【1】 市町村の施策を充実するための項目
1.安心できる介護保障の確立 ※[ ]内の番号は、陳情項目の番号です。
(1)介護保険の改善
@ 介護保険料の軽減(減額・免除) [(1)@A]
介護保険制度は来年4月、3年に1度の見直しの時期を迎え、厚労省は65歳以上の介護保険料(基準額)の全国平均が現行より11.3%増の3,241円になると発表しました。また愛知県は、現行より5.7%増の2,894円になるとしています。中日新聞では、今年10月からの「医療費の自己負担が増えたりする中で、高齢者の家計に大きく影響」と指摘しています。
この問題の基本は、住民税は払わなくてもよい高齢者が基準額の保険料を払うという仕組みそのものに無理があり、国が制度を変えることが必要だといえます。
政府が国民負担を強いる中だからこそ、住民福祉を守るために、保険者である市町村として保険料の引上げをやめるとともに、独自の軽減措置を行うことは急務です。厚労省は、@保険料の全額免除禁止、A収入のみに着目した一律減免禁止、B減免分に対する一般財源繰り入れ禁止、の圧力をかけていますが、当然ながら、このことは市町村の裁量の問題です。
愛知県内でも、軽減措置を実施する市町村は16市町村に広がりました。住民税非課税者が無理なく制度を利用できように軽減措置を実施するようお願いするものです。
A 介護保険サービス利用料の軽減(減額・免除) [(1)@B]
介護保険の利用料は、現在、費用の1割です。しかし、この負担が重石になって在宅サービスの利用が抑制されています。厚労省の資料でも支給限度額に対する利用割合は38.7%で、支給限度に対する限度額いっぱいの利用料は普通の住民には到底払えない、ということではないでしょうか。
また厚労省は、来年度予算に、低所得世帯であって法施行時に訪問介護を利用していた要支援・要介護認定者の訪問介護利用料負担を来年7月1日から現行3%を6%に引き上げることを盛り込みました。
愛知社4保協が昨年8月にまとめたケアマネジャーアンケートでは利用者負担の軽減を望む声が多く、特に3%への軽減制度を活用することによってサービス利用ができたと報告がありました。豊橋市、江南市、小牧市、知立市、安城市、扶桑町、音羽町では、独自に新規に訪問介護を利用する低所得世帯にも対象拡大し利用料負担の軽減を実施しています。
国に追随することなく、住民税非課税者への利用料の独自の軽減措置を実施するようお願いします。
B 基盤整備について [(1)C]
特別養護老人ホームの待機者は、愛知県の調査で急増しています。(2000年2月3,675人→2001年6月10,138人→2002年3月16,648人)
この背景には、家族介護が期待できない独居や高齢者世帯でサービスの利用抑制が広がっていることが影響していると考えられます。特に低所得者や重度の要介護高齢者など最もサービスを必要とする人に集中的に現れ、在宅介護の困難さから施設入所志向が強まっています。さらに診療報酬改定で今年10月から180日を超えた入院の規制が始まりました。病院から退院を余儀なくされ、在宅介護が困難な高齢者は「行き場」を失うことになります。
これで保険料引き上げに見合ったサービスは十分といえるのでしょうか?
介護保険実施前から心配されていたことですが、今後の見通し、対応策をどうお考えでしょうか。
C 介護の質の保障と市町村の責任について [(1)D〜F]
総務省は、要介護認定を適切に実施するために、訪問調査について「おおむね3回ないしは4回に1回は(市町村)職員による直接調査を行う」よう勧告しています。
事業者と利用者とのトラブルを引き起こさないためにも、特に痴呆や困難事例については申請段階から市町村が責任をもってかかわっていくことが重要です。
現行の介護報酬では事業の採算がとれないと撤退した企業もあるように、その無責任さで住民福祉が損なわれる実状もあります。措置制度から介護保険制度に移行してから、市町村のスタンスにより、住民福祉の市町村格差がさらに広がっています。
介護保険の要であるヘルパーやケアマネジャーの人材確保と質の向上は重要な問題です。ヘルパーは講習を行っても、なり手が少なく、潜在ヘルパーの活用は市町村の具体的努力が必要です。また、利用者の状態、状況に適した介護サービスを提供するには、ケアマネジャーの質的向上が不可欠です。しかし、特に小規模事業所では研修を行うことが困難であり、研修など必要な情報が届きにくいのも現状です。
住民福祉の質を保障するためにも、市町村が介護保険に責任を負うことが求められています。
(2)高齢者福祉施策の充実 [(2)@〜E]
独居や高齢者世帯の方は、地域から孤立しがちです。緊急時の通報システム(あんしん電話)の利用要件を緩和し、誰もが利用できるようにすることが必要です。配食サービスは毎日最低1回実施することをお願いしています。特に「閉じこもり」をなくすためにも会食(ふれあい)方式も取り入れてください。また高齢者世帯はゴミ出しなど日常生活に不可欠なことでも困難な状況があります。豊橋市では清掃職員が高齢者世帯に赴き、ゴミ出し援助の生活支援を行っています。
介護保険は介護を必要とする高齢者が「いつでも、どこでも、だれもが、安心して、お金の心配をせずに最適な介護を受ける」という視点からすると、まったく不十分なものです。国の介護予防・生活支援事業を活用しつつ、配食サービス、介護手当等の創設・引上げ、住宅改修費、福祉用具の上乗せなど、独自施策のいっそうの充実をおこなってください。
(3)要介護認定者の「障害者控除」の適用 [(3)]
国税庁は、「要介護認定者は、障害者控除の対象として『ほぼ一致する』『限りなく近い』」と認めました。厚労省も「厚生省社会局長通知『障害者控除の範囲拡大について』(昭和45年6月10日付)で、市町村長が『障害者控除対象者認定書』を交付すれば、障害者控除および特別障害者控除の対象となる」と回答しています。このことを対象者に漏れがないように周知徹底するとともに、自動的に「認定証」を発行することをお願いしています。(P.38参照)
