10月26日(日本時間27日)からイラク国内で人質として拘束されていた香田証生さんが、一昨日(31日)、首を切断されたむごたらしい遺体で発見されました。生存に望みをつないでおられたご家族の気持ちを思うと、胸ふさがる思いです。この残虐な殺害は、いかなる理由があろうと決して容認できません。犯行グループに厳しく抗議すると同時に、ご遺族に心から哀悼の意を表するものです。
同時に私たちは、この最悪の事態を招いた責任が、平和憲法を踏みにじり、アメリカに追随してイラクに自衛隊を派兵しつづけている小泉首相にあることを指摘し、これ以上の犠牲者を出さないためにも、政府が香田さんの死から深く教訓をくみ取り、一日も早く自衛隊をイラクから撤退させるよう、強く要求します。
この間イラクでは、米軍と武装勢力との戦闘や爆弾テロで、市民だけでも数万人の犠牲が出ているといわれます。私たちは「テロは報復戦争ではなくせない。憎しみの連鎖を生み、事態を泥沼化させるだけ」と批判してきましたが、事態は私たちが危惧したとおりになっているのではないでしょうか。
「香田さん遺体で発見−日本人人質、初の犠牲」と一面トップで報じた昨日の中日新聞は、遺体を星条旗に包んだのは「日本が守ろうとしているのは星条旗(米軍)だ。自分たちの息子さえ見殺しにした」という主張だろう。米政権を喜ばすための小泉首相の発言(自衛隊派遣堅持)が人質殺害の時期を早めた、というバクダッド在住の政治アナリストの発言を紹介し、「首相の、『テロには屈しない』との発言なども『人命尊重より対米協力重視、という日本のイメージを強めている』と指摘するアラブの識者は少なくない。日本への同情が集まった今年4月の人質事件当時より、日本人に対する視線は厳しくなっている」と書いていますが、奥大使・井ノ上書記官の死亡(昨年11月)、ジャーナリスト橋田信介・小川功太郎さんの死亡(今年5月)につづく香田さんの虐殺は、サマーワの自衛隊宿営地内に相次いで打ち込まれたロケット弾着弾とともに、自衛隊の撤退がもはや一刻の猶予も許されないことを教えています。
そもそも日本は、「戦争の放棄」をうたい、「武力による威嚇や武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては永久にこれを放棄する」と定めた憲法9条を持つ国です。アメリカに追随してイラクに自衛隊を送ったこと自体が憲法違反ですが、百歩譲って「復興支援のためで、戦闘行為には参加しない」とするイラク特措法を認めたとしても、「安全」の前提が崩れた以上、即時撤退が筋です。にもかかわらず首相は、日米関係を優先させ、法期限切れの12月14日以降の派兵継続も口にしています。まさに狂気の沙汰と言わなければなりません。
ブッシュの「親友」・小泉首相の狂気の沙汰で、日本がアメリカとともに世界から孤立し、さらなる犠牲者が出るのを、私たちは黙って見てはおられません。香田さんの死を契機に、イラク復興への日本の協力のあり方を改めて問い直すことは、テロに屈することではありません。改めて政府に自衛隊の即時撤退を強く要求し、そのために運動と世論を広げる決意を述べて、声明とします。
以上