愛労連第27回定期大会 愛労連議長あいさつ

 愛労連議長 見崎 徳弘

 単産・地域から、全県からご参集の代議員・傍聴者のみなさん、大変ご苦労様です。

 第27回定期大会は、結成13年目を迎えた愛労連のこの1年間のたたかいを総括し、次年度の課題を確認すると同時に、たたかいへの意思統一をおこなう大会であります。私の方からは、課題を3点に絞って申し上げたいと思います。

 

 第1は、くらしや雇用、働く者の権利を守る、いわば「働くルール確立」の課題です。財界・大企業はいま、きわめて横暴勝手なやり方で労働者や関連中小業者をいじめている。極めつけが現在進行中の「NTT11万人リストラ」です。8兆円もの内部留保を持つNTTが、国際競争に勝ち抜くためと称してやりたい放題やっている。独占禁止法の下で固く禁止されてきた持株会社が解禁されたのを受けて、本来業務である電話通信事業、とりわけ固定電話など儲けの薄い部門を切り捨てて関連子会社に追いやる。50歳で労働者をいったん退職させ、「慣れた仕事がしたいなら子会社に行け」として賃金3割カットを強いる。「それがイヤならNTTに残る道もあるが、その場合は全国配転や不慣れな仕事も覚悟してもらう」と恫喝する。こんな身勝手なリストラがまかり通ったのでは、不況下で経営に苦しむ中小零細企業では何が起きても不思議ではない、そんな状況がひろがっています。

 リストラの嵐が吹いている。これにどう立ち向かうのか、いま労働組合が問われています。問題なのは、この事態が財界の戦略ですすんでいるだけでなく、これを全面的に政府・自民党が後押しし、財界・大企業に手取り足取りのサービスをしていることです。

 リストラして経営「改善」した企業には税金をガッポリまけてやる。バブル期の無茶な経営のツケから巨額の負債を抱え込んだゼネコンや大銀行には、「倒産すれば影響が甚大だから」として借金を棒引きする、税金を投入してやる。一方、労働者に対しては8時間労働制の原則を崩す労働基準法の大改悪、人転がし・ピンハネで儲ける派遣業の原則自由化、職安法の改悪・・・と次々に「働くルール」=労働法制を壊してきたのが政府・自民党であります。その結果、労働者の過労死や過労自殺が相次いでいます。この間、「長時間過密労働を是正せよ」の世論をバックにした国会追及に「残業は上限360時間を守らせる」という政府答弁がありました。にもかかわらずトヨタでは残業720時間、デンソーにいたっては1080時間もの残業を認める36協定が結ばれている。この他に大変な不払い・ただ働き残業、いわゆるサービス残業もひろがっている、これが実態です。「年間総労働時間1800時間」の国際公約はどこに行ったのか! 世界に飛び出す大企業がこんな実態ですから、他は推して知るべしです。しかも、裁量労働、フレックス、変形労働時間が横行している。「お父ちゃんが死んでしまう」という悲鳴が愛労連にも届いていますが、こうした事態が全部、政府の後押しで進んでいる、ここが深刻なところだと思います。

 先日、坂本修弁護士が書かれた『暴走するリストラと働くルール』という本を読みました。大半のことは知っているつもりでしたけれども、改めて政府と財界が一体になっての「働くルール壊し」がいかにひどいか、痛感しました。このもとで私たちの目の前に375万人の失業者が、高校・大学を出ても就職できない若者たちが、また、50歳になればいとも簡単に会社から放り出される中高年いじめが当たり前のようになっている。さらに春闘でも、大もうけをしている大企業、たとえば1兆円利益企業のトヨタが奥田会長の鶴の一声で「ベアゼロ」で決着する。電機にいたっては春闘決着の翌日に会社から賃下げ提案が出る、こういう現実がひろがってきているのだと思います。

