NO.315

2003年9月2日


〒456−0006 名古屋市熱田区沢下町8−18 労働会館第2ビル

発行責任者 榑松 佐一


名鉄無免許隠ぺい事件

任命した知事の責任は重大

愛労連が知事に名鉄副社長の地労委員の解任を要請

 愛労連は8月20日、名古屋鉄道(名鉄)のバス無免許運転替え玉隠ぺい事件で、愛知県地方労働委員会の使用者委員を努める暮石彰同社代表取締役副社長の委員解任を求めて県庁前での宣伝行動と知事に対して要請書の提出をおこないました。

 今回の事件は、竹内良吉・元取締役副本部長の逮捕という事態にまで至りました。名鉄は愛知をはじめ東海地域を代表する企業であり、また公共性の高い鉄道・路線バスの運行を主とする企業であることからこのような処置は当然です。

 今回の無免許事件と組織ぐるみの隠ぺい工作は、運転手の不祥事だけで済まされるものではなく、企業としてこのことを隠ぺいするために、替え玉を立てたり、虚偽の報告などをしたことはとうてい許されることではありません。今後、法廷で全容が解明されることになりますが、企業の社会的責任は果たさなければなりません。木村操・取締役社長は、社内報7月号で「各職場におきましては、今後、コンプライアンス(企業倫理)遵守の徹底と安全管理体制の強化を強く要請」しています。しかし、県民に対する明確な謝罪はいまだありません。これでは、県民の信頼を回復することにはなりません。

 また労働組合には労働者の権利を守ることのほか、企業の不正などを指摘し正す社会的責務がありますが、名鉄労組は今回の事件に対するコメントも声明も出してはいません。こうした労働組合の対応についても、社会的責任が問われています。

 要請で参加者は「企業としての名鉄が問われている。公職を辞任するのは当然」「辞任しないのなら知事が責任をもって解任するべき」「名鉄の委員では信頼できないと参与委員忌避されたらどうすのか」と解任を求めました。


労働裁判の実態を無視した敗訴者負担制度は許さない

愛労連が敗訴者負担制度で政府にコメント

 政府の司法制度改革推進本部司法アクセス検討会で議論が進められている「弁護士報酬の敗訴者負担制度」について、愛労連は事務局長名で以下のパブリックコメントを提出しました。

労働裁判への敗訴者負担導入に反対する意見

 私は愛知県労連の事務局長として県下の争議を見てきており、またこの8月からは名古屋地方裁判所の裁判所委員に任命されています。公表された論議の中には「実態からではなく、原理原則から」また「乱訴を防止する」旨のご意見がありました。しかし現実に解雇され、長期にわたって裁判を続ける労働者の苦悩を見るときに、実態を反映しない論議がいかに不毛であるか知るべきと思います。

 

1.やむにやまれず裁判に

 私ども愛知県労働組合総連合は現在約30件の争議を争っています。その多くが裁判にかかっています。さらに毎月30〜50件の労働相談があり、その多くは労働基準法、労働組合法がまともに守られていないものです。相談の多くは労働者の泣き寝入りに終わっており、裁判までいくのはほんのわずかです。労働者はやむにやまれず、また裁判が長期化して職場に戻れない場合であっても自らの尊厳と仲間に法律遵守の職場を残すため、裁判に訴えているのです。これらの中に「乱訴」と言われるものがあれば裁判所が適宜意見を述べることが必要ですし、また使用者は損倍請求を起こすことも不可能ではありません。現実にそのようなことはおきていません。

 

2.裁判上での労働者の不利

 裁判をおこしても、続けていく上で労働者の側には社会的、経済的に不利があります。仮処分裁判では陳述書での判断が中心ですので、会社は業務命令により証人や証拠を「造る」ことがあります。一方会社は労働者から請求のあった証拠提出を拒否することができます。会社が管理職をつかって労働組合の臨時大会を開かせ、全国の営業所から委任状をかき集めて執行部をひっくり返したこともあります。裁判官には陳述書から労働現場の実態を推察する洞察力が求められます。でなければ、仮処分裁判はペーパー上の手続きにしかなりません。実際にH14年名古屋地裁民事一部(労働部)での仮処分裁判で労働者敗訴が相次ぎ、このような労働裁判の問題点があらわになりました。

 地位保全を争う裁判では労働者は失業保険が切れても定職につくことはできません。その間にも家族を養わなくてはなりません。懲戒解雇の争議では解雇予告手当も出ませんし、失業保険は給付制源をうけます。これだけでも裁判をためらうのに、わずか半年ばかりの給付期間で裁判が終わることはありません。長期化するほど労働者は不利であり、会社はそのことを見越して不法行為を起こしています。

