたか労組との労使関係は崩さない」

 愛労連との話し合いでS専務は「ゆたか労組の反対意見があったが法人の意志としてだした」と説明しましたが、その一方ゆたか労組に対しては、9月11日の「春闘再回答文書」の中で「貴労組との労使関係は、現状の『困難な情勢』の中においても、崩すものではなく、共に乗り越え、創っていく立場であります。」と表明しています。アピールはこの態度表明をした後に出されています。

 ローカルユニオンや民主労組を敵視し、「いっしょには働けない」として排除を要求するゆたか労組に毅然とした態度が取れないようでは、9.22アピールの実効は疑問だと言わざるを得ません。愛労連が事態解決のために最低限として出した3つの提案も「ゆたか労組の信頼関係を損なう」との理由ですべて拒否されました。

 

C争議解決の見通しがたたない

 労働事件は長引くほど労働者への負担が重くなり、解決も困難になります。T事件は9月23日をもって一年を経過しました。病状は依然として厳しい状態が続いています。また福保労民主労組の組合員は厳しい組合差別とイジメにより、病気で休職に追い込まれるものが出ており、両組合から愛労連への支援要請はますます強まっています。

 アピールは「今後不当労働行為を起こさない」としていますが、これまでの事件については具体的な原因と責任を明らかにしていません。裁判や地労委で係争中の事件についても和解案の提示はありません。ゆたか労組の協力が得られなければ日常運営に支障をきたしかねないという理事会幹部の懸念は一定は理解できますが、これまでの事件に対する反省をせず、現状のゆたか労組との関係も改めないとすれば、労働事件の早期解決の見通しはないと判断せざるを得ません。

 

D今後は、愛労連として「労働事件の早期解決」に全力

 愛労連はこれまでと同様、障害者と保護者のくらしと権利をまもる運動を支援します。ゆたか福祉会についても一日も早く正常な運営を取り戻し健全な発展を望むものです。その立場から、ゆたか理事会にはアピールの徹底努力を期待しますが、労働事件についてはこれ以上待っても解決の見通しがないため、愛労連幹事会としてゆたかの労働事件も通常の労働争議と同じ扱いとし、今後は単産、地域労連にも要請して早期解決にむけた具体的な行動を行うことにいたしました。

 

以上


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