声 明

2000年11月27日

 

名古屋南部大気汚染公害訴訟原告団

名古屋南部大気汚染公害訴訟弁護団

名古屋あおぞら裁判を支援する会

全国公害弁護団連絡会議

大気汚染公害裁判原告団・弁護団全国連絡会議


1.本日、名古屋地方裁判所は、名古屋南部の大気汚染公害に苦しめられてきた原告患者の深刻な被害を認め、これに対する被告国及び中部電力、新日鐵をはじめとする被告企業10社の加害責任を断罪し、損害賠償請求だけにとどまらず国に対する差止請求までもを認める判決を下しました。

 

2.差止請求を認めたことは、本判決の内容の中でも特に注目すべき点です。全国各地の大気汚染公害訴訟においても長年にわたり差止請求は認められませんでしたが、今年1月31日の尼崎大気汚染公害訴訟判決においては、初めて国に対する差止請求が認められました。そして、本判決で再び差止請求が認められたことにより、賠償などの事後的な救済だけでなく「公害を発生させない」という差止なくしては真の公害根絶はあり得ないことが、司法的にも定着したのです。このことは、緊急の公害防止対策の必要牲をより明確にしたものと言えます。

 

3.また、本日の判決は、自動車排ガスとりわけDEPによる現在の大気汚染と公害病との因果関係を明確に認めました。このことは、道路公害の解決が緊急の課題となっている今日において、極めて意義が高いものといえます。それは、まさに長年の闘いの成果と言えます。

 

4.このような本判決の影響は名古屋だけにとどまるものではありません。国の道路責任についての司法判断が確定したことにより、現在、大阪高裁に係属中の尼崎大気汚染公害訴訟、そして、東京地裁に係属中の東京大気汚染公害訴訟に対して、本判決が強力なアピールになることは間違いありません。国の政策においても、これまでの交通量を優先させてきた政府の道路政策について強い反省を促すことはもちろんのこと、政府が現在検討しているSPM規制を含むNOx規制法の改正について、安易な妥協的規制にとどまることを許さず、真の公害防止対策を実現するため、より積極的な規制の実行を強く迫るものとなりました。

 

5.また、一般の公害患者の救済という点においても、現在の被害の進行を認めた本判決は、1988年3月の公害健康被害補償法の指定地域解除の誤りを、司法の立場から断罪したものであり、一刻も早い再指定を迫るものとなりました。そして、それは、単に従前の硫黄酸化物の濃度を基準とした地域指定の復活だけでなく、微小粒子(DEP)等の濃度を基準とした道路沿道などの地域指定をも迫るものと言えます。

 

6.さらに、本判決は、名古屋南部地域の大気汚染の巨大発生源として長期にわたって汚染物質を排出してきた被告企業らの責任を断罪しています。これは、これまでの被告企業の犯罪的行為を厳しく指摘したものであり、あわせてこれを容認し助長してきた行政の怠慢をもあらためて明確にしました。

 

7.ただし、本判決は、被告企業の工場及び道路から排出される窒素酸化物と公害病との因果関係を認めませんでした。この点は、従来の司法判断とは相反するものであり、認定された被告企業及ぴ国の責任は極めて不十分なものと言わざるを得ません。

 

8.一次訴訟の提訴から数えて約11年半もの年月が流れました。その聞、原告患者らは、公害病の苦しみと戦いながら、必死で被害の救済を訴えてきました。各地の大気汚染訴訟においては、原告患者らが数多くの勝利判決と勝利的和解を勝ち取り、被告らの責任は社会的にも司法的にも明確なものになりました。ところが、それにも関わらず、名古屋南部公害訴訟では、被告らは、自らの責任を回避しつづけました。そして、裁判が長期化する中で多くの原告患者が死亡しました。原告患者らは本当に悔しい思いをしながら堪えてきました。

 本目の判決により被告らの主張の誤りが明白となった今、私たちは、被告らが、その判決内容はもちろんのこと、既に長期間の裁判により多くの原告患者が死亡しているという事実についても、真摯に受けとめることを要求します。そして、早急に公害の根絶と被害者の全面的救済のため最善の処置をとること、そしてそのために直ちに私たちと誠意を持って協議を始めることをあわせて強く要求するものです。

 

9.これまでともに闘ってきた全国各地の公害患者や諸団体の皆様、そしてそれを支えてくださった多くの市民の皆様に対しては、この場を借りて深くお礼申し上げます。

 私たちは、今後とも、公害患者の救済と公害の根絶のために引き続き闘っていく所存です。なにとぞこれからもご支援のほどよろしくお願いします。

 

以上


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