 

3.会社がどれだけ弁護士費用をかけるかはわからない

 裁判を始めるときには「勝つのか負けるのか」「いつ終わるのか」はわかりません。私が担当した「タケヤマ懲戒解雇事件」では8ヶ月後に地裁で敗訴、特別抗告、15ヶ月後になってやっと仲介人を入れた労使交渉が開始され20ヶ月後に高裁での和解となりました。この間に労働者側は2人の弁護士を4人に増やしました。会社も地裁の時の弁護士を解任し大阪から新たな弁護士を2人投入しました。タケヤマ社長の所得税を1500万円も払うほどの所得です。労働側は好意により弁護士費用は最低限におさえていますが、メンツを重視する社長がどれだけの弁護士費用をかけたのかは想像がつきません。敗訴者負担となれば、地裁敗訴の時点で労働者は生活破綻で裁判を終わっていました。会社の弁護士名を見ただけで労働者は裁判を取り下げなければならなかったと思います。

 

4.地労委命令に強制力が伴わないために裁判

 もともとこれらの労働事件は地労委での迅速な救済が求められるものです。しかしS24年に定められた現行法では地労委の救済命令を守らなかったとしても罰則金はわずかであり、地労委命令の強制力がほとんどありません。愛知においても地労委はこの14年間労使委員の大半が大企業の関係者で占められており「遅い、何もしない、大企業いいなり」と不評で直接仮処分または本訴で地裁にかけるものが多く、地労委への申し立て事件は年間10件足らずになっています。

 

5.労働組合の支援の有無は関係ない

 また議論の中には「労働者対会社」と「労働組合対会社」を区分する意見もありました。労働組合はもともと労働者個人個人の賃金からお金を出し合ってその運動を進めています。労働者を雇用して利益をあげる企業とは全く違います。裁判を支援するかしないか、どの程度資金をだせるのか、これは労働組合が自主的に決めるものです。先にあげたタケヤマ事件は会社外のわずか80人ほどの労働組合が20ヶ月間に250万円以上の費用をつかって支援しました。それでも和解で会社から支払われた解決金は退職金も含めて675万円です。43歳、大卒勤続20年、二人の子どもと妻、脳梗塞で倒れた母親をかかえ、この解決金の中から弁護士費用・その他を払わなければなりません。たったこれだけで「うるさい組合役員」を追い出してしまうことができたのですから、たいへんな「利益」です。「組織対組織だから」「労働組合の支援を受けているから」敗訴者負担でもよいというのは全くの暴論です。

 以上のような実態から労働裁判に敗訴者負担を導入することに強く反対します。

 

2003年8月25日

愛知県労働組合総連合

事務局長 榑松佐一


愛知争議団ニュースNO.33
名古屋市場運輸の鶴田さんが仮処分申立で勝利判決

会社のでっち上げ解雇を退ける

 社長の指示に従わないことを理由に解雇された名古屋市場運輸鶴田経理係長の「仮処分申立」事件に対する判決が、今年の4月14日、名古屋地方裁判所で出され「会社が本件解雇事由とする事実は、いずれも肯定することができず、その他の点について判断するまでもなく、解雇は無効と言うべきである」と鶴田さんの主張を全面的に認める決定をしています。

 会社は、経営権奪取計画に鶴田さんが中心的役割を担ったとし、イ.赤字部門を隠すため部門別収支報告書を隠匿した。ロ.取引銀行に代表者変更の登記簿謄本の提出を怠った。ハ.貸金庫から重要書類を持ち出した。ニ.自宅待機を命じたが反省せず反抗的態度を示した。と解雇理由を主張していました。

 裁判所は、経営権奪取計画の主張を裏付ける証拠はなく、当時の社長の指示に従って鶴田は業務をしており、勤務不良や非行という解雇事由に該当する行為とは言えないとしています。

 解雇事件に対する司法の判断が、厳しい社会情勢を反映し解雇者の主張が退けられるなかで、申立から4ヶ月余りで勝利判決を得たことは、たたかう仲間を励ますものとなっています。しかし、賃金の支払いを一審判決までとしていないことや、判決後(雇用保険を受給していた)の賃金しか認めていないなどの課題もあり、会社の起訴命令に伴い一審判決を勝利する決意です。

(建交労愛知県本部副委員長 山口輝美)


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