人事院は8月8日、史上初めて2.03%の「賃下げ勧告」を強行した。続いて9月5日に名古屋市1.68%、10月1日に愛知県2.07%の賃下げ勧告が行われた。年間平均15万円もの賃下げになるというこれらの「マイナス人勧」は、公務員労働者の激しい反発と怒りを招いているが、我々民間労働者も、このような勧告は許すことができない。
これがこのまま実施されれば、それによる生活悪化は国の機関や自治体などに働く公務員労働者にとどまらない。医療・福祉・教育分野をはじめとする公務・公共業務関連労働者、米作農家や農協職員、さらには年金生活者など、広範な労働者・国民がこの「マイナス勧告」の悪影響を直接に受けて苦しむことになる。生活保護、労災保険・雇用保険等の各種給付金なども「人勧準拠」で引き下げられるのではないか。国や自治体で増えてきているパート・臨時職員や外部委託の労働者の賃金も下げられはしないか。障害者、高齢者、母子家庭、共同保育、学童保育など、医療・福祉・教育分野の補助金・助成金は大丈夫か。公共事業の人件費積算単価が下げられ、ただでさえ不況と規制緩和で苦しんでいる建設・運輸関係労働者の賃金がさらに厳しくなることはないかなど、「マイナス人勧」の影響を懸念・心配する声は民間労働者の間にも大きく広がっている。
さらに心配なのは、「公務員も賃下げだから」と民間の賃金・労働条件がさらに切り下げられることである。そうなれば、地域経済は、「公務員賃金の引き下げ」、「民間のリストラ・賃下げ」、「いっそうの消費不況」という“悪魔のサイクル”に落ち込むのは必至である。この道に踏み込んではならない。
不況打開の近道は、労働者・国民の消費購買力の回復にある。そしてそのためには、「マイナス勧告」による賃下げは勇断をもって見送り、むしろ積極的な賃金改善にこそ努めるべきであろう。我々民間産業の労働組合は、国や自治体にそのことをつよく要請するものである。
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