 みなさん。こういう状況のもとで愛労連はこの1年、よく頑張ってきたと思います。寄せられる労働相談のあまりの深刻さに、事例をまとめてマスコミに紹介もしました。「こんな事を許してはならない」という思いに駆られた記者が愛労連を訪れるようになりました。加藤楽器の若者が組合をつくってたたかう姿が朝日新聞にカラーで大きく報道されたように、マスコミにも愛労連の姿がしばしば出るようになりました。また愛労連は、企業の横暴勝手を許さないとりくみとあわせて、「働くルール確立」に向けた署名をひろげ、集めてきました。大企業ネットワークのみなさんと連携し、サービス残業告発の運動もすすめました。トヨタシンポ、あるいは刈谷での調査や東海市で開いた雇用と地域経済を守るシンポジウムなどでも、問題の深刻さを浮き彫りにしてきました。

 みなさん。私たち愛労連・全労連はこういう頑張りを通して、「働くルール」確立、勝手な解雇は許さない、サービス残業などという恥さらしな法律違反は直ちになくそう!という声を、連合も含めたすべての労組・労働団体の合意にしてきたと思います。そしていま、国際労働基準、ILO基準、これに基づく「働くルール」確立のたたかいは正念場にさしかかりました。フランスの35時間労働など、世界では時短が大きな流れです。この愛知、日本でも「人間らしく生き働ける場や社会」をつくるために、「働くルール確立」へいっそうの奮闘をお願いすると同時に、この大会で、豊かな経験と決意をたくさん出していただきたいと思います。

 

 第2は、この国のかたち・あり方を変える小泉「構造改革」、国家改造計画が、政府・財界のスクラムで進んでいる、これを阻まなければ、そして政治を変えなければ、21世紀に平和で豊かな日本をつくることは出来ない。この課題の緊急性であります。

 本日の大会は、7月末まで延長された国会で、小泉内閣が重要法案と位置づける4法案をひとつも通させないでがんばっている最中に開かれています。事態は切迫しています。医療改悪で言えば、高齢者の自己負担を大きく増やし、勤労者の本人負担を2割から3割にする、先々は大病院では本人5割負担まで構想されている。「これで医療保険と呼べるのか」と、与党内からも、医師会からも、疑問や反対が澎湃として起きています。苦しい生活に医者に行くのも手控え、本当に悪くなるまで我慢している国民・お年寄りがこの医療改悪をどんな目で見つめているか、私たちに届いたハガキに綴られた切々たる訴えに胸が詰まります。 こんな事を許してはならい!大きな「共同」がひろがったのは当然です。事態は予断を許しませんが、ひろがった「共同」を大切にし、国民の暮らし・いのちを犠牲にする悪政を許さないたたかいをいっそう広げなければなりません。

 有事法制の問題もしかりです。反対世論が急速に広がるなか、今国会では継続審議となる公算が大きいようで、政府・与党のなかには「国会に出し、国民のなかに問題意識を植え付けただけでも成功」「継続審議にし、秋にむけて地固めするんだ」「民主党の議員にも修正を含めて働きかけ、土壌を広げる」という声がひろがっています。一方で、「チャンスがあれば今国会で強行」という構えも崩していません。憲法に違反し、労働者を罰則付きで戦争に動員する、しかもその戦争はアメリカの引き起こす侵略戦争である。有事法制の、こういう企みを許すわけにはいきません。地域・職場で大きな広がりを見せた反対のたたかいを、ぜひ報告してください。県段階では日本共産党、新社会党に加え、今年に入って社会民主党も共同のテーブルにつき、「有事法制阻止・憲法9条を守る」一点でのスクラムが成立しました。画期的なこと、愛知では25年ぶりのことと言われます。攻撃は厳しいけれども、悪政を許してはならないという共同は大きくひろがっています。

