愛知県知事

神田真秋 様

第37期愛知地労委・労働者委員の選任に関する公開質問状

2003年12月19日

愛知地労委の民主化を求める連絡会議
代表委員 成瀬 昇 (元労働者委員)
山田 敏行 (国労名古屋地本委員長)
高木 輝雄 (弁 護 士)
宮崎 鎮雄 (愛知大学教授)
見崎 徳弘 (愛労連議長)
   

 

 知事は12月1日、第37期愛知県地方労働委員会の委員任命において、今回もまた7名の労働者委員全員を連合系に独占させた。私たちはこの差別的な選任、8度目、16年に及ぶ非連合排除に抗議し、知事による説明を求めたが産業労働部による不十分な説明しか得られなかった。今期第37期の任命はこの一年間に地労委各委員の所属する大企業で不祥事が続発し、労働組合の社会的責任が大きく問われる中での任命であり多くの労働者が関心を集中させていた。また福岡地裁が「(知事の)裁量権を逸脱した」との判決(福岡地裁7月18日)後の任命であり全国からも注目されていた。このような事情の中でもあえて「連合独占」任命を行ったことに県民の多くが疑問を抱くのは当然である。先の説明はこれらも含め疑問に応える内容ではなかったので再度ここに公開質問状を提出する。遅くとも年内には文書での回答を頂きたい。

 

(1)第37期地労委労働者委員の任命にあたって、労働者委員の推薦組合の系統別、男女別人数を明らかにされたい。

 

(2)地労委救済申し立て事件の件数について
連合独占が始まった第30期から第36期の間の愛知地労委への救済申し立て事件について@系統(連合加盟、非加盟)別内訳、A使用者側の規模別(大企業・中小企業・それ以下)の内訳を明らかにされたい。

 

(3)この間にトヨタや中部電力の莫大な金額に及ぶ「サービス(不払い)残業」告発事件、名鉄(バス)の無免許運転替え玉事件(有罪が確定)、新日鐵の爆発事故など、地労委に労使の委員を出している大企業での不祥事や事件が相次いできた。マスコミは、「サービス残業、歯止めにならぬ労組」(中日)と指弾し、事実「組合として経営側のチェックができず、反省している」(中電労組内田書記長、9月23日中日1面)とこれを認めている。爆発事故などが「これほど多発しているのは基本的な問題点が工場内(組合の姿勢)にある」(中坊・連合評価委員会会長)などの発言も報じている。サービス残業は直接的に労働組合に関連する問題であるが、他の事件も労働組合の姿勢が問われる問題である。

 知事は2年前の私たちの質問に「労働者及び労働組合の全体の利益を反映することのできる者」から任命したと回答した。第37期もまた上記4社の労働組合から委員を選任しているが、このような社会的批判を受けてもなお彼らの方が他の被推薦者に比べより「労働者及び労働組合の利益をより代表している」と言うのか。知事の考えを聞きたい。

 

(4)第37期任命では日立製作所労組旭支部の細江氏が選任されている。
1998年11月24日、地労委は日立製作所旭工場における賃金差別救済申し立て事件(愛労委平成4年(不)第4号他)で3名の労働者が処遇、賃金及び賞与の不利益扱いを受けているとして不当労働行為を認定し救済命令を出している。この事件は3人の労働者が日立労組に是正を訴えたが協力してくれないため地労委に申し立て、これを愛労連が中心となって支援してきたものである。またこの事件を担当した連合愛知推薦の労働者委員の消極的な姿勢が裁判のなかでも指摘され、1999年名古屋地裁は「5.12判決」の中で「差別されている労働者が対立している系統の労組推薦の委員を信頼できないのは無理からぬ」と指摘した。細江氏はこの事件で申し立てた労働者の一人と同期の入社で、協力を拒否した労組の役員である。

現に地労委に申し立てている非連合の労働組合は細江氏を信頼できないが知事はこれを「無理からぬこと」と思うか、思わないかはっきりさせられたい。

 

(5)同じく第37期任命では全国一般愛知県本部の武藤氏が退任し、中小企業を主体とする労働組合の役員が減員となり、大企業労組出身の委員が大勢を占めている。これは申し立て事件が圧倒的に中小企業に働く労働者からのものであることと逆である。地労委で多くの事件を経験し、補佐人として多くの事件に関わってきた私たちの経験からは大企業での労使関係と中小企業における労使関係には大きな違いがあり、申立人からは中小企業における労使の実態に精通している者が希望されている。私たちは事件数に見合う割合で中小企業を代表する労働者委員が必要と考えるが知事の考えを明らかにされたい。

 

(6)2003年7月28日、愛知地労委はスミケイ運輸不当労働行為事件(愛労委平成11年(不)第2号)について申し立てから4年半もたって「門前払い」決定を出した。この事件は連合加盟のユニオンショップ協定を有する組合がある企業の中に非連合の組合が誕生し、組合差別、不当労働行為に対し救済を求めたものだが、連合役員である労働者委員は申し立てた労働者が証言する審問廷を5回連続で欠席するなど委員の役割を果たさなかった。また担当した公益委員も、審問中にも続く企業の不当労働行為を止める努力もせず、和解案も示さなかった。

 現在、国では労働審査制度にかかわる議論が行われているが、4年半も審査したあげくに「申し立て期間を過ぎている」からと門前払いにしたこの事件は、全国にも例をみないものであり、「制度より委員の任命に問題がある」と指摘せざるを得ない。

 任命者である知事の見解を聞きたい。

以上

 
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