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中部国際空港事業の問題を指摘した重要判決 | ||
2003年3月24日 弁護団 籠橋隆明 | ||
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2003年3月24日に中部国際空港国際空港事件判決が言い渡されました。弁護団として原告のみなさん、支援のみなさんに判決の意義と限界をご報告します。 1.門前払いを防げなかった企業庁 今回の裁判の争点は@無駄な公共工事は違法である、A環境破壊をもたらす公共工事は違法であると言う点にありました。 被告愛知県企業庁は公共工事は無駄であるかどうかは裁判所が判断することではないと門前払いを主張しました。この点裁判所は地方公営企業法3条(行政の無駄遣いを禁止した条文)によって違法性は判断できるとして被告の主張を退けました。また、環境問題については裁判所は非常な環境悪化をもたらすような公共事業は「意味のない行為」となりうるので判断の対象となるとしました。これは環境悪化が財政支出上の違法となるとした画期的判決です。 2.中部国際空港国際空港事業批判 門前払いを退けた上で、裁判所は中部国際空港国際空港事業について論及しました。弁護団は中部国際空港は過大な需要予測に基づく無駄な公共工事であると主張しました。裁判所は中部国際空港国際空港事業の見通しは「楽観視できるものではない。」「(空港)会社の財務運営が厳しいものになるとことが予想されないではない。」と批判し、中部国際空港国際空港に対する巨額の投資が無駄になる危険性を指摘しています。 3.行政に追従した前島開発に対する評価 空港時事行を批判しながら、一方で裁判所は前島開発に対する違法性は認めませんでした。空港事業の将来が暗いものであると判断する一方で、前島開発に対する判断を別物として取り扱ったのです。ご存じの通り、前島開発は空港開発の成功を前提にディズニーランド級のテーマパークを設けて人を呼び寄せようと言うものです。多くの人が集まれば土地は値上がりし、それ売って開発利益を稼ごうと計画されています。空港もうまくいかない、我が国でテーマパークが成功しているところはほとんど無い、さらにバブルが崩壊して土地の値下がりが続いていく状況でどうして前島開発が成功するというのでしょうか。裁判所はこうした時代状況を認識しつつそれでも行政の努力によって土地が売れて行くであろうと判断したのです。これでは最初に結論を作りそれに向けて強引に理由を考え出していったと言われても仕方がありません。 4.今後の展望 前島開発はテーマパークを中核とした土地造成事業ですが、事業についてのリサーチはほとんど行われていません。無駄な公共工事の典型ですが、この事前調査の問題に裁判所は踏み込みませんでした。裁判所がこの事実を直視していたならば、どのような裁判官であれ、本件事業の違法性を認定せざるを得なかったでしょう。今後は控訴して逆転勝訴に向けて努力する所存です。 | |
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