「愛知県最低賃金の改正決定に係わる愛知地方最低賃金審議会の意見に関する公示」がありましたので、愛知県労働組合総連合は、以下のとおり異議の申し出をおこないます。
記
1.時間額について、中央最低賃金審議会の目安19円に1円を上積みし20円引き上げ、714円とした。しかし、最低賃金法の趣旨や私たちの要求、そしてこの間、国会や「成長力底上げ戦略推進円卓会議」での議論、生活保護水準との整合性などからみて、きわめて不十分な改定であり、遺憾である。
2.最低賃金については、名古屋市内の生活保護水準(18歳・単身者)を上回るものとし、時間額ではAランク内の格差を解消し、東京並みの額とすること。
理由
1.最低賃金法の目的に及ばないものであること
今回の中央最低賃金審議会の目安は19円(Aランク)であり、愛知地方最低賃金審議会がこれに1円を上積みし、714円としたことは一定の評価ができる答申である。
しかし、今回の最低賃金の改定をめぐっては、生活保護水準との整合性、最低賃金法改定案の国会上程、「成長力底上げ戦略推進円卓会議」での議論、そして中央最低賃金審議会に提出された厚労省の「考え方」などからみて、「20円」の引き上げはあまりにも低すぎる。最低賃金法第1条は「労働者の生活の安定」「労働力の質の向上」などをその目的としている。今回の改定はこの目的にとうていおよぶものではない。また愛知の経済実勢は依然として好調であり、少なくとも、名古屋市内の生活保護水準(18歳・単身者)を上回り、Aランク内の格差をなくすために、東京並みの額の最低賃金とすべきである。
2.「格差と貧困の解消」にはほど遠い内容であること
28日、厚生労働省は「ネットカフェ難民」について調査結果を発表したが、5400人のうち大半は非正規雇用労働者であり、日雇い派遣、日雇い雇用であることが明らかになった。彼らのなかには日当で受け取る賃金が最低賃金の時給額を満たしていないものもいる。こうした労働者を生み出した背景の一つに低すぎる最低賃金がある。
景気回復、あるいは愛知は経済が良好などとさかんにいわれ、全国から職を求めて愛知に流入している。彼らの多くは、非正規労働者、派遣・請負労働者、日雇い派遣労働者である。低賃金ゆえに長時間労働を強いられ、社会保険も加入させられない、また寮費など数々の名目で賃金から差し引かれ、手取りはきわめて低いものとなっている。非正規労働者・低賃金労働者が「格差と貧困」の温床になっている。当初政府も「格差と貧困の解消」を主張していた。にもかかわらず、今回の20円という改定は、その解消にほど遠い内容である。
3.企業の「支払い能力」は口実。下請との公正な取引の確立こそ先決すべき
最低賃金の引き上げに、反対ないし消極的な姿勢を示してきた使用者側委員は、あいかわらず「企業の支払い能力」を口実にしている。8月8日に中賃目安小委員会の目安案がだされた直後、日商会頭のコメントは「中小企業の経営悪化、失業者増加の懸念」を強調していた。しかし、先進諸外国ではこの間、あいついで最低賃金が引き上げられてきたが、これが原因で失業者が増加したなどの事実はない。中小企業経営悪化の最大の原因は、大企業・親企業の無謀なコスト削減策にあることは明らかである。下請との公正な取引の確立こそ先決すべき課題である。
4.あらため最低賃金の引き上げを求める
愛労連はこの間、月額150,000円・日額7,400円・時給1,000円以上の全国一律最低賃金制の確立と地域最低賃金の大幅引き上げを求めてとりくみをおこなってきた。この要求は揺るぎないものであるが、とくに国会や「成長力底上げ戦略推進円卓会議」等で積み重ねてきた議論をふまえ、審議会が引き続き引き上げにむけて努力することを求めるものである。
加えて、審議会委員の任命にあたっては公正任命を求めるとともに、審議会における時給労働者等の意見陳述を実現するよう重ねて要求するものである。
以上