2.福祉医療・福祉給付金の存続・充実
@ 68歳からの老人医療費助成制度の存続
国の老人保健の5歳引き上げを口実に、愛知県は、老人医療費助成制度を68歳から73歳に引き上げてしまいました。
これにより、現在、老人医療費助成制度の対象となっている68歳・69歳の方が73歳・74歳になるまでの5年間は、新たに老人医療費助成制度の対象となる人は生まれないことになりました。
しかも、現行の68歳の方が70歳になると、その方には、医療保険から9割が給付され、残りの1割は本人負担となるため、結局、愛知県および市町村が助成する金額はゼロとなってしまいます。つまり、制度が廃止されたのと変わらないことになります。
国と愛知県に対し、改悪を元に戻すように働きかけるとともに、当面、市町村独自の努力で、現制度の継続をお願いします。
A 福祉給付金の対象拡大と現物給付化
福祉給付金は、老人医療費助成制度と老人保健制度の受給者を前提にしています。
愛知県の老人医療費助成制度の対象が73歳に引き上げられたため、福祉給付金制度も原則として73歳になるまでは受けられない制度に改悪されました。
国と愛知県の老人医療が改悪された時に、その改悪に同調するのではなく、むしろ、高齢者の負担増を市町村の独自の努力で軽減し、住民の健康を守ることこそ地方自治体の責務です。
福祉給付金制度の対象者を名古屋市並みに拡大するとともに、老人保健の低所得世帯の範囲まで対象に加えるようお願いします。同時に、名古屋市のように、窓口無料の制度(現物給付方式)に切り替えてください。(P.40参照)
B 就学前までの医療費無料制度の実現を
乳幼児医療については就学前まで対象を拡大してください。愛知県の補助対象の3歳未満より年齢を拡大している市町村は県下88市町村の内、67市町村になっています。
就学前までの医療費無料制度を国と愛知県に求めるとともに、少子化対策の一環としても、当面自治体独自に就学前までの無料制度の実施を要望します。
今年10月から、医療保険の3歳未満は3割負担が2割負担に軽減され、同時に愛知県の乳幼児医療費助成制度の対象が4歳未満児に拡大されました。就学前までの医療費を無料にするための市町村の負担は大幅に軽減された訳ですので、この機会にぜひ就学前までの無料制度に改善してください。
C 介護療養型医療施設の患者と医療系在宅サービスは福祉医療・福祉給付金制度の対象に
介護療養型医療施設の入院患者及び医療系在宅サービス(訪問看護・訪問リハビリ・通所リハビリなど)については、介護保険実施前までは、福祉医療及び福祉給付金制度の対象とされてきたものです。是非、対象に加えてください。とくに、療養病床の入院患者は、現在、介護療養型では対象外、医療型の療養病床の場合は対象といったアンバランスも生まれています。
3.国保の改善・充実
@ 国保の資格証明書は発行せず、保険料(税)の減免制度の拡充を
国保の滞納は毎年増加の一途をたどっています。(愛知県全体の収納率は平成12年度93.87%→13年度92.29%)
この原因は、深刻な不況に加えて、年間所得の10%を占める高すぎる(払えない)保険料(税)にあることは明らかです。国が1983年に国庫負担を減らしてから3年で保険料(税)は36%も値上げされています。国庫負担を元に戻す(38.5%→45%)ことが急務です。
昨年から今年にかけて、資格証明書の発行数が急速に増加し、大変危惧しています。(2001年9月1日現在12市町村1,546件→2002年6月1日現在25市町村2,522件)
資格証明書の発行は滞納対策に役立たないばかりか、保険証の返還を求めることにより、国民皆保険制度の崩壊に道を開くこととなります。
国に保険証取り上げ「義務化」の撤回をはたらきかけるとともに、当面、市町村独自に、保険料(税)の減免制度を拡充してください。
A 傷病手当金・出産手当金制度の新設
健康保険に設けられている「傷病手当金・出産手当金制度」を国保にも新設してください。
B 高額療養費・出産育児一時金の受領委任払制度
愛知県内では、国保の高額療養費の受領委任払制度が10市町村で実施されています。他県ではすべての自治体で実施している県も生まれています。ぜひ、すべての市町村で実施するようお願いします。
出産育児一時金の受領委任払制度は、昨年8月1日の13自治体から、今年5月1日には52自治体に大幅拡大しています。昨年度のキャラバンでの陳情事項の実現に感謝します。まだ実施していない自治体は早急に実施をお願いします。
4.障害者福祉施策の充実
障害者支援費制度の移行にあたっては現行の障害者福祉施策が後退するのではないかと心配されます。絶対に後退させることのないようにするとともに、障害者支援費制度の内容を関係者に周知徹底してください。
5.失業者に減免制度を
リストラ、倒産などの失業者に対して相談窓口を設けるとともに、住民税や国保・介護保険料などの減免制度を設けてください。
6.老人医療の払い戻し手続き簡素化を (陳情事項に追加した緊急要望です)
10月からの老人医療の改悪で、高齢者の月あたりの自己負担限度額を超えた費用の払い戻し(償還)方法については、大変複雑で、国会でも簡素化が約束されました。それを受けて、9月12日付け厚労省通知(P.52参照)で、払い戻しの申請は初回のみで、2回目以降は申請がなくても自動的に指定した口座に振り込むこととされました。
前期高齢者(70歳〜74歳)を含め、手続きを簡素化してください。
【2】 国に対する意見書・要望書について
それぞれ、意見書の文案を用意しました。参考にして、ぜひ採択してくだい。