 愛知県政も同じです。神田県政は、万博や空港など、県民の多数が批判する事業に巨額の税金を注ぎ込む一方、教育もくらしも福祉も切り縮めていますが、その神田知事を担ぐ「オール与党」県政は変えなければなりません。政党の組み合わせでは私たちは少数です。しかし、みなさん。長野や徳島など全国各地で、住民の強い要求が驚くようなかたちで政治を変える例も続いています。来年はいっせい地方選挙の年であり、知事選挙の年でもあります。その前に、解散・総選挙があるかも知れない。私たちのくらし、かけがえのない人生を守るために、そして子どもたちや孫たちに平和で豊かな未来を約束するために、政治を変えようといううねりを多くのみなさんとの共同でいっそう広げることが重要だと思います。第2のこの課題についても、ぜひみなさんの討論をお願いしたいと思います。

 

 最後に、こうしたたたかいを進めていくために、単産や地域、一つひとつの職場・分会、そして愛労連の組織と活動の強化・充実が欠かせないということです。

 13年前、7万3千人で発足した愛労連は、その後、様々な攻撃で人数を減らしてきました。リストラや「行政改革」で職員数そのものが減ったという事情もあります。そのなかでも愛労連は、みなさんの大奮闘で、この1年で新しく15組合を結成しました。国家公務員の宿泊施設・KKR名古屋の仲間は、宿泊施設の合理化が言われるなかで愛知国公に結集してたたかう道を選びました。「介護・福祉をやりたい」と飛び込んだけれども厳しい実態が待っている。このなかで、ヘルパーさんたちは話し合ってなごや介護福祉労働組合を作りました。つい先日は鳳来町社会福祉協議会の職員労組も誕生しました。このように新たな組合結成が続いていますし、組合員も増えています。ただ、退職者数が新規加入を上回るなかで、愛労連の組織人員が全体として減っているのも事実です。これは一日も早く打開しなければなりません。

 愛労連は昨年、組織強化検討委員会も設置して10万人愛労連に向けた検討を始めました。そしてまず、地域労連の強化について答申をいただきました。これらを含め、精一杯の努力を幹事会として誓いますけれども、単産・地域のみなさんにもさらに2倍、3倍の努力をお願いしたい。身の回りにあふれているパート・臨時・派遣を含めた多くの不安定雇用労働者、8割の未組織労働者のところに、「労働組合をつくっていっしょにたたかおう、入ろう」の声をいっそう広げていただきたい、そう祈念しているところであります。

 あわせて愛労連は、「労働相談110番」に来る問題の解決には「労働組合に加入し、あるいは組合結成して会社と対等な立場で交渉することが不可欠」との観点から常設労働相談を「労働相談センター」に格上げしました。そして、地域に散らばる労働相談のセンター的な役割も果たしてもらうこととし、初代所長には前愛労連議長の阿部さんに就任をお願いしました。その結果いま愛労連労働相談センターは、阿部所長の下に津田相談員や三枝相談員など強力スタッフが揃い、労働相談と組織化に足を踏み出す体制が整ってきました。さらに愛労連は、当面どの単産にも所属しにくい、緊急性ある労働者を受け入れるローカルユニオンも立ち上げました。困った労働者を受け入れて一緒に運動する組合=「愛労連ローカルユニオン」の誕生です。

 結成13年を経て組織内にもいろんな問題が出てきており、一部には複雑な様相をしめす事件もありますが、そういう問題についてはしっかりと話し合いをしながら、愛労連の団結を強め、労働組合のあるべき姿をしっかり見据えて大きな10万人愛労連建設を1日も早く達成することが重要だと思います。

 

 以上3点について申し上げました。すべて議案書にあることすが、この3課題についてはぜひ積極的にご発言いただきたい。そして、幹事会にもどんどん注文を出していただき、意思統一を深めて、向こう1年の運動に勇躍足を踏み出す大会として成功させていただきたい。

 私も先頭に立って頑張る決意を申し上げ、幹事会を代表しての冒頭の挨拶といたします。がんばりましょう。


←INDEXに戻る
←TOPに戻る