被爆59周年原爆犠牲者を偲ぶつどい

追悼のことば

2004年8月1日

愛知県労働組合総連合

議長 見崎徳弘


 

 広島・長崎への原爆投下から59回目の夏がやってきました。今年の夏は殿原好枝さん、木戸大さんという、愛知の被爆者運動、原水爆禁止・核兵器廃絶の運動にとってかけがえのない先達を失った、悲しみの深い夏になりました。私はまず最初に、お二人をはじめ、60年近くの長きにわたって、被爆による様々な苦しみと闘い、生涯を終えられた71名の皆様のご冥福をお祈りし、ご遺族の皆様に心からのお悔やみを申し上げます。

 被爆・終戦から59回目のこの夏は、これまでのどの夏にもまして重大な歴史の岐路にあります。「9.11」以来「テロとの闘い」を口実に、特定の国を「悪の枢軸」と決めつけて勝手に戦争を始める、場合によっては核兵器の先制使用も辞さないという、きわめて野蛮で好戦的な「一国覇権主義」をとるブッシュのアメリカが、世界の世論に背いてイラクで無法な戦争をしかけ、その後も占領・駐留を続けている。これに対し、こともあろうに憲法9条を持つわが国の首相が、全面的に賛同・協力し、自衛隊をイラクに送り、多国籍軍への参加を約束し、有事法制を整備し、ついに憲法「改正」に取りかかっている。つまり、アメリカとともに世界のどこへでも出かけて「戦争する国」への道を突き進んでいるからであります。この道は亡くなられた皆様の、「戦争は嫌だ、被爆者は二度とつくらない」のご意志に背く、たどってはならない道と信じますが、今は野党の党首もまたアメリカに出かけて「改憲」をいう時代。まさに歴史の岐路と言わなければなりません。

 そんな岐路ですが、しかし「21世紀は戦争のない世紀、核兵器のない世紀に」という私たちの願いは今や世界の圧倒的な世論。ブッシュ大統領も小泉首相も、ともに国際世論の厳しい批判にさらされ、孤立しつつあるのが実態です。それに、来年は被爆60周年。5月にはニューヨークで189の国々が参加するNPT=核不拡散条約の、5年に一度の「再検討会議」が開かれますが、そこに向けて今、「核兵器廃絶を!」の新たな、そして大きな流れが生まれようとしています。希望がここにある、私はそう思います。

 アフガンからイラクへのここ数年の実態も、戦争や武力が国際紛争解決の手段としてあまりにも無力なこと、むしろテロと報復戦争の悪循環、泥沼におちいるだけで、「百害あって一利ナシ」だということを証明し、「国際紛争解決の手段としての戦争はこれを放棄する、陸海空軍その他の戦力はこれを保持しない」と誓った日本国憲法第9条の先進性を逆に実証するところとなりました。21世紀の今こそ憲法9条の心を世界にひろげるときだ、私はそのようにも思います。

 唯一の被爆国であり、憲法9条をもつ日本の本当の国際貢献は、憲法9条を世界にひろげること、そして被爆の実相を伝え、一日も早く「核兵器の廃絶」の国際公約を果たさせることだと信じます。その意味で私は最後に、原爆の犠牲となられた方々のご冥福を改めてお祈りしつつ、亡くなられた皆様のご意志を受け継いで、原爆症認定訴訟の勝利と真の被爆者援護法実現、核兵器の廃絶へ引き続き努力すること、そして、重要な段階にさしかかった「憲法9条を守りぬく運動」でも全力を尽くす決意を表明して、愛労連を代表しての追悼のことばとさせていただきます。


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