【見解】

パロマ「死亡事故」、トヨタ「リコール問題」と労働組合の役割


2006年7月21日
愛知県労働組合総連合
事務局長 榑松佐一

   


 名古屋市に本社のあるパロマ工業製の湯沸かし器による20人もの事故が発覚しました。パロマは85年に札幌での死亡事故がおきて以後、何度も事故を繰り返してきましたがなんら対策をとってきませんでした。また当初下請け業者の「不正改造が原因」、「パロマサービスとは何の資本関係もない」と会社の責任を否定していました。しかし80年代に「不正改造を促す文書を配布していた」ことがわかり、91年には会社トップも事故発生を知っていたことを認めています。

 同じく愛知県に本社のあるトヨタが「ハイラックス」の欠陥を放置し、幹部が書類送検されました。この事件では顧客からのクレーム30件を放置し、対応してこなかったことが明らかになりました。渡辺社長は「会社に落ち度はなかった」としていますが、命に関わる重大な欠陥を多数、長期にわたって放置してきたトヨタの社会的責任が強く問われています。トヨタ車のリコールは昨年度までの5年間で約42倍に増加しており、日産やホンダと比べて増加傾向が際立っています。

 

 パロマとトヨタに共通しているのは、命と安全に関わる重大問題が長年隠されてきたところにあります。そこには会社に不都合な情報は何らかの外部要因がない限り絶対表面化させない体質があります。トヨタでは以前、自動車整備士試験問題の漏洩事件を引き起こしました。このときも販売会社の現場にいたるまで不正情報が徹底して隠され続けていました。

 雪印のインチキ牛乳や三菱自動車リコール隠し事件でもこのような企業体質が社会的な糾弾をあびました。その結果、企業そのものが存亡の危機となり、多くの労働者が職を失うことになりました。このときには「企業のモラルハザードに労働組合が何もしていない」ことについて社会的批判があびせられました。この事件後「公益通報者保護法」ができましたが、「法」では第一義的には内部で通告しなければなりません。このときに「会社に不利益な内容であっても必ず労働者を守ってくれる」という信頼される労働組合がなければこの制度はなかなか使えません。

 また先日は豊田労基署の相談員が告発内容をトヨタ関連の企業に漏らしていたことが発覚しました。愛労連には「他の相談員からも漏れたことがある」という匿名電話も入りました。これではトヨタ系の労働者は安心して労基署にも告発できません。

 

 いま大企業は企業の社会的責任(CSR)をかかげ、そのなかでステイクホルダー(杭=利害関係者)の役割を重視するとしています。労働組合こそ企業の不正にもっとも強い関心と影響力をもつことができます。三菱自工の問題について、当時の全トヨタ労連会長は「会社のいいなりになっているだけでは労働組合として役割を果たしていない」と批判しました。

 「そのとき労働組合は何をしていたのか」が問われています。いま、パロマやトヨタの労働組合はどのような立場をとるのかが問われています。

 

以上

 
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