本日、知事と県産業労働部は12月1日任命予定の第36期愛知県地方労働委員会の委員(内定)名簿を公表したが、それによると、県は7名の労働者委員を又も連合系に独占させ、私たちが推薦した見崎愛労連議長と小松民子副議長、田中全港湾名古屋支部書記長の3名は排除されたことが明らかとなった。私たちはこの差別的な選任、7度目の非連合排除に怒りをこめて抗議する。
地労委発足から40数年、県下の労働組合の系統・潮流を尊重して配分・任命されてきた労働者委員を、特定の労働団体(=連合愛知)の候補者に独占させる偏向任命が強行されたのは12年前の第30期以来だが、労働者の権利救済機関としての愛知地労委の信頼と機能はこれによって大きく損なわれた。
使用者による不当解雇や差別、組合つぶしなどに苦しみ、地労委に救済を申し立てる労働者は圧倒的に非連合系である。ところが、地労委のなかの労働者委員は全員が連合系労組幹部で、非連合系の労働者が地労委に救済を求めても、同系列の労働者委員、争議を支援してくれる労組代表は一人もいない。
こうした、労働省の指導通達にも反する偏った委員構成では、非連合系の労働者は救われず、地労委への不信が募るのも当然である。リストラの嵐の中で労働争議が続発しているのに愛知地労委への救済申立が10年で70件にとどまっていること、労働者委員の事件参与を忌避する異常な事例が生じていることなどもその現れであり、連合独占を改め、少なくとも1名は非連合系に労働者委員を割り振ることは、苦しみつつ争議をたたかう労働者に応え、地労委への不信を払拭する、知事として最低限の責務と言ってよい。
私たちのこの主張は、鈴木前知事との間で足かけ10年に及んだ「任命取消・損害賠償請求訴訟」の判決(1999年5月12日、名古屋地裁民事第1部・林道春裁判長)でも、妥当性・正当性が認められた。
同判決は、第30期の任命については知事の裁量権を認めて原告の請求を棄却する一方で、「今後の任命」について知事に「改善」を強く要望したのが特徴だが、そこでは「差別されている労働者が、対立している系統の労組推薦の委員を信頼できないのは無理からぬ」と原告の主張を認め、「労働組合運動において運動方針を異にする潮流・系統が存在する以上、労働者委員の構成においても多様性を有することが望ましい」「今後はより多くの労働者に支持される合理的な選任を」と勧告している。
今回の7度目の連合独占任命は、争議をたたかい信頼できる地労委を切望する非連合系の労働者の期待を踏みにじると同時に、裁判所のこの要望・勧告も無視し、「今度こそ公正任命を」として全国から届けられた2,427団体・35,092筆もの要請署名も無視した点で、二重三重に不当と言わなければならない。
知事はまた、同判決が述べたもう一つの指摘と要望、つまり「労働者委員の任命は政治的であってはならない」「任命の公正性、透明性を担保するためにも、任命基準を作成して公表することが望ましい」も無視した。そして、「基準の公表はしないのか、しないとしたら何故なのか」という追及にも答えず、「多忙で日程がとれない」として私たちとの会見すら拒んできた。これもまた、全く不当である。法律が定め、知事もいう「男女共同参画推進」に反し、愛知初の女性候補を外して男性だけを選んだことも重大な問題である。
「知事は自らの推薦団体の連合愛知を無視できない」「連合が指定する7名をそのまま任命しているので任命基準も示せないのだ」という見方があるが、判決が明記した要望・勧告や「情報公開」「男女共同参画」の公約にも反し、会見すら拒みつづける知事の姿勢を見る限りそうした疑念は拭えない。委員選任という人事問題に限らず、愛労連結成以来12年、知事が一度も私たちに会わないのも異常で、連合愛知と比べ歴然たる差別、政治的偏向と断ぜざるを得ない。
以上、私たちは、知事の政治姿勢の基本にもかかわる重大な疑念と不信を表明し、選任のやり直し、ないし知事の直接の釈明を要求する。そして、知事があくまで突っぱねるのなら、その政治的偏向=連合愛知との癒着、県政私物化を徹底追及し、争議をたたかう労働者をはじめ広範な県民に訴えつつ、引きつづき断固たたかうことを表明する。
<以上>